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2017年9月分全国消費者物価指数について

2017年10月27日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.7%、9カ月連続上昇―
―同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比は+0.2%、3カ月連続上昇―
―10月分東京都区部消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.6%上昇―
―日銀・展望レポート・CPI見通し(前回値→予測最頻値)17年度+1.1%→+0.8%、18年度+1.5%→+1.4%、19年度+1.8%→+1.8%(共同通信調べ)―

●9月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.5となり、前年同月比は+0.7%と12カ月連続の上昇。前月比(季節調整値)は0.0%の横這いになった。

●生鮮食品の前年同月比は+1.2%の上昇だった。8月分は+0.8%の上昇だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%となった。さんまの前年同月比は+14.5%の上昇だった。 

●9月分のエネルギー全体の前年同月比は+7.6%と8月分の+7.0%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%と上昇要因になった。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はまちまちに働いた。ガソリンの前年同月比は、前回8月分では+7.8%だったが、今回9月分では+7.1%と上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。灯油の前年同月比は、8月分では+21.4%だったが、今回の9月分では+21.1%とやや鈍化した。前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、原油市況動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+7.9%と8月分の+7.0%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%と物価押上げ要因になった。都市ガス代の前年同月比は+7.6%と、8月分の+5.2%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は9月分では前年同月比▲2.1%と、8月分の前年同月比▲2.8%からやや下落率が縮小したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比+1.2%で、8月分の前年同月比+1.0%からやや上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。9月分の通信料(携帯電話)は前年同月比▲5.4%の下落だった。通信の9月分・前年同月比は▲3.5%と、8月分の前年同月比▲4.5%から下落率が縮小した。総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.05%と上昇要因になった。 

●9月分の宿泊料は前年同月比+0.7%で、8月分の前年同月比+1.8%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。8月分は前年同月比+1.3%の上昇だった外国パック旅行費は、9月分では同+3.1%の上昇になった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。 

●高額医療を受けた時の自己負担が引き上げられた診療代の影響で、8月分に保健医療サービスは+3.1%の上昇になったが、今回9月分は前年同月比+3.1%と同じ上昇率だったので、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●9月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.5%と8月分の同+1.4%からやや上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、+0.07%と物価上昇要因になった。また、生鮮食品を除く財も+1.5%と8月分の+1.4%から上昇した。8月分から9月分への寄与度差は、+0.05%と物価上昇要因だった。一方、サービスの前年同月比は0.0%と8月分の同0.0%と同じ横這いになった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。なお、一般サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だが、通信・教養娯楽関連サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差▲0.02%が主因である。

●また、9月分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+0.9%と8月分の+0.8%から上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.07%だった。なお9月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で8月分と同じだった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●9月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.3で、前年同月比は+0.7%の上昇となった。前月比(季節調整値)は0.0%だった。前年同月比は1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、9カ月連続の上昇になった。前年同月比の+0.7%は8月分・9月分と2カ月連続で、消費税率引き上げの影響(+2.0%)を除くと、2014年11月の+0.7%(消費税率引き上げの影響含む+2.7%)以来の上昇率である。 

●9月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.8で、前年同月比は+0.2%になった。前月比(季節調整値)は0.0%だった。前年同月比は13年10月分以来17年2月分まで41カ月連続で上昇が続いていたが、そこで途絶えた。17年3月分では▲0.1%と13年7月分の▲0.1%以来44カ月ぶりの下落だったが、4月分・5月分・6月分はともに0.0%で、7月分で5カ月ぶりの上昇に転じ、9月分で3カ月連続の増加になった。 

●ESPフォーキャスト調査・10月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、17年4~6月期で+0.4%になった後、見通しでは緩やかに上昇する見込みだ。17年7~9月期は+0.65%、10~12月期は+0.74%、18年1~3月期と4~6月期はともに+0.72%と足踏み状態になった後、7~9月期は+0.80%、10~12月期は+0.84%、19年1~3月期は+0.86%への緩やかな上昇を見込んでいる。 

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では16年10~12月期0.0%の後、17年1~3月期+0.1%、4~6月期は+0.5%のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年7~9月期+0.07%、10~12月期+0.57%、17年1~3月期+0.79%と3四半期連続でプラスになっている。ともにマイナスを脱し、消費者物価指数の上昇要因になるものと思われる。 

●10月の内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は75.3%になった。4月分以降7カ月連続して70%台になっている。9月の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると概ね横ばいとなった。16年前半までにみられた下落基調に落ち着いた見通しになっている。 

●10月26日に共同通信が「金利羅針盤」の中で発表した、10月31日発表の日銀展望レポート・コアCPI予測(生鮮食品を除く総合、消費税増税の影響を除く)に関する13社のアンケート調査結果によると、各年度の前回値→今回最頻値は17年度+1.1%→+0.8%(6社)、18年度+1.5%→+1.4%(7社)、19年度+1.8%→+1.8%(12社)となっており、17年度は下方修正が見込まれている。

(10月分の暫定的予測)

●10月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は+0.2%程度と9月分の+0.7%から上昇率は鈍化しよう。但し、10月の2回の台風が下旬の生鮮食品に影響すると見て、13カ月連続上昇になると予測する。 

●10月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+0.8%程度と9月分の+0.7%から上昇率がやや高まると見た。10カ月連続上昇になると予測する。 

●10月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は+0.3%程度と9月分の+0.2%からやや上昇率を高め4カ月連続の上昇と予測する。 

●関連データである10月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)では、総合の前年同月比は▲0.2%と9月分の+0.5%の上昇から6カ月ぶりに下落に転じた。中旬速報値では前年に比べて天候が落ち着いていたため、生鮮食品の前年同月比は▲16.3%で、8月分の+0.4%の上昇から大幅下落に転じた。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は▲0.79%だった。 

●エネルギー全体の前年同月比は+9.8%で8月分+9.2%からやや上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%で上昇要因になった。10月分の家庭用耐久財の前年同月比は+4.0%と、9月分の+2.2%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%になった。また10月分の教養娯楽用耐久財の前年同月比は+0.9%と、9月分の▲0.1%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。10月分の宿泊料は前年同月比+1.0%で9月分の+0.7%から上昇率がやや高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%になった。 

●また、大阪市の総合10月分前年同月比は▲0.2%で9月分の+0.3%から上昇から下落に転じた。3カ月ぶりの下落だ。生鮮食品の10月分前年同月比は▲7.4%だ。 

●10月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.6%と9月分の+0.5%から若干上昇率を高めた。4カ月連続の上昇だ。大阪市の生鮮食品を除く総合の10月分前年同月比は+0.1%で9月分と同じになった。3カ月連続の上昇だ。 

●10月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.1%で9月分の0.0%の横這いから上昇になった。また、大阪市の10月分前年同月比は▲0.3%で9月分の▲0.3%と同じ下落率で14カ月連続の下落になった。