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9月分鉱工業生産指数・速報値について

2015年10月29日

- 9月分鉱工業生産指数・前月比+1.0%で3カ月ぶりの増加 -
- 基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に上方修正 -
- 9月分景気動向指数・一致CI前月差は3カ月ぶりに上昇の見通し -

鉱工業生産

●鉱工業生産指数・9月分速報値前月比は+1.0%となった。3カ月ぶりの増加である。一方、前年同月比は▲0.9%と2カ月連続の減少になった。

●9月分の生産を業種別にみると、15業種のうち増加が8業種、減少が7業種だった。化粧品などが伸びた化学工業(除.医薬品)、電子部品・デバイス工業、電気機械工業等が増加し、はん用・生産用・業務用機械工業、窯業・土石製品工業、プラスチック製品工業等が減少した。

●前回の製造工業生産予測調査によると、9月分前月比は+0.1%増加であったが、実現率は▲0.2%と小幅な下振れにとどまった。

●今回の製造工業生産予測調査によると、10月分前月比は+4.1%増加、11月分は同▲0.3%の見通しである。10月分で生産が見通し通り大きく増加するかどうかが注目される。

●業種ごとにみると、輸送機械工業の生産は前月比+1.3%と3カ月ぶりの増加、出荷が前月比▲0.6%と4カ月ぶりの減少、在庫の前月比が▲8.2%と3カ月連続の減少、在庫率指数が前月比▲14.5%と3カ月連続の低下だった。在庫の調整が進んできた業種と言えよう。製造工業予測指数では10月の生産は前月比+7.3%と(11月は▲1.1%だが)大きく伸びる見込みとなっている。

●電子部品・デバイス工業の生産は前月比+6.0%と5カ月ぶりの増加、出荷は前月比+8.6%と2カ月連続の増加、在庫率指数は6カ月ぶりの低下となった。製造工業予測指数では10月の生産が前月比+4.6%、11月の生産が前月比+0.1%とそれぞれ増産の見込みとなっている。スマートフォンの新機種発売に伴う動きになっている。

●7~9月期の鉱工業生産指数は前期比▲1.3%と2四半期連続の減少となったが、先行きの鉱工業生産指数の10・11月分を製造工業生産予測指数の前月比で、12月分を前月比ゼロで延長して計算すると、10~12月期は前期比+4.2%と3四半期ぶりの増加になる見込みだ。

●9月分速報値の鉱工業出荷指数・前月比は+1.3%と3カ月ぶりの増加になった。鉱工業在庫指数は前月比▲0.4%と2カ月ぶりの減少になった。鉱工業在庫率指数は115.8、前月比▲2.9%と2カ月ぶりの低下となった。

●経済産業省の基調判断は14年3月分まで、「総じてみれば、生産は持ち直しの動きで推移している」とされていたが、消費税率引き上げがあった14年4月分で「総じてみれば、生産は横ばい傾向」と下方修正された。5月分でも同じ判断継続となった。6月分で12年8月分以来の表現である「総じてみれば、生産は弱含みで推移している」に下方修正され、7月分・8月分と判断継続となった。9月分で「総じてみれば、生産は一進一退にある」に上方修正され、10月分・11月分と据え置かれた。8月分を底に生産は増加傾向だったので、12月分で判断は「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」に3カ月ぶりに上方修正された。

●15年1月分・2月分・3月分・4月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置きだった。しかし、5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。前回8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。しかし、今回9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻るという明るい結果になった。

●今日の生産統計の結果は、日本銀行が明日の金融政策決定会合で、金融政策を据え置く方の根拠のひとつとなろう。

●鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると、14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。14年7~9月期で、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同+4.1%、と45度線を上回り、14年10~12月期で、出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同+6.2%、15年1~3月期で、出荷の前年比が▲2.4%、在庫が同+6.2%、15年4~6月期で、出荷の前年比が▲0.3%、在庫が同+4.0%、と45度線を上回っている。15年7~9月期では、出荷の前年比が▲0.6%、在庫が同+2.0%、と在庫の前年比は鈍化してきているものの、まだ45度線を上回っている。

7~9月期のGDP予測

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7~9月期前期比は+1.9%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲0.3%の減少だ。同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売指数の7~9月期前期比は+1.8%の増加になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7~8月平均の対4~6月平均比は+0.2%の増加だ。乗用車販売台数の7~9月期前期比は+2.5%の増加になった。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベースの)7~8月平均の対4~6月平均比は+0.5%の増加だ。雇用・所得環境が緩やかに改善している中、関連データから総合的に考えると、7~9月期第1次速報値の個人消費は、前期比でプラスの伸び率になるとみられる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の7~9月期前期比は▲0.4%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲2.0%の減少になった。また、建設財は同▲0.3%の減少になった。一方、ソフトウエア開発・プログラム作成の売上高前年比は4~6月期は+3.1%だったが、7月分+6.1%、8月分+4.7%と伸び率を高めている。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される7~9月期の実質設備投資・前期比は微妙だがマイナスもありうるとみられる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の7~9月期(9月分速報段階)前期比は+0.2%の増加になった。輸入は同+2.6%の増加になっている。7~9月期のモノだけでみると外需はマイナス寄与になりそうだ。

●11月16日に発表される7~9月期の実質GDP第1次速報値・前期比はゼロ%台の成長率の可能性が高そうだが、明日出る家計調査9月分のデータなど、予断をもつことなく注視していきたい状況だ。

9月分景気動向指数予測

●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.6程度と3カ月連続の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、10月29日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列である。これらのうち最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列は前月差プラス寄与に、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新規求人数と新設住宅着工床面積の2系列は前月差マイナス寄与となると予測した。

●9月分の一致CIは前月差+0.5程度と3カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列で、10月29日午前9時時点で数値が判明している、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数の3系列が前月差プラス寄与に、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差マイナス寄与となっている。残る2系列では、中小企業出荷指数が前月差プラス寄与に、有効求人倍率が前月差マイナス寄与になるとみた。

●一致CIを使った景気の基調判断は、8月分の「足踏みを示している」という判断が9月分でも継続になろう。機械的な景気の基調判断が「足踏み」から「改善」に上方修正されるには、前月差が上昇、かつ3カ月後方移動平均が3カ月連続上昇することが必要だ。今回予測通りなら、3カ月後方移動平均の前月差は下降が見込まれることから、10月分以降の3カ月連続上昇が最短になろう。最も早い「改善」への上方修正は12月分が発表される2月上旬になる可能性が大きいだろう。10月分の前月差が+0.5程度、11月分が同▲0.5程度、12月分が同+0.1程度で条件を満たすことになる。製造工業生産予測調査によると、10月分前月比は+4.1%増加、11月分は同▲0.3%の見通しであることから、十分達成可能と言えそうだ。

●なお、判断が「下方への局面変化」に下方修正される条件は、一致CIの7カ月後方移動平均の前月差が、1カ月、2カ月、または3カ月の累積で1標準偏差分(0.85)以上のマイナスになることである。9月分が予想通りなら7カ月後方移動平均の前月差は横這いになり、2カ月の累計が▲0.33程度のマイナスなので▲0.85には届かない。10月分以降12月分まで3カ月連続一致CIの前月差が▲1.0も落ち続けても、12月分での3カ月の累計が▲0.69程度のマイナスなので▲0.85には届かない。こちらの可能性は低そうだ。

●9月分の先行DIは11.1%程度になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、10月29日午前9時時点で数値が判明している、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列は全系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは0.0%以上22.2%以下が確定している。残る2系列では、新規求人数がプラス符号に、新設住宅着工床面積がマイナス符号になると予測する。

●9月分の一致DIは37.5%程度と3カ月連続50%割れになると予測する。足元の景気もたつきを示唆する数字となってしまおう。速報値からデータが利用可能な8系列では10月29日午前9時時点で数値が判明している6系列のうち、鉱工業生産財出荷指数1系列がプラス符号に、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは12.5%以上50.0%以下が確定している。残る、中小企業出荷指数、有効求人倍率は2系列ともプラス符号になるとみた。