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【デイリー No.1,878】アジアの主要リート市場 ~高い経済成長を背景に順調に拡大~

2014年6月2日

<ポイント>
・香港リート市場は時価総額の約6割を占めるリンク・リートがけん引し、利益成長が続いています。
・シンガポールリート市場はオフィスビルの賃料低迷で利益は伸び悩んでいましたが、回復傾向にあります。
・アジア地域は、生産年齢人口や中間所得者層の拡大などによる高い経済成長が見込まれることなどから、リート市場も長期的な拡大が期待されます。

1.香港市場をけん引するリンク・リートの好調が続く

 香港の主要3リート(*1)の営業利益は、2013年度(*2)が71.7億香港ドル(前年度比+9.5%)、2014年度が78.6億香港ドル(同+9.7%)と増益基調が続く見込みです。また、好調な業績を背景に、1株当りの配当金(主要3リート平均)も、2013年度は0.74香港ドル(同+10.6%)、2014年度は0.79香港ドル(同+7.2%)と拡大が続く見込みです(予想はブルームバーグのまとめ、以下同じ)。
 アジア最大のリートであるリンク・リートは香港リート市場の時価総額の約6割占め、同市場をけん引しています。リンク・リートは2008年のリーマンショック時も増益を続け、2012年度までの6年間で営業利益は1.9倍(年率+11.1%)、1株当りの配当金は2.2倍(同+13.8%)にそれぞれ拡大しました。6月4日に発表予定の2013年度の決算も営業利益は前年度比+12%と好調が見込まれています。ショッピングセンターなどの商業施設に特化し、物件の改修やテナントの入れ替えを行うなどの着実な事業運営が安定した成長を支えていると見られます。

2.シンガポールはオフィスビルの賃料が回復傾向

 シンガポールの主要5リート(*1)の営業利益は、2010年度、2011年度にオフィスビルが大量に供給されたことなどから伸び悩んでいました。しかし、空室率、賃料などが改善傾向にあり、2013年度の営業利益は13.9億シンガポールドル(前年度比+11.9%)と2桁増益となりました。2014年度はキャピタルコマーシャル・リートがビルの再開発を行うことなどにより費用が一時的に増加することから、主要5リート合計の営業利益の伸びは鈍化する見込みですが、ビルの建て替えが中心で供給量の増加は限定的であるため、オフィスビルの賃料は今後も底堅い動きをする見通しです。2014年度に向け1株当りの配当金(主要5リート平均)は増加傾向を維持しそうです。

3.今後の見通し

 各国のリート指数は、2008年にリーマンショックの影響により大きく下落しましたが、2009年以降は回復しています。なかでも香港市場、シンガポール市場などの上昇は大きくなっています。アジア地域の生産年齢人口や中間所得者層の拡大などによる高い経済成長、大都市へ人口が集中する「都市化の進展」などによる不動産需要の増加などが背景と思われます。
 今後もアジアの経済成長は続くと見られます。同地域の不動産市場のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)も好調が続き、香港やシンガポールのリートの収益拡大は続くと見られます。特に、配当金が増加していることから、リート価格の上昇下でも、リートの配当利回りは高水準で安定した動きとなっています。10年国債利回りと比べ、高い配当利回りなども、リートの魅力となっていることなどから、アジアのリート市場は引き続き堅調に推移すると思われます。


(*1)香港の主要3リートはリンク・リート(商業施設)、チャンピオン・リート(商業、複合施設)、フォーチュン・リート(商業施設)で同市場の時価総額の8割を占めます。シンガポールの主要5リートは、キャピタルモール・リート(商業施設)、アセンダス・リート(産業施設)、キャピタルコマーシャル・リート(オフィスビル)、サンテック・リート(オフィスビル)、ケッペル・リート(オフィスビル)で同市場のS&P先進国REIT指数の時価総額の約4割強を占めます。
(*2)決算期はリンク・リートとアセンダス・リートが3月、他は12月です。そのため、年度はリンク・リートとアセンダス・リートは翌年3月期、他は当年12月期となります。アセンダス・リートは4月21日に決算が発表されており、2013年度(2014年3月期)は実績値、リンク・リートの決算発表は6月4日となるため、2013年度(2014年3月期)はBloombergによる予想となります。2014年度は全リートについてBloombergによる予想となります。
個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。