ホームマーケット日々のマーケットレポート「トランプ」大統領候補の経済政策(米国)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

「トランプ」大統領候補の経済政策(米国) 【キーワード】

2016年7月22日

<今日のキーワード>
11月8日に予定されている米大統領選挙は、民主党「ヒラリー・クリントン」氏と、共和党「ドナルド・トランプ」氏との間で争われます。世論調査などから判断すると、クリントン氏が優勢ですが、「トランプ」氏が共和党の候補になったこと自体、今回の大統領選挙には過去の経験からは予測しがたい要素があることを示しています。これを踏まえると、「トランプ」候補の経済政策と、経済への影響を整理しておくことも重要だと考えられます。

【ポイント1】大型減税とインフラ投資が経済政策の二本柱

所得税は法人、個人所得とも最高税率を引き下げ

■「トランプ」候補の経済政策の柱は、個人・法人所得税の減税とインフラ投資の二本です。減税は、個人所得税の税率を現在の7段階を3段階に簡素化(10%~39.6%の7段階から10%、20%、25%の3段階に変更)、法人所得税の税率を35%から15%に引き下げ、などとなっています。インフラ整備については、自著「Crippled America」のなかで総額1兆ドルの投資を提唱しています。

【ポイント2】金融や通商政策も過激な内容

金融規制改革法を廃止、TPPに反対

■そのほか、金融関連では金融規制改革を謳ったドッド・フランク法の廃止、社会保障ではオバマケア(医療制度改革)の完全廃止、外交では環太平洋経済連携協定(TPP)反対、移民反対(強制送還、メキシコとの国境にメキシコの費用負担で壁を建設)などが掲げられています。

■7月18日に始まった全国党大会で打ち出された共和党の党綱領では、具体的なトランプ案は、メキシコ国境の壁を除きほぼ骨抜きにされました。党内で異論が出ないようにとの配慮があったと考えられます。具体案は大統領選挙後に再検討する意向のようです。

【今後の展開】財政政策は景気刺激的だが、財源に不安

■財政政策はGDPを相当に押し上げ
仮に「トランプ」氏の掲げる政策が、そのまま実行されたとすると、景気浮揚効果は相当なものになる見込みです。例えば、1兆ドルのインフラ投資は、米国のGDPの約6%に相当します。支出の期間を10年と仮定すると、年間のGDP押し上げ効果は約0.6%になります。

■懸念されるのは財源の確保
一方、減税規模は約10兆ドルが見込まれます。総額1兆ドルのインフラ投資を考え合わせると、大量の借り入れが必要になり、金利が急騰する公算があります。もっとも、これまでも発言に一貫性のない「トランプ」氏だけに、主張を変化させる可能性はあります。

関連マーケットレポート