ホームマーケット経済指標解説2017年12月分全国消費者物価指数について

2017年12月分全国消費者物価指数について

2018年1月26日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.9%、12カ月連続上昇―
―同・生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比は+0.3%、6カ月連続上昇―
―1月分東京都区部消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.7%上昇―

●12月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.2となり、前年同月比は+1.0%と15カ月連続の上昇。前月比(季節調整値)は+0.2%と2カ月連続の上昇になった。 

●なお、毎年12月分公表時に季節調整値は過去に遡って改訂されている。また、26日を含む週の金曜日に全国消費者物価指数が公表されるのは今回が最後になる。次回からは19日を含む週の金曜日に公表日が早まる。

●生鮮食品の前年同月比は+4.8%と、台風の影響が顕在化したことなどから、11月分の▲6.1%下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.50%となった。レタスの前年同月比は+70.5%の上昇だった。 

●12月分のエネルギー全体の前月比は+0.5%と上昇したものの前年12月分の前月比が高かったため、前年同月比は+7.7%と11月分の+8.5%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%だった。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はゼロのものとマイナスのものとがあった。ガソリンの前年同月比は、前回11月分では+10.5%だったが、今回12月分では+10.3%とほぼ同じ上昇率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。プロパンガスの前年同月比は、前回11月分では+0.6%だったが、今回12月分では+0.8%の上昇率で、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、灯油の前年同月比は、11月分では+26.0%だったが、12月分では+16.5%に鈍化した。前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。原油市況動向が遅れて反映される都市ガス代の前年同月比は+6.6%と、11月分の+7.5%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。電気代の前年同月比は+6.7%と11月分との+7.3%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は12月分では前年同月比▲1.5%と、11月分の前年同月比▲0.8%から下落率が拡大したが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比▲0.8%で、11月分の前年同月比+0.3%の上昇から下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。 

●12月分の宿泊料は前年同月比+0.7%で、11月分の前年同月比+1.5%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。11月分は前年同月比+3.6%の上昇だった外国パック旅行費は、12月分では同▲0.4%の下落に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。 

●12月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+2.0%と11月分の同+1.1%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、+0.48%と物価上昇要因になった。但し、生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.8%と11月分の+1.8%と同程度の上昇率で、11月分から12月分への寄与度差は▲0.02%だった。一方、サービスの前年同月比は+0.1%と11月分の同+0.1%と同程度の上昇率で、11月分から12月分への寄与度差は▲0.02%だった。なお、そのうちの一般サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だが、通信・教養娯楽関連サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差の▲0.03%が主因である。

●また、実質賃金等の計算に使用する12月分の全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比は+1.3%と11月分の+0.7%から大きく上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.47%だった。なお12月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で11月分と同じだった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。このため全国消費者物価指数・総合指数・持家の帰属家賃を除く総合・前年同月比の上昇の主因は生鮮食品で、実質賃金が12月分で前年比マイナスに転じれば生鮮食品高の影響ということになる。 

●12月分の生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.7で、前年同月比は11月分と同じ+0.9%の上昇となった。前月比(季節調整値)は0.0%だった。前年同月比は1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、12カ月連続の上昇になった。前年同月比の+0.9%は消費税率引き上げの影響(+2.0%)を除くと、2014年10月の+0.9%(消費税率引き上げの影響含む+2.9%)以来の上昇率である。 

●12月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101.0で、前年同月比は11月分と同じ+0.3%になった。前月比(季節調整値)は0.0%だった。前年同月比は13年10月分以来17年2月分まで41カ月連続で上昇が続いていたが、そこで途絶えた。17年3月分では▲0.1%と13年7月分の▲0.1%以来44カ月ぶりの下落だったが、4月分・5月分・6月分はともに0.0%で、7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、8~10月分で+0.2%、11~12月分で+0.3%と、6カ月連続の増加になった。 

●なお、17年の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.2で、前年比は+0.5%と2年ぶりの上昇となった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.7で、前年比は2年ぶりの上昇だが+0.1%にとどまった。ガソリンの前年比+10.9%、灯油が同+23.9%、電気代同+3.2%などエネルギー価格の前年比が高めだった。 

●ESPフォーキャスト調査・1月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、17年10~12月期で+0.81%と実績+0.87%よりやや低めに見ていた。18年1~3月期+0.78%と足踏み状態になった後、4~6月期+0.81%、7~9月期は+0.89%、10~12月期は+0.90%、19年1~3月期は+0.92%へと緩やかな上昇を見込んでいる。 

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では17年1~3月期▲0.1%の後、17年4~6月期は+0.4%とプラスに転じ、7~9月期は+0.7%のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.36%、17年1~3月期+0.69%、17年4~6月期は+1.18%、7~9月期は+1.35%と4四半期連続でプラスになっている。需給ギャップ(GDPギャップ)は消費者物価指数の上昇要因になるものと思われる。

●1月の内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は83.8%と16年9月の調査開始以来初の80%台になった。17年4月分以降12月分までは9カ月連続して70%台になっていた。12月の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると下げ止まり感、底打ち感が感じられる。 

(1月分の暫定的予測)

●1月分の全国消費者物価指数・総合の前年同月比は、生鮮食品が上昇するため、+1.3%程度と12月分の+1.0%から上昇率を高めよう。16カ月連続上昇になると予測する。 

●1月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同月比は+0.8%程度と、前年同月比でみてエネルギーの上昇率が鈍化するため、12月分の+0.9%から鈍化するものの、13カ月連続上昇になると予測する。 

●1月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前月比はプラスになるとみられる。季節調整値を重視しているとみられる政府の「月例経済報告」では消費者物価に関しては、この1月まで18カ月連続「横ばいとなっている」と判断している。最近の値上げは医療費、酒税の制度的な面もあることも考慮していそうだ。財に比べてもたついているサービス価格だが、春闘で賃上げが決まり人件費が上がる中で上昇する動きが確認されるようになれば、「月例経済報告」での消費者物価の判断の上方修正が実施されよう。 

●1月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は+0.4%程度と12月分の+0.3%から若干上昇率を高め、7カ月連続の上昇になると予測する。 

●関連データである1月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)では、総合の前年同月比は+1.3%と12月分の+1.0%から伸び率を高めた。中旬速報値では、生鮮食品の前年同月比は+14.2%で、12月分の+5.7%から上昇率を高めた。寒波の影響もありレタスの+172.9%をはじめ生鮮野菜が+24.5%になっている。生鮮食品の総合指数・前年同月比に対する寄与度差は+0.38%だった。 

●1月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)では、エネルギー全体の前年同月比は+7.4%で12月分+8.2%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.03%で下落要因になった。1月分の家庭用耐久財の前年同月比は+2.7%と、12月分の+4.2%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%になった。一方、1月分の教養娯楽用耐久財の前年同月比は+0.1%と、12月分の▲0.5%の下落から上昇に転じたが変化が小幅なため、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。1月分の宿泊料は前年同月比+1.0%で12月分の+0.7%から上昇率がやや高まった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。

●また、大阪市の総合1月分前年同月比は+1.0%で12月分の+0.6%から上昇率が高まった。2カ月連続上昇だ。生鮮食品の1月分前年同月比は+13.6%だ。生鮮野菜の前年同月比+23.4%が牽引している。 

●1月分の生鮮食品を除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.7%と12月分の+0.8%から上昇率がやや鈍化したが7カ月連続の上昇になった。大阪市の生鮮食品を除く総合の1月分前年同月比は+0.3%でこちらは11月分・12月分と同じになった。6カ月連続の上昇だ。 

●1月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前年同月比は、東京都区部(速報)は+0.4%で12月分と同じになった。4カ月連続の上昇だ。また、大阪市の1月分前年同月比は0.0%で12月分の▲0.1%の下落から横ばいになった。