ホームマーケット経済指標解説2016年10月分全国消費者物価指数について

2016年10月分全国消費者物価指数について

2016年11月25日

―物価指数・前年同月比の動向に変化の兆し!―
―総務省・全国消費者物価指数・季調値・前月比、主要3系列揃って上昇は1年半ぶり―
―全国消費者物価・コア指数・前年同月比▲0.4%、8カ月連続下落―
―総務省・東京都区部コア指数・前年同月比11月分は10月分と同じ▲0.4%下落―
―日銀・国際商品指数に続き、日経商品指数17種は11月分で2年ぶり前年比プラス化か―
―企業向けサービス価格前年比14カ月ぶり伸び率、CPIに先行する他の物価前年比改善傾向―
―10月分日銀流コア、内閣府流コア(固定基準)共に前年同月比は前月から0.1%ポイント上昇―

●10月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.4となり、前月比+0.6%上昇、前年同月比は+0.1%の上昇になった。9月分の前年同月比は▲0.5%だったので0.6ポイント上昇したことになる。前年同月比がプラスになったのは16年2月分(+0.2%)以来8カ月ぶりだ。

●生鮮食品の前年同月比は+11.4%の上昇だった。9月分は▲0.8%だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.52%と大幅上昇要因になった。天候不順で生鮮野菜などが上昇した。レタスは前年同月比+54.5%も上昇した。エネルギー全体の前年同月比は▲7.9%下落した。9月分は▲8.4%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%の上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目とも、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は電気代を除き概ねプラスに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回の16年9月分では▲9.2%だったが、今回10月分では▲7.7%と減少率が縮小した。前月比は+0.4%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%と物価押上げ要因になった。灯油の前年同月比は、16年9月分では▲21.6%だったが、今回の10月分では▲19.0%になった。前月比は▲0.7%と下落したが前年10月分より下落幅が小さかった。前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。電気代の前年同月比は▲6.8%で、9月分の▲6.5%から下落率がやや拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%と物価押下げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲11.2%と、9月分の▲11.7%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は10月分では前年同月比▲5.5%と9月分の▲7.8%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。そのうちテレビは9月分の前年同月比▲18.6%から10月分は▲17.9%へと下落率がやや縮小したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲4.2%で、9月分の前年同月比▲6.8%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。

●10月分の宿泊料は前年同月比+2.3%で、9月分と同じ伸び率になった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、9月分は前年同月比+1.7%の上昇だった外国パック旅行費は、10月分では同+8.2%と上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。

●10月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は0.0%と9月分の▲1.2%から横ばいになった。生鮮食品を除く財は▲1.1%と9月分の▲1.2%から僅かだが下落率が縮小した。一方サービスは+0.3%の上昇と9月分と同じ上昇率であった。

●全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの9月分から10月分への寄与度差は、財では+0.59%、生鮮食品を除く財は+0.08%。サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は0.00%であった。今月は財が上昇に寄与するという動きになった。

●10月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は99.8で、前月比は+0.2%の上昇、前年同月比は▲0.4%下落した。7・8・9月分の▲0.5%から下落率は縮小したものの、8カ月連続して前年同月比は下落となった。

●10月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は100.6で、前月比は+0.2%の上昇、前年同月比も+0.2%の上昇。9月分で0.0%になり前年同月比の連続上昇は35カ月で途切れたが、10月分で再び上昇に転じた。

●10月分の総合指数の季節調整済み指数は100.2と15年5月分以来の水準に戻った。前月比は+0.7%上昇だった。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は99.6で前月比+0.1%上昇。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の季節調整済み指数は100.4でこちらも前月比+0.1%上昇だった。3系列とも前月比で上昇したのは、15年4月分の総合指数+0.2%、生鮮食品を除く総合指数+0.1%、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数+0.1%以来1年半ぶりのことである。

●ESPフォーキャスト調査・11月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年7~9月期の▲0.50%を底に、10~12月期は▲0.26%と下落率縮小、17年1~3月期になると+0.19%とプラスに転じる見込みだ。

●全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の16年度は▲0.25%の下落、17年度は+0.61%の上昇が予測平均値だ。なお、原油価格(WTI)の予測平均値は16暦年44.30ドル/バレル、17暦年51.01ドル/バレル。円相場の予測平均値は16年度1ドル=104円17銭、17年度1ドル=105円40銭となっている。最近の円相場が予測より円安に振れていることは実際の物価が予測より上昇しやすくなることを意味しよう。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年4~6月期は▲1.0%と、16年1~3月期の▲1.0%と同じマイナス幅だった。16年7~9月期はまだ発表されていないが、前期比年率+2.2%のプラス成長だったことから、改善が予想される。今後、需給ギャップが改善していけば、消費者物価指数の前年同月比の上昇要因になっていくものと思われる。

●物価指数の前年比は、まず、商品指数が底打ちし、その後、国内企業物価指数、企業向けサービス価格指数が動き、最後に消費者物価指数が底打ちするというパターンが多い。

●消費者物価指数以外の物価指数にこのところ変化の兆しが見られるようになってきた。まず、日銀国際商品指数の前年同月比が9月分で+4.8%と14年6月の+2.6%以来の上昇に転じ、10月分で+14.2%になった。国内の商品指数も上昇傾向で、日経商品指数17種は11月24日時点の指数で計算すると、前年比は+7.2%となる。11月分は14年11月の+1.8%以来の2年ぶりの上昇になりそうだ。

●国内企業物価指数の前年同月比は5月分▲4.4%だったが、直近10月分で▲2.7%と5カ月で1.7ポイント減少率が縮小した。10月分の企業向けサービス価格指数の前年同月比は+0.5%に上昇したが、これは15年8月分の+0.6%以来14カ月ぶりの高い伸び率である。なお、企業向けサービス価格指数の前年同月比は13年7月分から今年10月分まで、86年8月から93年9月まで86カ月間連続で上昇した時以来23年1カ月ぶりの40カ月連続の上昇である。

●日経ナウキャスト日次物価指数T指数は、11月23日の7日移動平均前年比が+0.23%であり、11月月間分の前年同月比も10月分の同▲0.09%を0.1ポイント以上上回りそうだ。前の月に比べ+0.1ポイント以上前年比が上回れば15年11月分の+0.20%以来1年ぶりのことになる。なお、S指数の11月分は+0.24%と0.01ポイントと僅かだが、前の月を上回る伸び率になっている。

(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、10月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.3%で、9月分の+0.2%から0.1ポイント伸び率が上昇した。日経ナウキャスト日次物価指数T指数は11月分の前年比が10月分を上回りそうなことから11月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.3%を上回る可能性がありそうだ。なお、3月分の45.5%をピ-クに7月分の29.6%まで4カ月連続低下を続けた「上昇品目比率-下落品目比率」は8月分で34.0%と幾分持ち直したあと前回9月分で28.1%まで低下したが、今回10月分で25.6%とさらに低下した。なお、10%刈込平均値前年同月比は前回9月分で▲0.1%の下落だったが、10月分では0.0%になった。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。2015年基準の、内閣府流コア指数(固定基準)1~3月分の前年同月比は、+0.9%だったが、4月分以降伸び率が鈍化し、前回9月分は+0.1%まで鈍化した。2010年基準時代の13年9月分の0.0%以来の低い伸び率であった。今回10月分では+0.2%と伸び率が僅かに高まった。前月より伸び率が上昇したのは2010年基準時代の15年10月分→11月分(+1.1%→+1.2%)以来である。また、内閣府が月例経済報告の判断で重視しているとみられる季節調整済み前月比では、8月分・9月分と内閣府流のコア指数(固定基準)2カ月連続横這いであったが、10月分で前月比+0.1%と6月分(+0.1%)以来4カ月ぶりの上昇になった。

(11月分の暫定的予測)

●11月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.5%程度と、10月分の+0.1%から伸び率を高め2カ月連続の上昇になると見た。天候不順で生鮮食品が大幅に上昇したことが主因だろう。前月比は0.0%程度とみる。

●11月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は、10月分と同じ▲0.4%程度になると予測する。前月比は▲0.1%程度とみる。

●また、11月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は+0.1%程度と10月分の+0.2%からやや鈍化すると予測する。前月比は▲0.1%程度になろう。

●関連データである11月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は+0.5%と10月分の+0.1%から上昇率を高めた。生鮮食品の前年同月比は+24.7%の大幅上昇で、10月分の+11.8%から上昇率を高めた。天候不順が10月に引き続き影響したようだ。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.45%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲9.8%で10月分の下落率の▲10.3%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%で、上昇要因になった。また、11月分ではテレビの前年同月比が▲19.2%と10月分の▲21.2%から下落幅がやや縮小したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。11月分の宿泊料は前年同月比+1.2%で、10月分の+2.3%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。11月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は0.0%だった。また、大阪市の総合11月分前年同月比は+0.2%と10月分の▲0.3%の下落から上昇に転じた。11月分の前月比は+0.2%だった。

●11月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.4%で10月分と同じ下落率で9カ月連続の下落になった。11月分の前月比は▲0.1%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の11月分前年同月比は▲0.7%で10月分と同じ下落率だった。11月分の前月比は0.0%だった。

●11月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は0.0%で10月分の+0.1%の上昇から鈍化した。11月分の前月比は▲0.1%だった。また、大阪市では11月分前年同月比は▲0.3%で10月分の▲0.2%から僅かに下落率が拡大し、5カ月連続の下落になった。11月分の前月比は0.0%だった。