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2016年4~6月期法人企業統計・設備投資などについて

2016年9月1日

―設備投資(除くソフトウェア)前期比▲0.5%、前年同期比+3.1%―
―4~6月期 GDP第2次速報値で設備投資・在庫投資は下方修正か―

●16年4~6月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+3.1%と1~3月期の前年同期比+4.3%からは1.2ポイント鈍化したものの、13四半期連続の増加となった。前期比は▲0.5%で3四半期連続の減少になった。また、ソフトウェア投資額を含むベースでは4~6月期の全産業の前年同期比は+3.1%だった。1~3月期の前年同期比+4.2%から1.1ポイント鈍化した。

●8月10日に発表された関連調査の建設物価調査会・設備投資調査によると、設備投資額(ソフトウエア・土地除く)16年1~3月期(実績見込み)の前年同期比は+6.8%、4~6月期(計画)の前年同期比は+8.1%と4~6月期の前年同期比は伸び率が高まる見込みとなっていたが、法人企業統計調査では結果が逆になってしまった。

●資本金1000万円以上1億円未満の中小企業の前年同期比は▲2.6%で、1~3月期の前年同期比+2.5%の増加からは5.1ポイント悪化し減少に転じた。資本金1億円以上10億円未満の前年同期比は+8.4%で、1~3月期の前年同期比▲0.1%の減少から8.5ポイント改善し増加に転じた。一方、資本金10億円以上の大企業では前年同期比は+4.5%と、1~3月期の前年同期比+6.1%からは1.6ポイント鈍化したが増加は維持した。

●供給サイドのデータに基づいて算出した16年4~6月期GDP第1次速報値では、名目設備投資の前年同期比は▲0.5%で、1~3月期の+0.1%の増加から0.6ポイント鈍化し、減少に転じている。名目の前期比(季節調整済み)は▲0.6%と2四半期連続の減少である。

●16年4~6月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲5.2%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は▲30.9%であると公表されている。4~6月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の名目原系列前期比は単純に計算すると、0.6ポイント小さい▲31.7%である。

●その他のデータをみると、個人企業の設備投資は卸売・小売業が上方修正要因だが、製造業・サービス業などは下方修正要因で、総じてみて下方修正要因になりそうだ。また、弱めだった6月確報分が反映されるソフトウェア開発・プログラム作成も下方修正要因になりそうだ。

●法人企業統計での断層補正の影響をみると、1~3月期から4~6月期への設備投資の前年同期比の減少幅は、実際よりも小幅になるとみられる。

●以上、総合的に判断して、第2次速報値での名目ベースの設備投資の前期比は第1次速報値の▲0.6%から▲0.9%程度へ、実質ベースの設備投資の前期比は第1次速報値の▲0.4%から▲0.7%程度へとマイナス幅が拡大すると予測する。


(在庫投資)

●法人企業統計の仕掛品在庫をみると16年4~6月期は1兆2278億円で15年4~6月期の2兆0345億円から▲8067億円の減少となった。原材料在庫は16年4~6月期は1190億円で15年4~6月期の6098億円から▲4908億円の減少となった。合わせて▲1兆2975億円、前年同期に比べ減少した。

●一方、16年4~6月期GDP第1次速報値の名目在庫投資・原数値は1兆8870億円で15年4~6月期の2兆1884億円より▲3014億円の減少であった。16年4~6月期GDP第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、原材料在庫と製品在庫が前年同期比マイナス寄与だった模様だ。そのうち製品在庫が大きなマイナス寄与だったようだ。流通在庫と仕掛品在庫はどちらも若干のプラス寄与だった模様だ。今回の法人企業統計からみると、仕掛品在庫は下方修正要因になるとみられる。

●16年4~6月期GDP第1次速報値段階で民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度▲0.1%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は▲0.1%、残る流通在庫は前期比寄与度+0.2%だった。第2次速報値段階で仕掛品在庫は下方修正され、実質在庫投資の前期比寄与度は▲0.1%程度になるとみた。


(16年4~6月期GDP・第2次速報値)

●16年4~6月期GDP第2次速報値では、設備投資は前期比▲0.7%程度と第1次速報値の同▲0.4%からマイナス幅が拡大するとみた。また、法人企業統計により在庫投資は下方修正され前期比寄与度は▲0.1%程度になるとみた。また、公共工事出来高の前年同月比は4月分▲5.8%、5月分▲6.3%だったが、6月分の伸び率は▲3.6%だった。このことからみて第2次速報値での公共投資の前期比は第1次速報値の+2.3%から+2.9%程度に上方修正されるとみた。

●総合的に判断すると16年4~6月期GDP第2次速報値は前期比▲0.0%程度、前期比年率▲0.1%程度と予測する。季節調整替えの影響などもあるので微妙ではあるが第1次速報値の前期比+0.0%、前期比年率+0.2%からやや下方修正になるとみた。