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5月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年6月29日

- 5月分鉱工業生産指数・前月比▲2.2%で2カ月ぶりの減少 -
- 生産の基調判断は「生産は一進一退で推移している」に下方修正 -
- 5月分景気動向指数・一致CI、「足踏み」に判断下方修正の見通し -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・5月分速報値前月比は▲2.2%となった。2カ月ぶりの減少である。また、前年同月比は▲4.0%と2カ月ぶりの減少になった。97.1という水準は14年8月の96.7以来の低い水準だ。

●5月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が3業種、減少が12業種だった。情報通信機械工業、鉄鋼業、繊維工業が増加し、輸送機械工業、化学工業(除.医薬品)、電子部品・デバイス工業等が減少した。

●製造工業生産予測調査によると、6月分前月比は+1.5%増加、7月分は同+0.6%増加である。

●製造工業の実現率は▲2.7%と2カ月連続のマイナスになった。予測修正率は▲0.7%と20カ月連続のマイナスになった。

●先行きの鉱工業生産指数の6・7月分を製造工業生産予測指数の前月比で延長し8・9月分を前月比0.0%とすると、4~6月期は前期比▲1.4%と3四半期ぶりの減少になる。鉱工業生産指数の増加基調は一旦止まる見通しだ。但し、次の7~9月期は前期比+0.9%の増加基調に戻る見込みだ。

●5月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は▲1.9%と2カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫指数は前月比▲0.8%と4カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫率指数は115.3、前月比+1.9%で2カ月ぶりの上昇となった。14年11月の116.1以来の指数水準である。

●経済産業省の基調判断は14年3月分まで、「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」とされていたが、消費税率引き上げがあった14年4月分で「総じてみれば、生産は横ばい傾向」と下方修正された。5月分でも同じ判断継続となった。6月分で12年8月分以来の表現である「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」に下方修正され、7月分・8月分と判断継続となった。9月分で「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正され、10月分・11月分と据え置かれた。8月分を底に生産は増加傾向だったので、12月分で判断は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、今回5月分では「生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだ。

●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまった。14年7~9月期で、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同+4.1%、と45度線を上回り、14年10~12月期で、出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同+6.2%、15年1~3月期で、出荷の前年比が▲2.4%、在庫が同+6.2%と45度線を上回っている。15年4~5月分でも、出荷の前年比が▲1.5%、在庫が同+3.9%、と45度線を上回っている。在庫サイクル図からは、依然、在庫積み上がり局面にあると言える。

4~6月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4~5月平均の対1~3月平均比は▲8.1%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.4%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の4~5月平均の対1~3月平均比は▲1.1%の減少になった。乗用車販売台数の4~5月平均の対1~3月平均比は▲4.9%の減少になった。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4月分の対1~3月平均比は▲0.5%だ。雇用・所得環境は改善しているものの、関連データから総合的に考えると、4~6月期第1次速報値の個人消費は、前期比で横ばい圏の伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の4~5月平均の対1~3月平均比は▲0.1%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲2.5%の減少になった。また、建設財は同+1.9%の増加になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期の実質設備投資・前期比は高い伸び率にはならないとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の4~5月平均の対1~3月平均比は▲3.0%の減少になった。輸入は同▲1.7%の減少になっている。4~5月分のモノだけでみると外需はマイナス寄与になる。4~6月期の外需の前期比寄与度はサービスなどを加えて考えても良くてほぼ横ばい圏にとどまる可能性が現時点では大きそうだ。

●現段階でのデータをもとに総合的に判断し、季節調整替えの影響を考慮しないとすると、8月17日に発表される4~6月期の実質GDP第1次速報値・前期比年率は良くて0%台、マイナス成長という予測が出てもおかしくないと言えそうだ。

5月分景気動向指数予測

●5月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差+0.1程度と3カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、6月29日現在、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、長短金利差、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積は前月差プラス寄与になると予測した。

●5月分の一致CIは前月差▲2.1程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な10系列では、6月29日現在、有効求人倍率が前月差プラス寄与になることが判明している。大口電力使用量も季節調整によるところが大きく微妙だが前月差プラス寄与になるとみた。前月差プラス寄与は2系列だけで、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、所定外労働時間指数、中小企業出荷指数の2系列はマイナス寄与になると予測する。

●一致CIを使った景気の基調判断は14年12月分以来4月分まで5カ月連続、「改善を示している」という判断が継続してきたが、5月分が予測通りなら、機械的な景気の基調判断は、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されよう。「足踏み」に下方修正されるには、前月差が下降し、かつ3カ月後方移動平均の符号が変化し、1カ月、2カ月、または3カ月の累積で1標準偏差分(0.98)以上、下方に振れることが必要だ。

●5月分の一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は▲0.47程度で▲0.98には届かないが、2カ月の累積では▲1.00と▲0.98を上回る下降になる。恣意性がない機械的な景気の基調判断が「足踏み」に下方修正され、3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇になるまで、少なくとも7月分までの3カ月連続で「足踏み」の判断が続くことは、人々の景気に関する悲観的な見方を徐々に払拭を遅らせてしまう材料になってしまう可能性がある。

●5月分の先行DIは77.8%程度と5カ月連続して景気判断の分岐点である50%を上回ると予測する。6月29日現在、速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、長短金利差、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数の2系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは66.7%以上77.8%以下と50%超が確定している。残る、新設住宅着工床面積はプラス符号になると予測した。

●5月分の一致DIは30.0%程度と景気の分岐点である50%を3カ月連続下回ると予測する。昔だったら景気後退のシグナルとされる事態である。速報値からデータが利用可能な10系列では、6月29日現在、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは30.0%以上50.0%以下と50%以下が確定している。残る2系列では、所定外労働時間指数、中小企業出荷指数ともマイナス符号になると予測した。