ホームマーケット経済指標解説2016年9月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年9月分鉱工業生産指数・速報値について

2016年10月31日

-9月分鉱工業生産指数・前月比0.0%と予想を下回る増加-
-9月分鉱工業出荷指数・前月比は+1.1%の増加-
-鉱工業生産指数は10~12月期にかけて、3四半期連続前期比増加か-
-基調判断は2カ月連続「生産は緩やかな持ち直しの動き」-
-景気動向指数・一致CIによる景気判断9月分も「足踏み」継続-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・9月分速報値前月比は0.0%と横這いになった。前年同月比は+0.9%と2カ月連続の増加になった。

●鉱工業生産指数・9月分速報値の指数水準は97.8で、8月分と並んで、16年1月の98.3以来の水準になった。

●9月分の生産を業種別にみると、15業種のうち前月比増加がはん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、化学工業(除.医薬品)等7業種、前月比減少が情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業、金属製品工業等8業種だった。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、9月分の前月比は最頻値で+1.5%、90%の確率に収まる範囲で+0.5%~+2.6%の見通しだったので、9月分前月比実績の0.0%は予想よりかなり弱かったと言える。

●今回の製造工業生産予測調査によると、9月分の実績は、前月比+1.2%だった。鉱工業生産の方が弱いのは、9製造工業生産予測調査対象外の部分で、プラスチックや化粧品の生産が弱かったためのようだ。

●先行きは、10月分前月比は+1.1%の増加、11月分は同+2.1%の連続増加見通しである。

●鉱工業生産指数の先行き試算値で、10月分の前月比は最頻値で▲0.1%、90%の確率に収まる範囲で▲1.1%~+0.8%になる見通しだ。製造工業生産予測指数前月比(+1.1%)より下振れる慎重な見通しだ。

●先行きの鉱工業生産指数を、10・11月分を製造工業生産予測指数前月比で、12月分を前月比横ばいで延長した場合、10~12月期の前期比は+3.0%の増加になる見込みだ。一方、10月分を先行き試算値最頻値前月比で、11月分を製造工業生産予測指数前月比で、12月分を前月比横ばいで延長した場合、10~12月期の前期比は+1.7%の増加になる見込みだ。4~6月期以降10~12月期にかけ前期比プラスは3四半期連続になりそうだ。

●鉱工業生産指数の四半期データでみると、7~9月期の前年同期比は、+0.2%と14年4~6月期の+2.7%以来、久しぶりの増加に転じた。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体での縦軸に在庫の前年比をとった在庫サイクル図をみると14年1~3月期では、出荷の前年比が+7.4%、在庫が同▲1.2%、と45度線を下回っていた。しかし、14年4~6月期では、在庫が前年同期比増加に転じ、出荷の前年比が+0.9%、在庫が同+3.1%、と45度線を上回ってしまい、在庫積み上がり局面に入った。15年10~12月期では、出荷の前年比が▲0.8%、在庫が同0.0%、と近づいたものの45度線をやや上回った。16年1~3月期では出荷の前年比が▲2.4%、在庫が同+1.8%。4~6月分では、出荷の前年比が▲2.0%、在庫が同0.0%と45度線を上回ったままだった。7~9月期では出荷の前年比が▲0.9%、在庫が同▲2.0%と45度線を下回ったことが注目されよう。ようやく在庫調整局面が終了し、今後生産が増加しやすくなろう。

●経済産業省の基調判断は14年12月分から15年4月分まで5カ月連続して「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」だった。しかし、15年5月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に11カ月ぶりに下方修正された。「一進一退」の表現は14年11月分以来6カ月ぶりだった。6月分に続き7月分でも判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」に据え置かれた。8月分では14年8月分以来の「弱含み」に下方修正され、表現は「総じてみれば、生産は弱含んでいる」となった。

●その後、15年9月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」と上方修正され、7月分までの判断に戻った。15年10月分から16年5月分まで「総じてみれば、生産は一進一退で推移している」という判断で据え置きだった。6月分では「総じてみれば、生産は一進一退で推移しているが、一部に持ち直しがみられる」という判断で10カ月ぶりに上方修正となり、7月分でも「総じてみれば、生産は一進一退で推移しているが、一部に持ち直しがみられる」と判断据え置きになった。

●前回8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。ついに15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。今回9月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。今後、政府の経済対策による下支えも期待され、為替レートが落ち着いてきていることもあって、緩やかな持ち直しの動きがよりしっかりしたものになることが期待される状況だ。

(9月分景気動向指数予測)

●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.7程度と2カ月ぶりの前月差下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列で、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差プラス寄与になると予測した。

●9月分の一致CIは前月差+0.2程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列で、生産指数1系列がゼロに、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列が前月差プラス寄与に、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、中小企業出荷指数1系列が前月差プラス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は9月分でも、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」の判断が17カ月連続で継続しそうだ。基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に戻るには、「当月の前月差の符号がプラス。かつ原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が上昇する」ことが必要だ。予測通りなら、9月分で一致CIの3カ月後方移動平均前月差は2カ月連続の上昇になり、10月分で3カ月連続の上昇になる夢はつながろう。

●9月分の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を3カ月ぶりに上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、10月31日午前9時時点で数値が判明しているのは8系列で、そのうち鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは66.7%以上77.8%以下と50%超が確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列がマイナス符号になると予測する。

●9月分の一致DIは75.0%程度と景気判断の分岐点の50%を上回る数字になると超暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、10月31日午前9時時点で数値が判明している7系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の5系列がプラス符号に、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列がマイナス符号になることが判明している。一致DIは62.5%以上75.0%以下と50%超が確定している。残る、中小企業出荷指数はプラス符号になると予測した。