ホームマーケット経済指標解説2016年9月分全国消費者物価指数について

2016年9月分全国消費者物価指数について

2016年10月28日

―総務省・総合・前年同月比は6カ月連続、コア指数前年同月比は7カ月連続下落―
―総務省・総合・前年同月比8月分との寄与度差、生鮮除く財マイナス、サービスはプラス―
―コアコア指数前年同月比0.0%、上昇は35カ月連続で途切れる―
―総務省・東京都区部コア指数前年同月比は10月分で0.1ポイント下落率縮小―
―日銀流コア9月分前年同月比は+0.2%へ、内閣府流コア前年同月比は+0.1%に鈍化―

●9月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として99.8となり、前月比+0.2%上昇、前年同月比は▲0.5%の下落になった。前年同月比がマイナスになったのは6カ月連続だ。

●生鮮食品の前年同月比は▲0.8%の下落だった。8月分は▲1.7%だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%の上昇要因になった。エネルギー全体の前年同月比は▲8.4%下落した。8月分は▲10.2%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.16%の上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目とも、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は概ねプラスに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回の16年8月分では▲12.5%だったが、今回9月分では▲9.2%と減少率が縮小した。前月比は+0.7%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.08%と物価押上げ要因になった。灯油の前年同月比は、16年8月分では▲24.3%だったが、今回の9月分では▲21.6%になった。前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。電気代の前年同月比は▲6.5%で、8月分の▲7.6%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲11.7%と、8月分の▲13.3%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は9月分では前年同月比▲7.8%と8月分の▲2.4%から下落率が拡大した。再びデフレ的な価格設定になっている可能性がある。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。そのうちテレビは8月分の前年同月比▲15.3%から9月分は▲18.6%へと下落率が拡大し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%になった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲6.8%で、8月分の前年同月比▲5.2%からマイナス幅が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。

●9月分の宿泊料は前年同月比+2.3%で、8月分の前年同月比▲0.4の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。一方、8月分は前年同月比+6.9%の上昇だった外国パック旅行費は、9月分では同+1.7%と上昇率が鈍化し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%だった。

●9月分の全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比は財、生鮮食品を除く財とも▲1.2%と下落、一方サービスは+0.3%の上昇であった。

●全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの8月分から9月分への寄与度差は、財では+0.02%、生鮮食品を除く財は▲0.01%。サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.02%であった。

●9月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は99.6で、前月比は横這い、前年同月比は▲0.5%下落した。前年同月比の下落は7カ月連続だ。

●9月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は100.4で、前月比は横這い、前年同月比も横這い。8月分まで前年同月比は35カ月連続上昇だったが、9月分で途切れた。

●9月分の総合指数の季節調整済み指数は99.5で前月比横這い。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は99.5で前月比横這い。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数は100.3でこちらも前月比横這いだった。

●ESPフォーキャスト調査・10月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年7~9月期は▲0.36%、10~12月期は▲0.21%と下落が続き、17年1~3月期になると+0.28%と緩やかに上昇していく見込みだ。

●全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の16年度は▲0.21%の下落、17年度は+0.60%の上昇が予測平均値だ。なお、原油価格(WTI)の予測平均値は16暦年43.73ドル/バレル、17暦年49.68ドル/バレル。円相場の予測平均値は16年度1ドル=103円85銭、17年度1ドル=105円26銭となっている。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年4~6月期は▲1.0%と、16年1~3月期の▲1.0%と同じマイナス幅だった。今後、需給ギャップが改善していけば、消費者物価指数の前年同月比の上昇要因になっていくものと思われる。

(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、9月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.2%で、8月分の+0.4%から0.2ポイント伸び率が鈍化した。10月に入って、日経ナウキャスト日次物価指数T指数の前年比で0.0%を僅かに下回ることも多く、10月分は9月分のT指数の前年比+0.01%を下回る可能性があろう。10月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.2%を下回る可能性がありそうだ。なお、3月分の45.5%をピ-クに7月分の29.6%まで4カ月連続低下を続けた「上昇品目比率-下落品目比率」は前回8月分で34.0%と幾分持ち直していたが、今回9月分で28.1%まで低下した。なお、10%刈込平均値前年同月比は前回8月分で0.0だったが、9月分では+0.1%上昇となった。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。2015年基準の、内閣府流コア指数(固定基準)1~3月分の前年同月比は、+0.9%だったが、4月分以降伸び率が鈍化し、今回9月分は+0.1%まで鈍化した。2010年基準時代の13年9月分の0.0%以来の低い伸び率である。また、内閣府が月例経済報告の判断で重視しているとみられる季節調整済み前月比では、8月分・9月分と内閣府流のコア指数前月比は2カ月連続横這いとなった。

(10月分の暫定的予測)

●10月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.1%程度と、9月分の▲0.5%から7カ月ぶりに上昇に転じると見た。天候不順で生鮮食品が大幅に上昇することが主因だ。前月比は+0.5%程度とみる。

●10月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、9月分の▲0.5%よりマイナス幅がやや縮小し▲0.4%程度になると予測する。前月比は+0.1%程度とみる。

●また、10月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は+0.2%程度と9月分の0.0%の横這いから上昇になると予測する。前月比は+0.2%程度になろう。

●関連データである10月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は+0.1%と9月分の▲0.5%の下落から7カ月ぶりの上昇に転じた。生鮮食品の前年同月比は+11.4%の大幅上昇で、9月分の▲1.0%の下落から上昇に転じた。天候不順が響いた。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.53%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲10.3%で9月分の下落率の▲10.9%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%で、上昇要因になった。また、10月分ではテレビの前年同月比が▲21.2%と9月分の▲21.0%から下落幅がやや拡大したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。10月分の宿泊料は前年同月比+2.3%で、9月分と同じだった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。10月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は+0.6%だった。また、大阪市の総合10月分前年同月比は▲0.3%と9月分の▲0.7%から下落率が縮小した。10月分の前月比は+0.5%だった。

●10月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.4%で9月分の▲0.5%から下落率が縮小したが8カ月連続の下落になった。10月分の前月比は+0.2%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の10月分前年同月比は▲0.7%と9月分と同じ下落率だった。10月分の前月比は+0.1%だった。

●10月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.1%で9月分の▲0.1%の下落から2カ月ぶりに上昇に転じた。10月分の前月比は+0.3%だった。また、大阪市では10月分前年同月比は▲0.2%で9月分の▲0.5%から下落率が縮小した。4カ月連続の下落になった。10月分の前月比は+0.2%だった。