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2016年12月調査 日銀短観予測

2016年12月7日

―大企業・製造業の業況判断DIはQUICK短観・ロイター短観とも上昇、日銀短観も上昇を予測―
―日銀短観・大企業・製造業の業況判断DIは1年半ぶりに前期から上昇。景気の持ち直しを示唆か―

●12月調査日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが9月調査の+6から9ポイント程度上昇し、直近のピークの15年6月調査と同水準の+15程度になると予測する。15期連続で「良い」超のプラスとなる。前期から改善するのは15年6月調査以来1年半ぶりだ。このところ円安・株高の動きが出る中、景気に持ち直しの動きが出てきたことを示唆する明るい内容になろう。

●一方、大企業・非製造業の業況判断DIは+22程度と9月調査の+18より4ポイント程度上昇すると予測する。+22は16年3月調査と同じ水準である。但し、天候要因の影響などから小売などは引き続き弱含みそうだ。非製造業は22期連続で「良い」超のプラスになろう。

●この予測は、日銀短観DIと連動性が高いことが知られている12月調査のロイター短観、12月調査のQUICK短観などを参考にした。

●12月7日に発表されたロイター短観12月調査の調査期間は11月22日から12月2日となっている。400社ベースの製造業の業況判断DIは9月調査の+5から11ポイント上昇の+16となった。内訳をみると、素材型は+13と9月調査の+2から上昇、加工型は+18と9月調査の+6から12ポイント上昇した。トランプ氏が米国の次期大統領に決まり、減税・インフラ投資などの政策への期待が市場で高まる中、円安・ドル高が進行し、製造業の業況判断DIが改善したものとみられる。

●また、非製造業DIは9月調査の+14から5ポイント上昇の+19となった。内訳をみると、不動産・建設は+50と9月調査の+48から小幅上昇したが、小売は▲14で9月調査の▲9から5ポイント低下した。運輸・電力等は9月調査の+4から9ポイント上昇し+13となった。

●ロイター短観200社ベースの製造業の業況判断DIは9月調査の+7から8ポイント上昇し+15となった。また、非製造業DIは9月調査の+10から10ポイント上昇の+20となった。

●また、同じ12月7日に発表されたQUICK短観12月調査の調査期間は11月22日から12月4日である。製造業の業況判断DIは9月調査の+10から4ポイント上昇の+14となった。また、非製造業DIは9月調査の+29から1ポイント上昇の+30となった。製造業・非製造業ともロイター短観・QUICK短観どちらも上昇した。

●大企業・製造業の業況判断DIが+15程度と予測通りなら、9月調査の「先行き見通し」+6を9ポイント上回ることになる。また大企業・非製造業が+22程度と予測通りなら、9月調査の「先行き見通し」+16を6ポイント上回ることになる。足元の景況感が事前の予想より製造業、非製造業ともかなり上振れることとなろう。

●ロイター短観の3月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースで+10と12月実績の+16より6ポイント悪化、非製造業・400社ベースの3月までの「先行き見通し」は+20と、12月実績の+19から1ポイントの改善予想である。製造業・200社ベースでは+6と12月実績の+15より9ポイント悪化、非製造業・200社ベースの3月までの「先行き見通し」は+25と、12月実績の+20から5ポイントの改善予想である。QUICK短観の製造業の3月までの「先行き見通し」は+13で12月実績の+14より1ポイント悪化の予想、非製造業の「先行き見通し」は+27で12月実績の+30から3ポイントの悪化予想である。英国のEU離脱問題をはじめとする欧州情勢やトランプ次期米国大統領就任など、世界的に保護主義的な動きが強まってきている中、先行きの不透明さから、製造業の先行き判断が慎重になりやすいとみられる。

●日銀短観の大企業・業況判断DIの3月までの「先行き見通し」は、ロイター短観やQUICK短観や最近の経済動向などを参考にして、製造業で12月実績比5ポイント悪化の+10程度、非製造業は12月実績比横這いの+22程度と予測した。

●12月調査日銀短観の中小企業の業況判断DIは製造業が9月調査の▲3から若干改善し▲1程度、非製造業が9月調査の+1から1ポイント上昇の+2程度と予測した。商工中金・中小企業景況判断指数や景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DIなどを参考にして予測した。

●参考データの商工中金の中小企業月次景況観測の景気判断指数は直近11月分で製造業が47.4(9月分47.4、10月分48.1、12月予測47.9)で、非製造業は11月分が49.0(9月分47.8、10月分48.4、12月予測49.9)となっている。

●景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DI・季節調整値の最近の推移は製造業が8月調査43.9、9月調査44.3、10月調査47.4(11月調査は12月8日発表)で、非製造業は8月調査46.1、9月調査47.9、10月調査49.1とどちらも改善基調となっている。なお、日銀短観は水準の調査なので、景気ウォッチャー調査の方向性の現状判断DIではなく参考データの現状水準判断DIの方を重視した。

●中小企業・製造業の業況判断DIが▲1程度と予測通りなら、9月調査の「先行き見通し」▲5を4ポイント上回ることになる。また中小企業・非製造業が+2程度と予測通りなら、9月調査の「先行き見通し」▲2を4ポイント上回ることになる。足元の景況感が事前の予想より製造業、非製造業とも上振れることとなろう。

●日銀短観の中小企業・業況判断DIの3月までの「先行き見通し」は、景気は長い足踏みからようやく改善の動きが出てきたものの先行き不透明さが依然強い中では慎重な回答が多いように思われる。製造業で12月実績比2ポイント悪化の▲3程度、非製造業は12月実績比3ポイント悪化の▲1程度と予測した。非製造業では先行きを慎重にみるというクセを考慮した。

●2016年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比+6.1%程度と、9月調査の同+6.3%から僅かに下方修正されると予測した。過去の修正パターンや、最近の設備投資計画調査などを参考にした。

●2016年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲3.2%程度と、9月調査の同▲9.0%から上方修正されると予測した。中小企業の設備投資計画は例年3月調査が弱く、その後は1年後の3月調査まで調査の度に改善していく傾向があることなどを参考にした。