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2017年7~9月期法人企業統計・設備投資などについて

2017年12月1日

―設備投資(除くソフトウェア)前期比+1.0%、前年同期比+4.3%―
―7~9月期実質GDP第2次速報値は結果として第1次と同程度か―

●17年7~9月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+4.3%と4~6月期の前年同期比+0.6%からは3.7ポイント改善、4四半期連続の増加になった。前期比は+1.0%で2四半期ぶりの増加になった。また、ソフトウェア投資額を含むベースでは7~9月期の全産業の前年同期比は+4.2%だった。4~6月期の前年同期比+1.5%からは2.7ポイント改善した。 

●資本金1000万円以上1億円未満の中小企業の前年同期比は+7.7%で、4~6月期の前年同期比+1.9%からは5.8ポイント改善した。資本金1億円以上10億円未満の前年同期比は▲1.4%で、4~6月期の前年同期比+7.6から9.0ポイント鈍化した。一方、資本金10億円以上の大企業では前年同期比は+4.6%と、4~6月期の前年同期比▲0.8%の減少からは5.4ポイント改善し2四半期ぶりの増加に転じた。

 ●供給サイドのデータに基づいて算出した17年7~9月期GDP第1次速報値では、名目設備投資の前年同期比は+4.2%で4~6月期の+3.4%から増加率が0.8ポイント改善しているが、今回の法人企業統計の改善幅よりは小幅である。名目設備投資4~6月期の前期比(季節調整済み)は+0.6%と4四半期連続の増加である。

 ●7~9月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+10.7%で、需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+14.5%であると公表されている。7~9月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の名目原系列前期比は単純に計算すると、+15.0%で0.5ポイント増加率が大きくなった。

 ●その他のデータをみると、個人企業の設備投資は業種により動きはまちまちだが総じてみると下方修正要因になりそうだ。一方、9月分が反映されるソフトウェア開発・プログラム作成は若干の上方修正要因になりそうだ。

 ●なお、GDPベースの設備投資の算出には固定資産の当期末・前期末の関係などを考慮する断層補正が加味されるが、下方修正要因として働きそうだ。

(在庫投資)

●法人企業統計の仕掛品在庫をみると17年7~9月期は1兆7,687億円で16年7~9月期の6,645億円から1兆1,042億円の増加となった。原材料在庫は17年7~9月期は1,701億円で16年7~9月期の▲1,573億円から3,274億円の増加となった。合わせて1兆4,316億円、前年同期に比べ増加した。

 ●一方、17年7~9月期GDP第1次速報値の名目在庫投資・原数値は211億円で16年7~9月期の1,529億円から▲1,318億円の減少であった。17年7~9月期GDP第1次速報値では在庫投資・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.1%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、流通在庫、原材料在庫がこの順に前年同期比マイナス寄与で、仕掛品在庫、製品在庫がこの順に前年同期比プラス寄与だった模様だ。今回の法人企業統計からみると、原材料在庫は若干上方修正要因になる可能性があるとみられる。

●17年7~9月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.2%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫が前期比寄与度+0.1%、流通在庫は前期比寄与度+0.1%、一方、仮置き値の原材料在庫と同じく仮置き値の仕掛品在庫の前期比寄与度はともに0.0%だった。

(17年7~9月期GDP・第2次速報値)

●17年7~9月期GDP第2次速報値では、設備投資は前期比+0.3%程度と第1次速報値の同+0.2%から僅かに上方修正になるとみた。また、在庫投資の前期比寄与度は+0.3%程度とこちらも第1次速報値の同+0.2%から若干上方修正になるとみた。また、公共工事出来高の前年同月比は7月分+6.1%、8月分+5.3%だったが、9月分の伸び率は+1.4%で7~9月分平均より増加率が縮小した。このことからみて第2次速報値での公共投資の前期比は▲2.9%程度と第1次速報値の同▲2.5%から下方修正されるとみた。 

●なお、家計最終消費支出、民間企業設備の推計の需要側と供給側の統合比率の見直しが行われた結果、需要側の統合比率が低下することになった。個人消費では、これまで需要側の統合比率が約5割あったが、7~9月期第2次速報値公表時から約3割に低下する。設備投資では、これまで需要側の統合比率が約6割弱あったが、約5割弱に低下する。また、例年通り、7~9月期実質GDP第2次速報値においては、2016年度国民経済計算年次推計が反映される点にも留意する必要がある。 

●総合的に判断すると17年7~9月期GDP第2次速報値で、実質GDPは前期比+0.3%程度、前期比年率+1.4%程度と予測する。様々な影響があり予測が難しいが実質GDPは結果として概ね第1次速報値と同程度になると予測する。