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市川レポート

REPORT

【No.522】米中貿易摩擦問題と日本株

2018年06月21日

●米国の追加関税発動方針を受け中国は対抗措置を表明、市場に再び貿易戦争懸念が広がる。
●米国は中間選挙対策、中国は権威保持のため、通商政策は強気の姿勢、ただ外交問題も絡む。
●貿易協議の現実的な落としどころが米中間選挙までに見えるかが、日本株安定のポイントになろう。

米国の追加関税発動方針を受け中国は対抗措置を表明、市場に再び貿易戦争懸念が広がる

トランプ米大統領は6月18日、米通商代表部(USTR)に対し、10%の追加関税を課すため、2,000億ドル相当の中国製品を特定するよう指示したとの声明を発表しました(図表1)。同声明では、中国が対抗して関税を引き上げた場合、更に2,000億ドル相当の中国製品に追加関税を課す方針も示されました。米国は現在、500億ドル相当の中国製品に制裁関税の発動準備を進めていますので、今後の制裁規模は最大で4,500億ドルに達することになります。

これに対し、中国商務省は6月19日、量と質を組み合わせた包括的な措置を講じるとの声明を発表し、対立姿勢を強めました。仮に、米国と中国が極端な関税引き上げ合戦に突入すれば、両国の経済に悪影響が及び、世界全体の貿易取引の停滞と共に、世界経済が大きく冷え込む恐れがあります。6月19日の金融市場では、このような悲観的なシナリオを織り込み、リスクオフ(回避)の動きが目立ちました。

米国は中間選挙対策、中国は権威保持のため、通商政策は強気の姿勢、ただ外交問題も絡む

米中両国が、貿易問題で強気姿勢を維持することには、明確な理由があります。米国では2018年11月に中間選挙が控えており、タカ派的な通商政策は選挙対策という側面があります。また、米国が声明を発表した6月19日に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と3度目の会談を行い、非核化に関する方針をすり合わせたとみられます。米国は中国に対し、通商政策で圧力をかけることにより、非核化で米国に協力するよう促しているとも考えられます。

一方、習国家主席は、3月の全国人民代表大会(全人代)で、米国と対等の関係を持つ強国を目指す決意を示しました。そのため、米国が制裁関税を発動する構えを見せれば、中国としては政権の権威を保持するためにも、直ちに報復措置を公表せざるを得ません。また、中国が北朝鮮と3度目の首脳会談に応じたのは、北朝鮮との良好な関係を米国に誇示し、米朝首脳会談後の米国と北朝鮮の接近をけん制する狙いもあるとみられます。

貿易協議の現実的な落としどころが米中間選挙までに見えるかが、日本株安定のポイントになろう

このように考えると、米中両国には、無秩序な貿易戦争を仕掛ける意図はないと思われます。それでも、今回のように米中が激しく対立すると、市場に不安が広がり、景気敏感な日本株の上値は重くなります。更に、投機筋が市場の不安を背景に、日本株の先物売りや、為替市場での円買い・ドル売りに動いた場合、米中に貿易戦争の意図がないとしても、日本株の現物には売り圧力が生じます。

米中貿易協議の現実的な落としどころとしては、①互いの経済が損害を受けない程度の関税引き上げ、②知的財産権を保護する枠組み作りに向けた協議の場の設置、が想定されます。①は、500億ドル相当の制裁関税の相互発動による痛み分けです(図表2)。②について、米国は中国がハイテク分野で存在感を高めることに強い危機感を抱いていますので、時間をかけて問題に取り組むという方針です。中間選挙を控えたトランプ米政権が、①や②を一定の成果と考えれば、貿易戦争回避の期待が高まり、日本株にも追い風になると考えます。

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