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6月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年7月30日

- 6月分鉱工業生産指数・前月比+0.8%で2カ月ぶりの増加 -
- 生産の基調判断は「生産は一進一退で推移している」で据え置き -
- 6月分景気動向指数判断は、「足踏み」で据え置きの見通し -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・6月分速報値前月比は+0.8%となった。2カ月ぶりの増加である。また、前年同月比は+2.0%と2カ月ぶりの増加になった。98.0という水準は15年4月の99.3以来の水準だ。

●鉱工業生産指数・4~6月期は前期比▲1.5%と3四半期ぶりの減少になった。鉱工業生産指数の増加基調は一旦止まった。

●6月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が9業種、減少が6業種だった。輸送機械工業、化学工業(除.医薬品)、プラスチック製品工業等が増加し、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業、電気機械工業等が減少した。

●輸送機械工業の生産は前月比+2.4%。在庫の前月比が+7.7%、在庫率指数が3カ月連続上昇の中での生産の増加である。乗用車が前月比+4.1%伸びた。米国の港湾スト解除のあと、輸送船の動向が影響して月ごとの輸出・生産動向が不規則になっている可能性もありそうだ。在庫と生産の動向を注目したい業種だ。

●電子部品・デバイス工業の生産は前月比▲2.1%。出荷とともに2カ月連続の減少だ。在庫率指数が3カ月連続上昇している。但し、製造工業予測指数では8月の生産が前月比+9.4%と大幅な増産見込みとなっている。この業種の在庫と生産の動向も注目される。

●製造工業生産予測調査によると、7月分前月比は+0.5%増加、8月分は同+2.7%増加である。

●製造工業の実現率は+0.1%と3カ月ぶりのプラスになった。予測修正率は0.0%と21カ月ぶりにマイナスを脱した。どちらも明るい数字になった。

●先行きの鉱工業生産指数の7・8月分を製造工業生産予測指数の前月比で延長し、9月分を前月比0.0%とすると、7~9月期は前期比+2.1%と2四半期ぶりの増加基調に戻る見込みだ。

●6月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は+0.3%と2カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫指数は前月比+1.3%と2カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫率指数は113.5、前月比▲1.6%で2カ月ぶりの下降となった。

●経済産業省の基調判断は14年3月分まで、「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」とされていたが、消費税率引き上げがあった14年4月分で「総じてみれば、生産は横ばい傾向」と下方修正された。5月分でも同じ判断継続となった。6月分で12年8月分以来の表現である「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」に下方修正され、7月分・8月分と判断継続となった。9月分で「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正され、10月分・11月分と据え置かれた。8月分を底に生産は増加傾向だったので、12月分で判断は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、前回5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。今回6月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。5月分の鉱工業生産指数の前月比▲2.1%に対して、6月分が同+0.8%と小幅な増加にとどまったことなどが影響していよう。

●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまった。14年7~9月期で、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同+4.1%、と45度線を上回り、14年10~12月期で、出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同+6.2%、15年1~3月期で、出荷の前年比が▲2.4%、在庫が同+6.2%と45度線を上回っている。15年4~6月期でも、出荷の前年比が▲0.4%、在庫が同+3.9%、と45度線を上回っている。在庫サイクル図からは、依然、在庫積み上がり局面にあると言える。

4~6月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4~6月期の前期比は▲7.2%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.9%の増加だ。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の4~5月平均の対1~3月平均比は▲1.1%の減少になった。乗用車販売台数の4~6月期の前期比は▲3.3%の減少になった。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4~5月平均の対1~3月平均比は▲0.5%の減少だ。雇用・所得環境は改善しているものの、関連データから総合的に考えると、4~6月期第1次速報値の個人消費は、前期比でマイナスの伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の4~6月期の前期比は▲1.0%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲2.2%の減少になった。また、建設財は同+1.8%の増加になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期の実質設備投資・前期比はパッとしない伸び率になるとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の4~6月期の前期比は▲3.6%の減少になった。輸入は同▲1.8%の減少になっている。4~6月期のモノだけでみると外需はマイナス寄与になる。4~6月期の外需の前期比寄与度はサービスなどを加えて考えても弱含むものと思われる。

●現段階でのデータをもとに総合的に判断し、季節調整替えの影響を考慮しないとすると、8月17日に発表される4~6月期の実質GDP第1次速報値・前期比はマイナス成長になるとみられる。季節調整替えの影響などが大きくプラスに出れば0%台成長になる可能性もあろう。

6月分景気動向指数予測

●景気動向指数・先行CIでは、実質機械受注(船舶・電力を除く民需)が実質機械受注(製造業)に、長短金利差がマネーストック(M2)(前年同月比)に入れ替えとなる。6月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.4程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、7月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列である。これらのうち最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列は前月差プラス寄与に、日経商品指数、マネーストックの2系列は前月差マイナス寄与になることが判明している。残る2系列では、新設住宅着工床面積が前月差プラス寄与に、新規求人数が前月差マイナス寄与となると予測した。

●これまでの採用系列から大口電力使用量が削除された一致CIの6月分前月差は+1.1程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、7月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、6系列。生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・小売業1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る中小企業出荷指数が前月差プラス寄与に、有効求人倍率が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は、5月分の、「足踏みを示している」という判断が6月分でも継続になろう。機械的な景気の基調判断が、「足踏み」から「改善」に上方修正されるには、前月差が上昇、かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇することが必要だ。今回、予測通りなら、3カ月後方移動平均の前月差はプラスに転じよう。一致CIの前月差は7・8月分でもプラスになると予測する。最速では8月分が発表される10月7日に「改善」に上方修正される可能性がある。

●6月分の先行DIは77.8%程度となり、過去の数字が変更になるため3カ月連続の50%超になると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、7月30日午前9時時点で数値が判明している、最終需要財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数1系列がマイナス符号になると予測する。先行DIは66.7%以上88.9%以下と50%超が確定している。残る2系列では、新規求人数がプラス符号に、新設住宅着工床面積がマイナス符号になると予測する。

●6月分の一致DIは62.5%程度と4カ月ぶりに50%超になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、7月30日午前9時時点で数値が判明している、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数の3系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは37.5%以上62.5%以下が確定している。残る中小企業出荷指数、有効求人倍率の2系列がプラス符号になるとみた。