ホームマーケット経済指標解説2017年6月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年6月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年7月31日

-6月分鉱工業生産指数は前月比増加に転じ、前年同月比は増加基調継続-
-基調判断は8カ月連続して「生産は持ち直しの動きがみられる」-
-4~6月期の在庫サイクルは「在庫積み増し局面」、在庫の前年比はマイナス-
-6月分一致CI前月差上昇、3カ月移動平均上昇、景気判断9カ月連続「改善」に-
-4~6月期実質GDP前期比で、個人消費はかなりしっかりした伸び率になりそう-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・6月分速報値前月比は+1.6%と2カ月ぶりの増加になった。鉱工業生産指数・6月分速報値の季節調整値は101.7になった。

●6月分速報値の前年同月比は+4.9%で8カ月連続の増加になった。最近の鉱工業生産指数は、均してみると増加基調が続いている。

●鉱工業出荷指数・6月分速報値前月比は+2.3%と2カ月ぶりの増加になった。

●6月分の生産をみると、15業種のうち輸送機械工業、化学工業(除.医薬品)、電気機械工業など12業種が増加し、電子部品・デバイス工業、その他工業、鉄鋼業の3業種が前月比減少となった。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、6月分の前月比は最頻値で+1.7%、90%の確率に収まる範囲で+0.7%~+2.7%とプラスの伸び率となっていた。6月分前月比実績の+1.6%は試算値の予想範囲内でも最頻値にかなり近い前月比になった。

●製造工業生産予測指数7月分前月比は+0.8%、8月分前月比は+3.6%で、増減を繰り返していた最近のパターンから脱却したかたちだ。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、7月分の前月比は最頻値で▲0.3%、90%の確率に収まる範囲で▲1.3%~+0.7%とプラスの伸び率となっている。製造工業生産予測指数前月比+0.8%は試算値の上限を0.1ポイント上回る伸び率だ。

●先行きの鉱工業生産指数7月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.3%)、8月分は予測指数の前月比で、9月分を横這いで延長した場合、7~9月期の前期比は+2.0%の増加になる見込みだ。一方、7月分・8月分を製造工業予測指数前月比(+0.8%、+3.6%)で、9月分を横這いで延長した場合は7~9月期の前期比は+3.0%の増加になる見込みだ。17年7~9月期は6四半期連続前期比プラスになりそうだ。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分・17年1月分・2月分・3月分・4月分・5月分に続き今回17年6月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になった。この判断は8カ月連続だ。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、16年4~6月期(出荷の前年比が▲1.9%、在庫が同▲0.5%)までは45度線を上回ったままだった。16年7~9月期で出荷の前年比が▲0.5%、在庫が同▲2.7%と45度線を下回った。10~12月期では出荷の前年比が+1.8%、在庫が同▲5.3%とさらに右下に動いた。17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.1%、在庫が同▲3.1%に動いた。現在、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入ったと言えよう。

(6月分景気動向指数予測)

●6月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.7程度と2カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、7月31日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列だ。最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数、日経商品指数の2系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差前月差マイナス寄与になると予測した。

●6月分の一致CIは前月差+1.5程度と2カ月ぶりの上昇になると予測する。最近、前月差は交互に上昇・下降を繰り返しているが、採用系列の生産指数(鉱工業)の影響を受けているとみられる。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の5系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・小売業が前月差寄与ゼロに、商業販売額指数・卸売業1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断は16年10月分から基調判断が景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になっている。6月分も、一致CIの前月差が予測通りなら3カ月移動平均の前月差が上昇するので、「改善を示している」という判断が9カ月連続で続くことになろう。

●6月分の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、7月31日午前9時時点で数値が判明している8系列中、最終需要財在庫率指数、新規求人数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストックの4系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは44.4%以上55.6%以下になることが確定している。残る、新設住宅着工床面積1系列はプラス符号になると予測する。

●6月分の一致DIは92.9%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業1系列が保合いになると予測する。

(4~6月期のGDP予測)

●4~6月期の個人消費の関連データは別表のようにしっかりした前期比になった。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4~5月平均の対1~3月平均比は+0.5%の増加である。総合的に考えると、4~6月期第1次速報値で6割弱のウエイトがある個人消費は、前期比でかなりしっかりした伸び率になる可能性が大きいとみられる。

●4~6月期のGDP予測に関するレポートは別途作成する予定である。