ホームマーケット経済指標解説2016年7~9月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年7~9月期実質GDP(第1次速報値)について

2016年11月14日

―実質GDP成長率は前期比年率+2.2%、3年ぶり3四半期連続の増加―
―輸出がアジア向けのスマートフォン部品などが堅調で2四半期ぶりの増加―
―一方、個人消費、設備投資は前期比ほぼ横ばい―
―設備投資の金額は、R&Dが加わる第2次速報値から上方修正に―
―内閣府年央試算+0.9%は16年度残り2四半期・各前期比年率+0.1%で達成―

●16年7~9月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比+0.5%、前期比年率+2.2%と13年1~3月期から7~9月期にかけて以来3年ぶりの3四半期連続のプラス成長になった。緩やかな景気回復基調が続いていることを示す内容になった。

●個人消費や設備投資の前期比は概ね横這いでもたついているが、純輸出の前期比寄与度が+0.5%と2四半期ぶりに大幅プラス寄与になった。

●7~9月期の名目GDP成長率は前期比+0.2%、前期比年率+0.8%と、こちらも3四半期連続のプラス成長になった。

●7~9月期・第1次速報値でGDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)は+0.1%、家計最終消費支出は前期比0.0%となった。11月10日に発表された内閣府の消費総合指数(GDP統計の実質個人消費に近い考え方で算出されている指数)で7~9月期の前期比が▲0.2%だった。過去の数字も変わっているので、毎回かけ直す季節調整が7~9月期の個人消費の前期比プラスに働いた可能性が大きいと考える。

●雇用者報酬の前期比は名目+0.6%、実質+0.7%と、名目は12四半期連続、実質は9四半期連続で前期比増加となった。GDPの雇用者報酬の動きから見ると、所得の動向は個人消費の下支え要因になっているはずだ。

●実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は+1.5%と3四半期連続の増加になった。半耐久財の前期比は+0.1%と2四半期ぶりの増加になった。非耐久財の前期比は▲0.5%と2四半期連続の減少になった。サービスの前期比は+0.1%と2四半期ぶりの増加になった。

●実質設備投資7~9月期の前期比は0.0%と横這いになった。名目の前期比(季節調整済み)は▲0.4%とこちらは3四半期連続の減少になった。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は▲1.2%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+14.3%であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、16年7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。

●実質住宅投資はマイナス金利の効果や相続税対策の動きなどから前期比+2.3%と、2四半期連続の増加になった。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度+0.1%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は▲0.1%、残る流通在庫は前期比寄与度▲0.1%だった。

●実質政府最終消費支出は前期比+0.4%と2四半期ぶりの増加。実質公共投資は、前期比▲0.7%と3四半期ぶりの減少だった。公的在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.5%と2四半期ぶりのプラス寄与になった。実質輸出は前期比+2.4%と2四半期ぶりの増加になった。財は前期比+1.8%と2四半期ぶりの増加になった。アジア向けのスマートフォン部品などが堅調だった。サービスは前期比▲0.2%と4四半期連続の減少になった。輸出に計上されるインバウンド消費の前期比寄与度は+0.1%だった。実質輸入の前期比は▲0.6%と4四半期連続の減少になった。財に関しては前期比▲0.3%と2四半期連続の減少、サービスは前期比▲1.8%と2四半期ぶりの減少になった。

●実質GDPに海外からの実質純所得と交易利得を加えた実質GNI(国民総所得)は前期比+0.3%の増加になった。8四半期連続の増加である。

●7~9月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.1%で、11四半期ぶりにマイナスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前年同期比は▲1.0%と、6四半期連続マイナスの伸び率になった。一方、7~9月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.3%で2四半期連続のマイナス、国内需要デフレーターの前期比は▲0.2%になった。マイナスは4四半期連続になった。

●16年度の実質GDP成長率・内閣府年央試算は+0.9%程度。これを達成するには残り各2四半期で前期比年率+0.1%(前期比+0.02%)が必要だ。15年度から16年度へのゲタは+0.3%だ。これから政府の経済対策効果が出ることなどを考慮すると、十分達成可能な数字であろう。

●12月8日に発表される7~9月期第2次速報値では、従来同様に12月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心とする通常の1次速報から2次速報の改定に加え、2008SNAへの対応を含む2011年基準改定、および2014年度第2次年次推計(現在の確々報)及び2015度第1次年次推計(現在の確報)を反映することになるため、過去に遡って、内容が全面的に改定される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、原材料在庫と流通在庫と仕掛品在庫が前年同期比マイナス寄与だった模様だ。また製品在庫がプラス寄与だった模様だ。