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市川レポート

REPORT

【No.559】貿易摩擦問題~米国と各国・地域との争点整理(その2)

2018年09月14日

●米国は中国に対し、中国製造2025の取り下げや知財保護の強化を求めるも目立った進展なし。
●米国は、日本、カナダ、EUとの貿易協議を短期決戦、中国との貿易協議を長期戦と位置付ける。
●日本、カナダ、EUは米国製品の輸入拡大で着地の可能性も米中対立は中間選挙後も継続へ。

米国は中国に対し、中国製造2025の取り下げや知財保護の強化を求めるも目立った進展なし

前回のレポートでは、米国が日本、カナダ、欧州連合(EU)と行っている貿易協議について、争点となっているポイントを順に整理しました。今回は、更に米国と中国の争点を整理し、総括として、それぞれの協議について想定し得る着地点を考えます。現在、貿易摩擦問題を巡る米中の対立は続いており、米国は2,000億ドル分の中国製品に対する制裁関税を発動する準備を進めています(図表1)。

米国が中国に要求しているのは主に次の2点です。すなわち、①ハイテク分野に過剰な補助金を振り向ける中国の産業振興策「中国製造2025」の取り下げ、②知的財産侵害の問題への対処、です。これらに対し、今のところ中国に譲歩の姿勢はみられません。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは9月12日、米国が中国に閣僚級協議の再開を打診したと報じましたが、米中貿易摩擦問題の行方は、まだ予断を許さない状況です。

米国は、日本、カナダ、EUとの貿易協議を短期決戦、中国との貿易協議を長期戦と位置付ける

では、ここから総括として、米国と各国・地域との貿易協議について、想定し得る着地点を考えていきます。米通商政策の基本的な狙いは、「米国製品の拡販」と「自国産業の保護」にあると推測されます。この点を踏まえると、日本、カナダ、EUとの貿易協議と、中国との貿易協議とでは、戦略的な意味合いが異なります(図表2)。前者は、自動車の輸入関税引き上げをちらつかせて市場開放と米国製品の拡販を迫り、その成果を中間選挙でアピールするための「短期決戦」の位置付けになります。

後者は、実質的には将来のハイテク分野における米国と中国の覇権争いであり、「長期戦」の位置付けです。当然ながら中国としては、前述の米国からの要求を簡単に呑む訳にはいかず、一方で、米国としても、中国の一歩も譲らない姿勢は看過できません。そのため、トランプ米大統領は、中国からの輸入品約5,100億ドル全てに制裁関税をかける構えをみせているのですが、戦略上はこれも当然の流れとなります。

日本、カナダ、EUは米国製品の輸入拡大で着地の可能性も米中対立は中間選挙後も継続へ

市場では、米国が検討する自動車の輸入関税の引き上げに対し、強い警戒感がみられます。しかしながら、前述の通り、米国の狙いは米国製品の拡販と自国産業の保護であり、関税の引き上げは、それを実現するための一種のおどしに過ぎません。仮に引き上げとなった場合、米国の産業も大きな打撃を受けることは明らかであることから、米国が実際に引き上げに踏み切る可能性は低いと考えます。

日本、カナダ、EUは、米国製品の輸入拡大である程度譲歩し、中間選挙を控えるトランプ米大統領に花を持たせる狙いがあると思われますが、これは米国にとっても悪くない着地です。ただ、米中貿易摩擦問題は、早期の進展を期待することは難しいとみています。そのため、中間選挙を終えても、米国と中国との対立は続き、市場に一定程度の警戒感は残ることが予想されます。

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