ホームマーケット経済指標解説2017年12月分鉱工業生産指数・速報値について

2017年12月分鉱工業生産指数・速報値について

2018年1月31日

-12月分鉱工業生産指数は前月比+2.7%、3カ月連続の増加-
-12月分の基調判断は「生産は持ち直している」継続-
-10-12月期の生産はバブル期以来28年半ぶりの7四半期連続前期比増加-
-12月分景気動向指数一致CI前期差プラス、景気判断は15カ月連続「改善」-

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・12月分速報値前月比は+2.7%と3カ月連続の増加になった。季節調整値の水準は106.3と、リーマンショック発生直後の08年10月分107.4以来の水準になった。前年同月比は+4.2%で14カ月連続の増加になった。

●鉱工業生産指数・17年分の前年比は+4.5%と3年ぶりの増加になった。

●12月分速報値の生産指数をみると、15業種のうち、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、金属製品工業、電子部品・デバイス工業など12業種が増加、そのうち輸送機械工業の寄与が、全体の半分近くになっている。次いで、はん用・生産用・業務用機械工業の寄与が大きかった。一方、情報通信機械工業など3業種が前月比減少となった。

●12月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+2.7%と2カ月連続の増加、前年同月比は+4.0%。前年同月比は、生産指数同様に、16年11月分から14カ月連続して増加が続いている。

●12月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲0.4%で2カ月連続前月比減少となった。前年同月比は+2.0%と11月分の+3.0%から鈍化した。

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をみると、17年1~3月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲4.0%と、1~3月期まで生産が増加しやすい「意図せざる在庫減局面」に入っていた。17年4~6月期では出荷の前年比が+5.2%、在庫が同▲2.9%になり、在庫サイクル図からみて、「在庫積み増し局面」に入った。17年7~9月期では出荷の前年比が+3.7%、在庫が同▲2.4%だった。17年10~12月期では出荷の前年比が+2.9%、在庫が同+2.0%なり、引き続き「在庫積み増し局面」にある状況だ。

●経済産業省が公表している鉱工業生産指数の先行き試算値で、12月分の前月比は最頻値で+1.8%、90%の確率に収まる範囲で+0.8%~+2.8%となっていた。12月分前月比実績の+2.7%は前月に続き試算値の予想範囲の上限に近い方の伸び率になった。

●製造工業生産予測指数1月分前月比は▲4.3%、先月の▲4.5%とほぼ同程度の前月比である。先月、経済産業省がHPに公表した文章によれば「来年1月の生産計画は、この段階で今年10月実績のレベルのものとなっており、12月実績段階で、補正値程度に伸び幅が縮小したとしても、1月の生産計画に大きな上方修正がない限り、来年1月の生産は前月比マイナスになるものと思われます。ここは、12月の輸送機械工業の生産計画が、通常より高くなっていることの反動分などの影響があるようで、この1月の生産計画も、今年1月の実績を上回っています。」ということだった。

●製造工業生産予測指数2月分前月比は+5.7%である。今月、経済産業省がHPに公表した文章では「平成30年1月の生産計画については、調査結果そのままを集計すると、前月比マイナス4.3%と大きな低下を見込むという結果になっています。さらに、2月の生産計画は、この1月計画から前月比5.7%と大きく上昇するという結果でした。(中略)ただ、この1月の生産計画を前年実績と比較すると、9.7%増産という計画なので、生産水準自体の高さは維持しています。さらに、その先2月の生産計画は、昨年12月の水準を伺う勢いになっています。」とあり、基調として生産動向はしっかりしていると言えそうだ。

●鉱工業生産指数の先行き試算値では、1月分の前月比は最頻値で▲4.3%、90%の確率に収まる範囲で▲5.2%~▲3.3%となっている。

●先行きの鉱工業生産指数1月分を先行き試算値最頻値前月比(▲4.3%)、2月分は前月比(+5.7%:製造工業予測指数の前月比)、3月分を横這いで延長した場合延長した場合、は1~3月期の前期比は+1.2%の増加になる見込みだ。

●先行きの鉱工業生産指数1月分・2月分を製造工業予測指数前月比(▲4.3%、+5.7%)で、3月分を横這いで延長した場合も同じ伸び率なので、1~3月期の前期比は+1.2%の増加になる。

●米アップル社のスマートフォンの最新モデル「iPhoneX」について、同社が1~3月期の生産量を当初計画から半減させる見通しだと一部で報じられた。このため、2月分の製造工業予測指数を前月比で牽引している電子部品・デバイス工業の前月比+13.5%の見込みは下振れる可能性もある。但し、今の半導体の需要はスマートフォンに限らない。電子部品・デバイス工業の鉱工業生産指数に占めるシェアは8%であることなどから、2月のプラス予想を覆すほどではないだろう。

●鉱工業生産指数は18年1~3月期までで8四半期連続前期比プラスになる可能性があると考えられる。8四半期連続前期比プラスになれば、87年7~9月期から89年4~6月期までの8四半期連続以来28年9カ月ぶりの連続記録になる。

●経済産業省の基調判断は16年8月分では「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断に2カ月ぶりに上方修正された。15年5月分から1回を除き続いてきた「一進一退」の表現がなくなった。16年9月分、10月分でも「総じてみれば、生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」という判断は維持された。16年11月分では「緩やかな」がとれて「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。16年12月分~17年10月分でも「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」という同じ判断になっていた。前回17年11月分では「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正された。今回17年12月分でも生産は持ち直している」2カ月連続同じ判断になった。

(12月分景気動向指数予測)

●12月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.3程度と3カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、最終需要財在庫率指数、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数の4系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新設住宅着工床面積1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

●12月分の一致CIは前月差+2.8程度と3カ月連続の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列全てが前月差プラス寄与になると予測した。

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、15年5月分~16年9月分の1年5カ月間もの間、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏みを示している」という同じ基調判断が続いていたが、16年10月分で「改善を示している」に上方修正された。その後16年11月分~17年11月分まで同じ最高の基調判断だった。予測通りだと、12月分の一致CIの3カ月後方移動平均の前月差は+1.50程度のプラスになるとみられ、15カ月連続して「改善を示している」という同じ判断が続くことになろう。

●12月分の先行DIは55.6%程度とぎりぎりだが、景気判断の分岐点の50%を6カ月連続上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の5系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの4系列が前月差マイナス寄与になると予測する。

●12月分の一致DIは100.0%程度と景気判断の分岐点の50%を5カ月連続上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列は、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列全てがプラス符号になると予測する。