ホームマーケット経済指標解説2017年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2017年1~3月期実質GDP(第1次速報値)について

2017年5月18日

―実質GDP成長率は前期比年率+2.2%、約11年ぶり5四半期連続の増加―
―輸出は堅調で3四半期連続の増加、外需寄与度前期比+0.1%―
―予告信号「笑点視聴率」示唆通り、個人消費は前期比増加に―
―17年度政府実質GDP成長率見通しは各四半期・前期比年率+1.4%程度で達成―

●17年1~3月期実質GDP成長率・第1次速報値は前期比+0.5%、前期比年率+2.2%となった。プラス成長は5四半期連続で、戦後最長の「いざなみ景気」の後半の時期にあたる05年1~3月期から06年4~6月期の6四半期連続以来の長い成長になった。

●1~3月期の個人消費・前期比は10~12月期が天候不順の影響を受け横這いともたついた反動もあって前期比+0.4%のしっかりした伸び率になった。予告信号灯のひとつ「笑点」の視聴率が1~3月期ではビデオリサーチ調査の各週視聴率ランキングで一度も「その他娯楽番組」のジャンルで1位にならなかったことと整合的だ。日曜の夕方に買い物やレジャーで出かけていた人が相対的に多かったことを示唆していたからだ。

●輸出は、世界経済の景気回復の流れを受けて好調が続き、3四半期連続で前期比増加となった。純輸出の前期比寄与度は+0.1%で3四半期連続プラス寄与になった。

●1~3月期・第1次速報値の名目GDP成長率は前期比▲0.0%、前期比年率▲0.1%とマイナス成長になった。控除項目の輸入のデフレーターが前期比+6.5%の高い伸び率になったことが主因だ。

●16年度の実質GDP成長率は+1.3%、名目GDP成長率は+1.2%になった。

●実質個人消費の内訳をみると、耐久財の前期比は+2.0%と5四半期連続の増加になった。今後はエコポイントで購入したカラーテレビの買い替え需要等も期待される分野だ。半耐久財の前期比は+3.2%と6四半期ぶりの増加になった。非耐久財の前期比は▲0.6%と4四半期連続の減少になった。サービスの前期比は+0.4%と10四半期連続の増加になった。

●雇用者報酬の前期比は名目▲0.2%、実質▲0.1%となった。名目は14四半期ぶりの前期比減少に、実質は2四半期連続前期比減少になってしまった。なお、16年度の実質雇用者報酬は前年度比+2.1%、名目雇用者報酬は前年度比+1.9%になった。

●実質設備投資1~3月期の前期比は+0.2%と2四半期連続の増加になった。名目の前期比(季節調整済み)も+0.7%と2四半期連続の増加になった。

●供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+10.8%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+26.3%であると公表された。法人企業統計が出たときに比較することで、17年1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となる数字だ。

●実質住宅投資は前期比+0.7%と、5四半期連続の増加になった。 4月27日に公表された「1~3月期四半期別GDP速報における推計方法の変更等について」によると、「平成29年1月から着工され、「建築物着工統計」(国土交通省)に反映されている2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に係る選手村宿泊施設については、進捗ベースに転換した上で、国内総生産(支出側)では「民間住宅」に反映される」ということだ。

●民間在庫投資の実質・前期比寄与度は+0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度0.0%、仮置き値の原材料在庫は前期比寄与度▲0.0%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は0.0%、残る流通在庫は前期比寄与度+0.1%だった。

●実質政府最終消費支出は前期比+0.1%と3四半期連続の増加。実質公共投資は、前期比▲0.1%と3四半期連続の減少だった。公的在庫投資の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。

●外需(純輸出)の前期比寄与度は+0.1%と3四半期連続のプラス寄与になった。実質輸出は前期比+2.1%と3四半期連続の増加になった。財は前期比+3.1%と3四半期連続の増加になった。サービスは前期比▲1.6%と2四半期ぶりの減少になった。実質輸入の前期比は+1.4%と2四半期連続の増加になった。財に関しては前期比+0.3%と2四半期連続の増加、サービスは前期比+1.5%と2四半期連続の増加になった。

●実質GDPに海外からの実質純所得と交易利得を加えた実質GNI(国民総所得)は前期比+0.2%の増加になった。

●1~3月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.8%で、3四半期連続マイナスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.1%と、7四半期ぶりにプラスの伸び率になった。一方、1~3月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.6%で、2四半期ぶりにマイナスの伸び率になった。国内需要デフレーターの前期比は▲0.0%と3四半期ぶりにマイナスの伸び率になった。

●17年度の政府実質GDP成長率見通し+1.5%は各四半期・前期比年率+1.4%程度(前期比+0.33%程度)で達成可能だ。ちなみに、16年度から17年度へのゲタは+0.6%だ。先行きについても、緩やかな景気拡張基調が期待されるので、+1.5%は十分実現可能な数字と言えそうだ。

●6月8日に発表される1~3月期第2次速報値では、6月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や在庫投資などを中心に改定される。

●法人企業統計では在庫投資の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、前年同期比マイナス寄与だった項目はマイナス寄与が大きい順に流通在庫、原材料在庫。一方、前年同期比プラス寄与だった項目は大きい順に仕掛品在庫、製品在庫だった模様だ。