過去1年あまりの内に現地企業取材のため5回ほどオーストラリアに出張しましたが、その都度感じることが2つあります。一つは入国時の検疫の厳しさ、そしてもう一つは美味しいレストランが目立つことです。これら二つは一見全然関連性の無いことのように思えますが、オーストラリアの特徴を表す重要なキーワードで繋がっており、かつオーストラリアへの投資を行うに当たっての重要な示唆が隠されていると思われます。そのキーワードとはずばり“豊かな自然環境”ではないでしょうか。
まず、入国時の検疫の厳しさですが、ご存知の通りオーストラリアは他の大陸と隔離された環境にあり、独自の生態系を守るために極めて厳しい検疫が実施されています。入国時の細かい書類申請、検疫のための長蛇の列などは旅客にとってある意味迷惑なものですが、その厳格な管理姿勢は守られる側(自然環境)から見れば非常に信頼出来るシステムだと考えられます。こうした厳しい管理体制は食の安全性にも現れており、例えば日本でも地名度の高い牛肉(オージービーフ)については従来から全頭検査・牛の総識別制度が導入され、人間と同じようにその出身がわかるように徹底されています。BSE・口蹄疫など世界を襲った家畜の病気がオーストラリアでこれまで発生してこなかったのは、オーストラリアの肉牛は自然環境を活かした放牧による飼育が中心であることに加えて、こうした官民挙げての厳格な品質管理の成果と考えられます。
一方の美味しいレストランが目立つことですが、食に関しては人それぞれ好みがあり一概には言えないかもしれません。ただ、豪快に焼いた赤身のステーキ、タスマニア島から直送された脂の乗ったサーモンや身の詰まったカキなど、オーストラリアの美味しいレストランの特徴は素材の良さにあり、シンプルな料理ほど美味しいと思います。そしてその素材の良さは、恵まれた自然環境によって育まれたものと言えるでしょう。
このように、世界的に食の安全問題への意識が高まっている現在においては、厳格な安全基準をクリアし、かつ大自然に恵まれた環境で作られた食材に対して益々注目度が高まって行くと思われます。日本などアジア地域へ安全性の高い食材を提供するという観点において、オーストラリアは極めて重要な位置付けにあると考えられます。
以下で、より具体的にオーストラリアの食料業界について見て行きましょう。
(牛肉)
オーストラリアでは総人口(約2000万人)を大きく上回る約2800万頭の牛が飼育されており、年間牛肉輸出額19億豪ドルでブラジルに次ぐ世界第2位の牛肉輸出国の地位にあります。最大の輸出先は日本であり輸出全体の40%強を占めます。一方、日本にとってもオーストラリアは牛肉の輸入先として極めて重要な国であり、特に米国でBSE問題が発生して以降は日本の輸入牛肉の実に80%以上がオーストラリア産となっています。 |