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9月分景気動向指数(速報値)

2015年11月6日

-先行CI前月差▲2.1、一致CI前月差▲0.3、どちらも3カ月連続の下降-
-「足踏みを示している」で基調判断継続、10月分・11月分でも同様か-

●9月分景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差▲2.1と3カ月連続の下降となった。9月分の先行CIの指数水準は101.4と13年1月分以来の低めの水準だ。

●一致CIは前月差▲0.3と3カ月連続の下降になった。9月分の一致CIの指数水準は111.9である。東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年4月分の96.7よりは15.2ポイント高い水準だが、直近のピークである14年3月分の116.2よりは4.3ポイント低い水準だ。

●9月分の一致CIで一番前月差寄与度がマイナスだったのは中小企業出荷指数(製造業)の▲0.43である。前月比が▲3.0%と大幅な下落率だったからだ。仮にこれがゼロだったなら9月分の一致CIは前月差上昇であった。不思議なことに概ね中小企業と大企業を合わせた概念の鉱工業出荷指数の9月分の前月比は+1.3%の増加であった。

●一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は▲0.47と2カ月ぶりの下降、7カ月後方移動平均の前月差は▲0.11と2カ月連続の下降になった。

●一致CIを使った景気の基調判断は、今回9月分では、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」と、5カ月連続で同じ判断となった。

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、13年7月分で景気の基調判断が、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善を示している」に上方修正された後、13年8月分~14年3月分でも「改善を示している」で据え置きだった。しかし、14年4月分で「足踏みを示している」に下方修正になり、5月分~7月分でも「足踏みを示している」に据え置きとなった。14年8月分で「下方への局面変化」にさらに下方修正され、9月分~11月分でも「下方への局面変化」で据え置きとなった。

●景気はそこで踏みとどまり「悪化」に転じることは回避された。14年12月分で、「改善を示している。ただし、基調判断に用いている3カ月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない」に上方修正された。「改善を示している」に「下方への局面変化」から戻るのは異例のパスということだった。15年1月分で、但し書きは消えて、「改善を示している」という判断継続になった。15年2月分~4月分でも、「改善を示している」という判断継続になったが、5月分で景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」に下方修正され、6~9月分でも判断据え置きとなった。

●次回10月分も、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」の判断が継続となろう。基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。9月分で上昇の連続記録は途切れてしまったため、10月分から再スタートとなる。

●3カ月後方移動平均が10月分で前月より上昇するには前月差+1.3程度の上昇が必要だが、10月分の生産指数関連指標の製造工業生産予測指数が前月比+4.1%増加であること、中小企業出荷指数の反動増が見込まれることなどから、一致CIの前月差はそれなりの幅で上昇し、3カ月後方移動平均前月差が上昇に転じる可能性は大きいだろう。過去の数字が変わらないと仮定すると、10月分の前月差+1.3、11月分の前月差▲0.9、12月分の前月差+0.1で、「3カ月後方移動平均前月差が3カ月連続上昇、かつ当月(12月)の前月差プラス」の「改善」の条件を満たせる。いち早く「改善」に戻るケースは10月分以降の3カ月分の3カ月後方移動平均が連続上昇し、2月上旬に発表される12月分が前月差上昇の場合だろう。

●次回10月分で「下方への局面変化」に悪化するには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月、または3カ月の累積)が1標準偏差分(0.85)以上」であることが必要だ。10月分の一致CI前月差が▲3.4ポイント程度の大幅下降になると、10月分で3カ月の累積が▲0.86になり、1標準偏差分(0.85)以上下方に振れることになるが、その可能性は極めて小さいだろう。

●今回9月分速報値では先行DIは11.1%と3カ月連続して景気判断の分岐点である50%を下回った。また、一致DIは25.0%とこちらも3カ月連続して景気判断の分岐点である50%を下回った。どちらも芳しくないDIになった。

●9月分景気動向指数・改定値では、一致CIは新たに所定外労働時間指数が加わる。一致DIでは所定外労働時間指数が前月比+0.9%以下なら3カ月前より指数水準が低くなるため、マイナス符号で加わる可能性が大きく、他の指標の符号が不変なら、22.2%程度と速報値の25.0%から下方修正になり、景気判断の分岐点50%を引き続き下回ると予測する。

●先行CI改定値で新たに加わる実質機械受注(製造業)の前月差寄与度は+0.05程度のプラス寄与になると予測する。指標発表日は11月12日である。在庫率関連データなどが確報値段階でどうリバイスされるかにもよるが、先行CI・改定値の前月差は▲2.0の下降と速報値の▲2.1から僅かに上方修正になるとみた。また、先行DIでは実質機械受注(製造業)がプラス符号で加わり、20.0%程度と速報値の11.1%から上方修正になると予測する。

●9月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。このうち消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、日経商品指数1系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。

●また、9月分の先行DIでは、現時点で数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がプラス符号に、日経商品指数、東証株価指数の2系列がマイナス符号になることが判明している。このため9月分先行DI速報値は、25.0%以上75.0%以下が確定している。10月分の先行DIは9月分を上回ることが確定している。