ホームマーケット経済指標解説2016年12月分全国消費者物価指数について

2016年12月分全国消費者物価指数について

2017年1月27日

―全国消費者物価・コア指数・前年同月比▲0.2%、10カ月連続下落―
―全国消費者物価・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比+0.4%、11月より鈍化―
―東京都区部コア指数・前年同月比1月分は▲0.3%下落、下落率縮小―
―12月分日銀流コア、内閣府流(固定)コア共に前年同月比は0.1%ポイント鈍化―
―貿易統計12月下旬分で前年比上昇に転じた。12月下旬の水準は16年各月上回る―

●12月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.1となり、前月比▲0.2%の下落、前年同月比は+0.3%の上昇になった。3カ月連続の上昇だ。

●生鮮食品の前年同月比は+13.8%の上昇だった。11月分は+21.6%だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.28%と下落要因になった。生鮮野菜などが天候不順で上昇していたが幾分落ち着いた。トマトは前年同月比+61.9%と40%台だった11月分からさらに上昇した。エネルギー全体の前年同月比は▲4.4%下落した。11月分は▲6.7%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.18%の上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目とも、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は電気代を除き概ねプラスに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回の16年11月分では▲4.1%だったが、今回12月分では+1.6%と下落から上昇に転じた。前月比は+1.8%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.11%と物価押上げ要因になった。灯油の前年同月比は、16年11月分では▲13.7%だったが、今回の12月分では0.0%になった。前月比は+12.0%だった。前年同月比に対する寄与度差は+0.05%だった。一方、原油市況動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は▲6.5%で、11月分の▲6.9%からの下落率の縮小が小幅にとどまった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%と若干の物価押上げ要因にとどまった。都市ガス代の前年同月比は▲11.1%と、11月分の▲11.4%から下落率がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は12月分では前年同月比▲4.9%と11月分の▲5.4%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。そのうちテレビは11月分の前年同月比▲15.2%から12月分は▲11.4%へと下落率が縮小した.総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲3.8%で、11月分の前年同月比▲3.7%からマイナス幅が若干拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●12月分の宿泊料は前年同月比+1.5%で、11月分の前年同月比+1.2%から僅かに上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。11月分は前年同月比+3.3%の上昇だった外国パック旅行費は、12月分では同+3.7%に上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●12月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+0.5%と11月分の+0.8%から伸び率が鈍化した。一方、生鮮食品を除く財は▲0.7%と11月分の▲1.0%から下落率が縮小した。また、サービスは+0.2%の上昇と11月分と同じ上昇率だった。

●一方、12月分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.4%と11月分の+0.6%より伸び率が鈍化した。12月分の帰属家賃は前年同月比▲0.4%で11月分と同じだが、生鮮食品の上昇率が鈍化したためだ。

●全国消費者物価指数・総合指数・前年同月比に対する財とサービスの11月分から12月分への寄与度差は、財では▲0.16%、生鮮食品を除く財は+0.13%。サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差は0.00%であった。

●12月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は99.8で、前月比は0.0%、前年同月比は▲0.2%の下落だった。11月分の前年同月比は▲0.4%だったので下落率が縮小した。10カ月連続して前年同月比は下落となった。

●12月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は100.4で、前月比は▲0.1%の下落、前年同月比は0.0%だった。前年同月比は13年8月分の▲0.1%が下落した直近最後の月で、40カ月連続して下落でない状況が続いている。

●12月分の総合指数の季節調整済み指数は100.2になった。前月比は▲0.2%下落だった。生鮮食品を除く総合指数の季節調整済み指数は99.8で前月比+0.1%上昇。3カ月連続の上昇となった。16年で99.8以上の水準は1月分(99.9)、2月分(99.8)しかない。季節調整済み指数からみると、17年は前年同月比上昇になる月が多そうだ。また食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数の12月分・季節調整済み指数は100.3でこちらは前月比0.0%と5カ月連続の横這いだった。

●16年の全国消費者物価指数・年平均の前年比は総合指数が▲0.1%(5年ぶりマイナス)、生鮮食品を除く総合指数が▲0.3%(4年ぶりマイナス)とマイナスだったが、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は+0.3%と伸び率は15年の+1.0%から鈍化したが、3年連続の上昇だった。

●ESPフォーキャスト調査・1月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比は、16年7~9月期の▲0.50%を底に、10~12月期は▲0.32%と下落率縮小、17年1~3月期になると+0.24%とプラスに転じる見込みだ.17年10~12月期は+0.88%と上昇率が緩やかに高まりそうだ。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年7~9月期(第2次速報値段階)は▲0.5%と、16年4~6月期の▲0.6%から若干マイナス幅が縮小した。今後、需給ギャップの改善が続けば、消費者物価指数・予想物価上昇率の上昇要因になっていくものと思われる。

●物価指数の前年比は、まず、商品指数が底打ちし、その後、国内企業物価指数、企業向けサービス価格指数が動き、最後に消費者物価指数が底打ちするというパターンが多い。

●消費者物価指数以外の物価指数にこのところ変化の兆しが見られるようになってきた。まず、日銀国際商品指数の前年同月比が9月分で+4.8%と14年6月の+2.6%以来の上昇に転じ、12月分では+50.7%になった。国内の商品指数も上昇傾向で、日経商品指数17種11月分は前年同月比+6.5%と14年11月の+1.8%以来の2年ぶりの上昇になり、12月分で同+13.2%と伸び率を高めた。

●国内企業物価指数(2010年基準)の前年同月比は16年5月分▲4.4%だったが、直近12月分で▲1.2%と7カ月で3.2ポイント減少率が縮小した。12月分の企業向けサービス価格指数の前年同月比は11月分の+0.3%から若干上昇し+0.4%になった。なお、16年10月分は15年8月分の+0.6%以来14カ月ぶりの高い+0.5%だった。なお、企業向けサービス価格指数の前年同月比は13年7月分から16年12月分まで、86年8月から93年9月まで86カ月間連続で上昇した時以来23年3カ月ぶりの42カ月連続の上昇である。

●貿易統計の入着原油価格は12月分で▲1.2%までマイナス幅が縮小した。速報値ベースの比較で12月下旬分の前年比+1.9%と約2年3カ月ぶりの上昇に転じた。16年は月次ベースで入着原油価格が33,385円/klを上回った月がない。原油価格が横這い以上なら、17年の各月の入着原油価格の前年同月比は全てプラスということになる。

(日銀:消費者物価の基調的な変動)

●総務省の発表を受け、日銀が発表した「消費者物価の基調的な変動」によると、12月分の総合(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は+0.1%で、11月分の+0.2%から0.1ポイント伸び率が鈍化した。3月分の45.5%をピ-クに7月分の29.6%まで4カ月連続低下を続けた「上昇品目比率-下落品目比率」は8月分で34.0%と幾分持ち直したあと再び低下し、今回12月分まで4カ月連続低下し19.7%となった。10%刈込平均値前年同月比は前回11月分0.0%だったが、12月分はも+0.1%になった。7月分以来5カ月ぶりの上昇である。

(内閣府:消費者物価指数:生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合)

●また、内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだ。2015年基準の、内閣府流コア指数(固定基準)1~3月分の前年同月比は、+0.9%だった。4月分以降伸び率が鈍化し、9月分で2010年基準時代の13年9月分の0.0%以来の低い伸び率の+0.1%になったが、10月分では+0.2%と伸び率が僅かに高まった。しかし、11月分・12月分では再び徐々に鈍化し0.0%になった。また、内閣府が月例経済報告の判断で重視しているとみられる季節調整済み前月比では、12月分の前月比0.0%と横這いになった。連鎖基準の前月比も12月分は0.0%と横這いになった。

(1月分の暫定的予測)

●1月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.2%程度と、12月分の+0.3%から伸び率が鈍化すると見た。生鮮食品が一段と落ち着きを取り戻すことが主因だろう。前月比は▲0.4%程度とみる。

●1月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は0.0%程度になると予測する。11カ月ぶりに下落基調から抜け出しそうだ。前月比は▲0.3%程度とみる。

●また、1月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は0.0%程度と13年8月分の▲0.1%以来の下落は再び回避されると予測する。前月比は▲0.6%程度になろう。

●関連データである1月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は+0.1%と12月分の0.0%から上昇に転じた。生鮮食品の前年同月比は+7.8%の上昇で、12月分の+14.6%から上昇率が一段と鈍化した。天候不順の影響が剥落しているようだ。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.25%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲6.8%で12月分の下落率の▲8.5%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.09%で、上昇要因になった。また、1月分ではテレビの前年同月比が▲0.6%と、前年の反動があったとみられる12月分の▲11.5%から下落幅が大幅に縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%になった。1月分の宿泊料は前年同月比+2.7%で、12月分の+1.5%から伸び率が上昇したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。1月分の消費者物価指数・総合の東京都区部(速報)の前月比は▲0.4%だった。また、大阪市の総合1月分前年同月比は▲0.4%と12月分の▲0.3%から下落率が拡大した。1月分の前月比は▲0.2%だった。

●1月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.3%で12月分の▲0.6%から下落率は縮小したが11カ月連続の下落になった。1月分の前月比は▲0.4%だった。大阪市の生鮮食品を除く総合の1月分前年同月比は▲0.8%で12月分の▲0.8%と同じ下落率だった。1月分の前月比は▲0.3%だった。

●1月分の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は0.0%と12月分の▲0.2%から持ち直し2カ月ぶりの横這いとなった。1月分の前月比は▲0.7%だった。また、大阪市では1月分前年同月比は▲0.4%で12月分の▲0.5%から下落率が縮小したが、7カ月連続の下落になった。1月分の前月比は▲0.5%だった。