ホームマーケット経済指標解説2017年1月分全国消費者物価指数について

2017年1月分全国消費者物価指数について

2017年3月3日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.1%、13カ月ぶりに上昇―
―同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比+0.2%、40カ月連続上昇―
―東京都区部・生鮮食品を除く総合・前年同月比2月分は▲0.3%と1月分と同じ―
―日銀流コア・内閣府流コア共に、総務省データ公表形式変更に伴い発表中止―
―貿易統計2月分の入着原油価格前年同月比+70%台まで上昇の可能性―

●1月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.0となり、前月比(季節調整値)+0.1の上昇、前年同月比は+0.4%と4カ月連続の上昇だ。

●生鮮食品の前年同月比は+8.0%の上昇だった。12月分は+13.8%だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.21%と下落要因になった。生鮮野菜などが天候不順で上昇していたが月を追うごとに落ち着いてきた。但し、キャベツは前年同月比+69.1%と高い上昇率だ。エネルギー全体の前年同月比は▲0.8%下落した。12月分は▲4.4%下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.27%の上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目とも、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は電気代を除き概ねプラスに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回の16年12月分では+1.6%だったが、今回1月分では+11.2%と上昇率が高まった。前月比は+1.8%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.17%と物価押上げ要因になった。灯油の前年同月比は、16年12月分では0.0%だったが、今回の1月分では+19.7%になった。前月比は+7.7%だった。前年同月比に対する寄与度差は+0.07%だった。一方、原油市況動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は▲5.6%とまだマイナスだが、12月分の▲6.5%からの下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%と若干の物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲10.6%と、12月分の▲11.1%から下落率がやや縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は1月分では前年同月比▲3.6%と12月分の▲4.9%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲1.3%で、12月分の前年同月比▲3.8%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。

●1月分の宿泊料は前年同月比+2.7%で、12月分の前年同月比+1.5%から上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。12月分は前年同月比+3.7%の上昇だった外国パック旅行費は、1月分では同+6.7%に上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。

●1月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+0.7%と12月分の+0.5%から伸び率が上昇した。12月分から1月分への寄与度差は、財では+0.11%だった。一方、生鮮食品を除く財は0.0%と12月分の▲0.7%の下落から横這いになった。12月分から1月分への寄与度差は+0.32%と大きめだった。また、サービスは+0.2%の上昇と12月分と同じ上昇率だが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。

●一方、1月分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.6%と12月分の+0.4%より伸び率が上昇した。なお1月分の帰属家賃は前年同月比▲0.4%で12月分と同じだった。

●1月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は99.6で、前月比(季節調整値)+0.3の上昇、前年同月比は+0.1%の上昇となった。前年同月比がこれまでの下落から15年12月分(+0.1%)以来13カ月ぶりの上昇に転じた。

●1月分から総務省の発表形式が変わった。これまでの日銀が「消費者物価の基調的な変動」に中で発表していた総合(除く生鮮食品・エネルギー)が、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数として食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数にかわり第3番目の系列として公表資料の1頁に掲載されるようになった。

●また、内閣府が月例経済報告の判断で重視しているとみられるのは季節調整済み前月比だが、これも総務省の公表資料の1頁にこれまでの原数値の前月比に変わって掲載されることになった。また、これまで発表されていた内閣府流のコア指数は、消費者物価指数・生鮮食品を除く総合から、石油製品、電気代、都市ガス代、米類、切り花、鶏卵、固定電話通信料、診療代、介護料、たばこ、公立高校授業料、私立高校授業料を除いたものだったが、総務省があまりかわらないため、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の系列を公表することに伴い、今月からHPでの公表を中止した。

●1月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.3で、前月比(季節調整値)は0.0%、前年同月比は+0.2%の上昇だった。前年同月比は13年10月分以来40カ月連続で上昇が続いている。

●ESPフォーキャスト調査・2月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、16年7~9月期の▲0.50%を底に持ち直し、17年1~3月期になると+0.25%とプラスに転じる見込みだったが、1月分の結果は見通しに沿った内容になった。その後の見通しは緩やかに上昇し、17年10~12月期は+0.90%、18年7~9月期は+0.99%だ。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年10~12月期(第1次速報値段階)は▲0.4%と、16年7~9月期の▲0.5%から若干マイナス幅が縮小した。今後、需給ギャップの改善が続けば、消費者物価指数・予想物価上昇率の上昇要因になっていくものと思われる。

●物価指数の前年比は、まず、商品指数が底打ちし、その後、国内企業物価指数、企業向けサービス価格指数が動き、最後に消費者物価指数が底打ちするというパターンが多いが、現局面も同様の展開になった。

●消費者物価指数以外の物価指数にこのところ変化の兆しが見られるようになってきた。まず、日銀国際商品指数の前年同月比が16年9月分で+4.8%と14年6月の+2.6%以来の上昇に転じ、17年2月分では+59.4%になった。国内の商品指数も上昇傾向で、日経商品指数17種16年11月分は前年同月比+6.5%と14年11月の+1.8%以来の2年ぶりの上昇になり、17年2月分で同+21.6%の伸び率になった。

●国内企業物価指数の前年同月比は16年5月分▲4.6%だったが、直近17年1月分で+0.5%と15年3月分(+0.7%)以来の上昇に転じた。17年1月分の企業向けサービス価格指数の前年同月比は+0.5%になった。なお、16年10月分・12月分・17年1月分は15年8月分の+0.6%以来の高い前年同月比だ。なお、企業向けサービス価格指数の前年同月比は13年7月分から17年1月分まで、86年8月から93年9月まで86カ月間連続で上昇した時以来23年4カ月ぶりの43カ月連続の上昇である。

●貿易統計の入着原油価格は16年12月分の▲1.2%まで前年同月比マイナスだったが、17年1月分で+40.5%の大幅上昇に転じた。14年9月分の同+1.5%以来2年4カ月ぶりの上昇だ。速報値ベースの比較で2月上旬分の前年比は+67.6%と上昇率を高めた。16年の最安値は2月の22,479円・klで、原油価格が17年2月上旬分の39,186円・klと同水準なら、前年同月比は+74%程度になる。

(2月分の暫定的予測)

●2月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.1%程度と、1月分の+0.4%から伸び率が鈍化すると見た。生鮮食品が前年同月比が横ばい程度と落ち着きを取り戻すことが主因だろう。

●2月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+0.1%程度になると予測する。1月分と同じ上昇率を予測する。

●また、2月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は+0.1%程度と1月分の+0.2%から上昇率は鈍化すると予測する。

●関連データである2月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は▲0.3%と1月分の+0.1%の上昇から下落に転じた。生鮮食品の前年同月比は0.0%で、1月分の+8.1%の上昇率から横這いに鈍化した。天候不順の影響が剥落したようだ。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.33%だった。エネルギー全体の前年同月比は▲5.1%で1月分の下落率の▲6.8%からマイナス幅が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.09%で上昇要因になった。また、2月分では教養娯楽用耐久財の前年同月比が▲4.9%と、1月分の▲3.1%から下落幅がやや拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%になった。2月分の宿泊料は前年同月比0.0%で、1月分の+2.7%の上昇から横ばいに鈍化し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差が▲0.04%になった。また、大阪市の総合2月分前年同月比は▲0.4%と1月分と同じ下落率だった。3カ月連続の下落になった。

●2月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は▲0.3%で1月分と同じ下落率だった。12カ月連続の下落になった。大阪市の生鮮食品を除く総合の2月分前年同月比は▲0.7%で1月分と同じ下落率だった。11カ月連続の下落になった。

●2月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は0.0%と1月分の+0.1%の上昇から鈍化し横這いとなった。また、大阪市では2月分前年同月比は▲0.5%で1月分の▲0.3%から下落率が拡大し、8カ月連続の下落になった。