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2017年4月分全国消費者物価指数について

2017年5月26日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.3%、4カ月連続上昇―
―同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比0.0%、3月分の下落から脱出―
―全国消費者物価指数・財の前年同月比は+0.8%と3月分の+0.4%から上昇―
―全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.5%に上昇―
―5月分東京都区部消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比、17カ月ぶりの上昇―

●4月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.3となり、前年同月比は+0.4%と7カ月連続の上昇。前月比(季節調整値)は+0.1%の上昇だ。

●生鮮食品の前年同月比は+1.8%の上昇だった。3月分は▲0.4%の下落だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.09%と上落要因になった。不漁のいかは前年同月比+44.8%と3月分に引き続き高い上昇率になった。エネルギー全体の前年同月比は+4.5%と3月分の+3.9%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と上昇要因になった。

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はまちまちに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回3月分では+20.4%だったが、今回4月分では+14.9%と上昇率が鈍化した。前月比は▲0.1%と若干の低下だった。前年の水準の反動が大きい。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.08%と物価押下げ要因になった。灯油の前年同月比は、3月分では+29.9だったが、今回の4月分では+28.1%とほとんど同じになった。前月比は▲0.5%だった。前年同月比に対する寄与度差は▲0.00%だった。一方、原油市況動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+0.9%と3月分の▲2.0%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.10%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は▲5.0%と、3月分の▲7.5%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は4月分では前年同月比▲3.5%と3月分の▲4.6%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。また、家庭用耐久財は全体で前年同月比▲2.2%で、3月分の前年同月比▲1.6%から下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。通信は4月分では前年同月比▲4.5%と3月分の▲7.4%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.12%の物価上昇要因だった。携帯電話機の前年同月比をみると3月分では▲26.6%と大幅下落だったが、4月分では前年同月比▲14.3%と下落率が縮小した。

●4月分の宿泊料は前年同月比+3.6%で、3月分の前年同月比+1.8%から伸びを高めた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。3月分は前年同月比+4.3%の上昇だった外国パック旅行費は、4月分では同+4.0%の上昇に鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.00%だった。

●4月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+0.8%と3月分の+0.4%から上昇した。3月分から4月分への寄与度差は、+0.23%と物価上昇要因だった。また、生鮮食品を除く財は+0.7%と3月分の+0.4%から上昇した。3月分から4月分への寄与度差は、+0.14%と物価上昇要因だった。一方、サービスは0.0%と3月分の+0.1%の上昇から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.06%と物価下落要因だった。外食や家事関連サービスが鈍化した。

●また、4月分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.5%と3月分の+0.3%より伸び率が上昇した。なお4月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.3%で3月分の▲0.4%より下落率が縮小した。

●4月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.1で、前年同月比は+0.3%の上昇となった。前月比(季節調整値)は0.0%と横這いだった。前年同月比は1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、4カ月連続の上昇になった。

●4月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.7で、前年同月比は0.0%になった。前月比(季節調整値)は+0.1%だった。前年同月比は13年10月分以来17年2月分まで41カ月連続で上昇が続いていたが、そこで途絶えた。3月分では▲0.1%と13年7月分の▲0.1%以来44カ月ぶりの下落だったが、4月分では2カ月連続下落は回避された。

●ESPフォーキャスト調査・5月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、16年7~9月期の▲0.50%を底に持ち直し、17年1~3月期にプラスに転じた。その後の見通しは緩やかに上昇する見込みだ。17年4~6月期は+0.53%、17年7~9月期は+0.85%、17年10~12月期は+0.91%、18年10~12月期は+0.94%だ。今回4月分が前年同月比+0.3%にとどまったことで、6月調査の17年4~6月期の予測値が若干下方修正される可能性が出てきた。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算で16年10~12月期(第2次速報値段階)は▲0.4%と、16年7~9月期の▲0.5%から若干マイナス幅が縮小したもののマイナスである。一方、日銀の需給ギャップは16年7~9月期で+0.08%、10~12月期で+0.61%と2四半期連続で既にプラスになっている。今後、需給ギャップの改善が続けば、消費者物価指数・予想物価上昇率の上昇要因になっていくものと思われる。

●物価指数の前年比は、まず、商品指数が底打ちし、その後、国内企業物価指数、企業向けサービス価格指数が動き、最後に消費者物価指数が底打ちするというパターンが多いが、現局面も同様の展開になっている。

●但し「デフレ脱却はイリュージョンだ」とした一部スーパーでは値下げの動きがあり、日経CPI・NOW指数が足元でも前年比ゼロ近傍の動きを続けている。こうした動きを引き続き注視する必要があろう。

●5月分内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は76.2%と、16年9月の調査開始以来最大の数字になった。16年9月の58.9%から17.3ポイントも上昇した。

(5月分の暫定的予測)

●5月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.7%程度と、4月分の+0.4%から伸び率が高まると見た。

●5月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+0.5%程度と、4月分の+0.3%から伸び率が高まると予測する。

●また、5月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は0.0%程度と4月分に続き、横這いになると予測する。

●関連データである5月分の東京都区部消費者物価指数(速報)では、総合の前年同月比は+0.2%と4月分の▲0.1%の下落から上昇に転じた。生鮮食品の前年同月比は+1.7%で、4月分の+1.4%から上昇率がやや高まった。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。エネルギー全体の前年同月比は+1.5%で4月分の▲0.3%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.09%で上昇要因になった。5月分の家庭用耐久財の前年同月比は▲2.7%と、4月分の▲8.0%から下落率が縮小したので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.05%になった。5月分の教養娯楽用耐久財の前年同月比が▲4.4%と、4月分と同じになったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%になった。5月分の宿泊料は前年同月比+2.6%で、4月分の+3.6%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%になった。

●また、大阪市の総合5月分前年同月比は+0.1%と4月分の▲0.3%の下落から6カ月ぶりの上昇に転じた。

●5月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.1%と4月分の▲0.1%の下落から17カ月ぶりの上昇に転じた。大阪市の生鮮食品を除く総合の5月分前年同月比は0.0%で4月分の▲0.4%の下落から14カ月ぶりに脱した。

●5月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は4月分の▲0.1%下落から0.0%になった。3カ月ぶりに下落から脱した。また、大阪市でも5月分前年同月比は0.0%で4月分(▲0.4%)までの下落から9カ月ぶりに脱した。