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2017年11月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年12月28日

-11月分鉱工業生産指数は前月比+0.6%、今年初の2カ月連続増加-
-11月分の基調判断は「生産は持ち直している」に上方修正-
-10-12月期鉱工業生産指数は28年半ぶりの7四半期連続前期比増加に-
-11月分景気動向指数一致CI前期差プラスの景気判断は14カ月連続「改善」-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・11月分速報値前月比は+0.6%と今年初めて2カ月連続の増加になった。季節調整値の水準は103.6と17年4月分の103.8以来の水準になった。前年同月比は+3.7%で13カ月連続の増加になった。

●11月分速報値の生産指数をみると、15業種のうち、はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業など10業種が増加し、化学工業(除.医薬品)、プラスチック製品工業、その他工業など5業種が前月比減少となった。はん用・生産用・業務用機械工業の半導体製造装置、電子部品・デバイス工業のメモリやCCDなどの生産が好調だった。

●11月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+2.4%と2カ月ぶりの増加、前年同月比は+2.4%。前年同月比は、生産指数同様に、昨年11月分から13カ月連続して増加が続いている。

●11月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲1.0%で2カ月ぶりの前月比減少となった。しかし、昨年11月分が▲1.8%減少だったので前年同月比は+2.8%と10月分の+2.0%から上昇した。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲2.4%になり、引き続き「在庫積み増し局面」にある状況だ。17年10~11月では出荷の前年比が+2.5%、在庫が同+2.8%と45度線を上回ったが一時的な動きの可能性があるとみられ、10~12月期全体で局面判断する必要がありそうだ。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、11月分の前月比は最頻値で▲0.1%、90%の確率に収まる範囲で▲1.1%~+0.9%となっていた。11月分前月比実績の+0.6%は試算値の予想範囲の上限に近い方の伸び率になった。

●製造工業生産予測指数12月分前月比は+3.4%、1月分前月比は▲4.5%である。1月分が大幅減少になっているが、これは経済産業省のHPによれば「来年1月の生産計画は、この段階で今年10月実績のレベルのものとなっており、12月実績段階で、補正値程度に伸び幅が縮小したとしても、1月の生産計画に大きな上方修正がない限り、来年1月の生産は前月比マイナスになるものと思われます。ここは、12月の輸送機械工業の生産計画が、通常より高くなっていることの反動分などの影響があるようで、この1月の生産計画も、今年1月の実績を上回っています。」ということだ。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、12月分の前月比は最頻値で+1.8%、90%の確率に収まる範囲で+0.8%~+2.8%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数12月分を先行き試算値最頻値前月比(+1.8%)で延長した場合は10~12月期の前期比は+1.5%の増加になる見込みだ。

●先行きの鉱工業生産指数12月分を製造工業予測指数前月比(+3.4%)で延長した場合は10~12月期の前期比は+2.0%の増加になる見込みだ。

●17年10~12月期までで7四半期連続前期比プラスになる可能性が大きいと考えられる。7四半期連続前期比プラスになれば、87年7~9月期から89年4~6月期までの8四半期連続以来28年6カ月ぶりの連続記録になる。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。今回17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。

(11月分景気動向指数予測)

●11月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+2.3程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列が前月差プラス寄与に、マネーストック1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●11月分の一致CIは前月差+1.7程度と2カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列が前月差プラス寄与に、有効求人倍率1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、15年5月分~16年9月分の1年5カ月間もの間、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」という同じ基調判断が続いていたが、16年10月分で「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~17年10月分まで同じ最高の基調判断だった。予測通りだと、11月分の一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+0.20程度のプラスになるとみられ、14カ月連続して「改善を示している」という同じ判断が続くことになろう。

●11月分の先行DIは72.2%程度と景気判断の分岐点の50%を5カ月連続で上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、マネーストック1系列が保合いに、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数の2系列がマイナス符号になると予測する。

●11月分の一致DIは57.1%程度と景気判断の分岐点の50%を4カ月連続上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列は、生産指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の4系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、の3系列がマイナス符号になると予測する。ちなみに生産指数は比較対象の8月分を僅か0.1ポイント上回るプラスである。

(10~12月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10~11月平均対7~9月平均比は▲1.4%の減少になった。また非耐久消費財出荷指数は同▲0.1%の減少だ。しかし、同じく供給サイドの関連データである商業動態統計・小売業販売額指数の10~11月平均対7~9月平均比は+0.8%の増加だ。また、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10~11月平均対7~9月平均比は▲0.5%の減少である。乗用車販売台数の10~11月平均対7~9月平均比は▲4.2%の減少だ。GDP統計の実質個人消費と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の10月対7~9月平均比は▲0.2%の減少だ。総合的に判断すると、10~12月期の個人消費の前期比は微減か横這い圏で、12月分がかなり良ければ微増の可能性があるように思われる。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の10~11月平均対7~9月平均比は▲0.3%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同+2.3%の増加である。また、建設財は同▲1.3%の減少になった。但し、資本財(除.輸送機械)の生産予測指数は12月分前月比が+1.6%、建設財が同+4.4%である。供給サイドから推計される10~12月期の実質設備投資・前期比は微増になる可能性がある状況だろう。

●実質輸出入の動向をみると輸出の10~11月平均対7~9月平均比は+2.4%の増加になった。輸入は同+1.1%の増加になっている。10~11月分のモノの動向だけからみると、10~12月期の外需は2四半期連続してプラス寄与になりそうな状況だ。

●10~12月期の実質GDP第1次速報値は、2月14日に発表される。