ホームマーケット経済指標解説2017年9月分景気動向指数(速報値)

2017年9月分景気動向指数(速報値)

2017年11月8日

-先行CI前月差▲0.6、一致CI前月差▲1.9、ともに2カ月ぶりの下降-
-一致CI3カ月後方移動平均は振幅目安▲1.04下回る▲0.33と小幅低下-
-基調判断12カ月連続「改善を示している」継続、いざなぎ超え確認-

●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIは前月差▲0.6と2カ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になった。

●一致CIは前月差▲1.9と2カ月ぶりの下降になった。最近、前月差は交互に上昇・下降を繰り返しているが、採用系列の生産指数(鉱工業)の影響を受けているとみられる。速報値からデータが利用可能な7系列中、商業販売額指数・小売業1系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列が前月差マイナス寄与になった。 

●8月分の一致CIの指数水準は117.7。これは消費税引き上げ前の駆け込みが出た14年3月分の117.6を上回り、リーマンショック前の07年10月分の118.8以来の水準であった。9月分の一致CIの指数水準は115.8だ。これは、東日本大震災発生時のボトムで直近のボトムである11年4月分の95.8よりは20.0ポイント高い水準である。

 ●一致CIの3カ月後方移動平均は▲0.33ポイント低下し、2カ月ぶりの下降になった。振幅目安の▲1.04を下回る小幅なマイナスである。7カ月後方移動平均は0.12ポイント上昇し、14カ月連続の上昇になった。

 ●一致CIを使った景気の基調判断をみると、15年5月分~16年9月分の1年5カ月間もの間、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」という同じ基調判断が続いていたが、16年10月分で「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~17年8月分まで同じ基調判断だった。今回9月分も「改善を示している」で、12カ月連続して最高の判断が続いている。

●基調判断が、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるには「当月の前月差の符号がマイナス。かつ3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が振幅目安の1標準偏差分(▲1.04)以上」であることが必要だ。

 ●また基調判断が、事後的に判定される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるには、「当月の前月差の符号がマイナス。かつ7カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(▲0.87)以上」であることが必要だ。

 ●10月分で、「足踏み」になるには、2カ月の前月差の合計が▲1.04以上になる必要がある。▲2.3ポイント以上の前月差大幅な下落幅になることが必要だ。また、「下方への局面変化」などになるには、▲7.5ポイント以上の前月差大幅な下落幅になることが必要だ。10月分の製造工業生産予測指数の前月比が+4.7%であることから、第1系列の生産指数(鉱工業)前月比が大幅な減少になることは考えにくく、にわかに基調判断が下方修正される可能性はないだろう。

 ●12年12月から始まった「アベノミクス景気」は17年3月分で52カ月間の長さになり、戦後3番目の長さであった86年12から始まった「バブル景気」の51カ月を超え、単独3位になった。景気動向指数・基調判断からみて、9月分でさらに長さの記録を伸ばし、58カ月と戦後2番目の長さであった「いざなぎ景気」を超えたことが、暫定的に確認された。公式には時間をおいて判断される。

●今回9月分速報値では、先行DIは66.7%と景気判断の分岐点の50%を3カ月連続で上回った。また、一致DIは35.7%でこちらは景気判断の分岐点の50%を2カ月ぶりに下回った。

●9月分景気動向指数・改定値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は11月9日である。また在庫率関連データなどが11月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

●9月分景気動向指数・改定値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。確報値の発表日は11月22日である。速報値の寄与は前月差▲0.15程度とみられる。確報値も速報値と同じで、鉱工業生産指数などの確報値も速報値と同じと仮定すると、一致CIは▲1.9だった速報値と同程度が見込まれ、「改善」の基調判断は変わらないとみられる。また、一致DI上の所定外労働時間指数の速報値段階の符号はプラスになる。所定外労働時間指数や鉱工業生産指数などの確報値が速報値と同じだとすると、一致DIは速報値の35.7%から43.8%に上方修正されようが、50%割れは変わらない。 

●10月分の先行CIの採用系列で、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。消費者態度指数1系列が前月差マイナス寄与に、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与になることが判明している。

●また、10月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列でプラス符号は日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列、保合いは、消費者態度指数1系列と判明している。10月分速報値段階の先行DIは38.9%以上94.4%以下が確定している。