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米国為替報告書と「監視リスト」(米国)

2016年5月6日

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米国財務省は、半期ごとに為替報告書を公表しています。為替報告書は、為替介入などによって為替レートを意図的に操作し、自国通貨安を誘導するなどして、輸出競争力を高めようとする国をけん制することが狙いです。この為替報告書で今回はじめて「監視リスト」が公表されました。同リストは為替操作の疑いのある国や地域を明確化し、監視することが目的です。条件が揃えば経済制裁を発動することも視野に入ります。

【ポイント1】今回はじめて「監視リスト」を公表

2月に「貿易促進法2015」が発効

■2016年4月に公表された為替報告書に、はじめて「監視リスト」が公表されました。これは、2月に発効された「貿易促進法2015」を受けて、米国財務省が履行したものです。また、昨年11月には、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に為替関連条項が盛り込まれました。内容は、競争上優位に立つための通貨安誘導は行わないとの公約を確認するものです。外貨準備や為替相場介入に関するデータの公表義務も盛り込まれていました。いずれも、為替介入に対する監視の強化を狙ったものです。

【ポイント2】制裁措置査定の3条件

「監視リスト」に5カ国・地域

■米国財務省の為替報告書によれば、制裁措置を査定する条件は、①貿易収支、②経常収支、③為替介入、の3項目です。3項目のうち2つが該当すれば「監視リスト」対象国となります。今回、中国、ドイツ、日本、韓国、台湾の5カ国・地域が対象となりました。ちなみに、メキシコの貿易収支は584億ドル(2015年米国財務省推計)でしたが、1項目だけなので、「監視リスト」入りを免れました。

■日本についてみると、対米貿易黒字は686億ドル、経常黒字の対GDP比は3.3%といずれも条件に該当しています(2015年米国財務省推計)。

【今後の展開】日本の経済政策に注目が集まる展開

■今回指摘を受けた2項目は一朝一夕に変化するものではありません。経済制裁の対象とならないようにするためにも、為替介入については慎重とならざるを得ません。しかも、単独での介入では効果が薄く、各国との協調介入の合意が必要です。日本が円売り介入を実施する壁は高くなりました。

■報告書では、景気下支えのために財政出動や積極的な構造改革の推進を求めています。市場では、金融緩和に対する期待も依然根強いですが、為替操作と受け止められないよう、経済政策、構造改革の推進がセットとなることが重要と考えられます。今後の経済政策に改めて注目が集まりそうです。

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