ホームマーケット経済指標解説2018年3月分全国消費者物価指数について

2018年3月分全国消費者物価指数について

2018年4月20日

―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.9%、15カ月連続上昇―
―生鮮食品を除く総合・前月比▲0.1%、16年7月分▲0.1%以来20カ月ぶり低下―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比9カ月連続上昇、前月比は12カ月ぶり低下―
―「基礎的支出項目」の前年同月比は+1.9%(参照:統計Today №128)―

●3月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として101.0となり、前年同月比は+1.1%と2月分の+1.5%から鈍化したものの18カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は▲0.4%と5カ月ぶりの低下になった。

●総合指数の前年同月比が鈍化した主因は生鮮食品だ。生鮮食品の前年同月比は+6.3%と、大雪や寒波の影響で2ケタの上昇率だった2月分の+12.4%から上昇率が約半分に鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.28%となった。2月分で80%台だったキャベツの前年同月比は3月分では+47.7%の上昇に鈍化した。 

●「生鮮食品を除く食料」の3月分の前年同月比は+1.1%で、2月分の前年同月比+1.2%から上昇率がやや鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。 

●3月分のエネルギー全体の前月比は+0.1%上昇した.しかし、前年同月の前月比を下回ったため、前年同月比は+5.7%と2月分の+7.0%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.09%と物価低下要因になった。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はマイナスか横這いだった。ガソリンの前年同月比は、前回2月分では+10.9%だったが、今回3月分では+7.5%に上昇率が鈍化し、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.06%になった。原油市況動向が遅れて反映される都市ガス代の前年同月比は+3.7%と、2月分の+4.5%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。電気代の前年同月比は+5.2%と2月分の+5.8%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.02%だった。一方、灯油の前年同月比は、2月分では+12.8%だったが、3月分では+13.3%に上昇した。前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。プロパンガスの前年同月比は、前回2月分では+1.4%だったが、今回3月分でも+1.4%だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は3月分では前年同月比▲2.5%と、1月分の前年同月比▲1.5%から下落率が拡大した.総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。一方、家庭用耐久財は前年同月比▲3.3%で、2月分の前年同月比▲3.8%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。 

●3月分の宿泊料は前年同月比+0.4%で、2月分の前年同月比+5.2%から伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.05%だった。2月分は前年同月比+8.8%の上昇だった外国パック旅行費は、3月分では同+5.9%へと伸び率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%だった。

●3月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+2.0%と2月分の同+2.7%の上昇率から鈍化となった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、▲0.33%と物価下落要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.6%と2月分の+1.8%から上昇率がやや鈍化し、2月分から3月分への寄与度差は▲0.06%だった。また、サービスの前年同月比は+0.2%と3月分の同+0.3%から上昇率が鈍化し、2月分から3月分への寄与度差は▲0.05%だった。なお、そのうち一般サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.06%であるが、外食の総合指数・前年同月比に対する寄与度差が+0.01%と僅かにプラスに寄与したものの、通信・教養娯楽関連サービスの総合指数・前年同月比に対する寄与度差が▲0.06%であったことが主因である。 

●通信料(携帯電話)の前年同月比は▲3.5%と2月分と同じ下落率だった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、0.00%だった。一方、携帯電話機の前年同月比は+26.0%と2月分の同+8.3%から大幅に上昇率が高まった。通信大手による前年の値下げの反動による一時的上昇率の高まりだろう。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、+0.09%と物価上昇要因になった。 

●また、実質賃金等の計算に使用する3月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+1.3%と2月分の+1.8%から鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.38%だった。なお3月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で2月分同▲0.2%と同じだった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。実質賃金(現金給与総額)は2月分では前年同月比▲0.8%と3カ月連続のマイナスだったが、3月分では物価面から0.5ポイント上昇要因が加わることになる。

●3月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数は100.6で、前年同月比は、2月分の+1.0%からやや鈍化したものの、+0.9%の上昇となった。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、15カ月連続の上昇になった。なお、2月分前年同月比の+1.0%は消費税率引き上げの影響(+2.0%)を除くと、14年9月の+1.0%(消費税率引き上げの影響含む+3.0%)以来の上昇率であった。 

●3月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は▲0.1%だった。前月比のマイナスは16年7月分の▲0.1%以来20カ月ぶりである。昨年5月分からみると、6月分・12月分の2回の横這いを除き8回上昇した。全国消費者物価指数は1月分までのデータが利用できた3月の「月例経済報告」で、消費者物価はそれまでの「横這いとなっている」から「このところ緩やかに上昇している」に変更された。4月の「月例経済報告」でも同じ表現だった。「月例経済報告」では季節調整値を中心に判断しているようだ。消費者物価の判断に関しては、15年5月に「横這い」から「緩やかに上昇」と変更して以来の上方への変更である。「緩やかに上昇」との表現は15年5月から16年5月まで続いた。それ以前には、14年2月から同年9月まで同様の表現が使われた。前月比がマイナスになったことが次回5月の「月例経済報告」の基調判断にどう影響するか要注目だ。

●3月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.8で、前年同月比は2月分と同じ+0.5%であった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、8~10月分で+0.2%、11~12月分で+0.3%、18年1月分+0.4%、2月分+0.5%に続き、9カ月連続の増加になった。前年同月比の+0.5%は、2016年7月の+0.5%以来の上昇率である。一方、前月比(季節調整値)は▲0.1%だった。こちらは17年3月分の▲0.1%以来12カ月ぶりのマイナスだ。 

●総務省統計研究研修所次長の佐藤朋彦氏が執筆した(統計TodayNo.128)「「実感」する消費者物価とは」の内容が興味深い。「4月の月例経済報告を見ると、「消費者物価は、このところ緩やかに上昇している」と記載されています。しかし、庶民の実感では「緩やか」ではなく「かなり」上昇していると言われることが多くなってきています。」と問題提起され、その違いを見るために、「①実際に市場での売買がなくウエイトは1万分の1499と大きい「持ち家の帰属家賃」を除いてみよう②電気代や食料などの必需性が高い品目を集めた基礎的支出項目の物価に注目しよう。」と提言されている。今回3月分の結果を含めたグラフをみると、「基礎的支出項目」と「選択的支出項目」の前年同月比の違いが明らかだ。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では17年1~3月期▲0.1%の後、17年4~6月期は+0.2%とプラスに転じ、7~9月期は+0.6%のプラス、10~12月期は+0.7%のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.26%、17年1~3月期+0.67%、4~6月期は+1.05%、7~9月期は+1.14%、10~12月期+1.50%と5四半期連続でプラスになっている。需給ギャップ(GDPギャップ)の改善基調は消費者物価指数の上昇要因になるものと思われる。

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年1月分で83.8%と16年9月の調査開始以来初の80%台になった。2月分では78.4%とやや減少したが3月分で81.0%と80%台に戻った。一方、3月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」が12月調査と全期間とも同じで下げ止まり感がでている。また、「販売価格の見通し」では12月調査に続き全期間とも上昇率がやや高まり底打ち感が感じられる内容になっている。 

●一進一退の局面はあろうが、息の長い景気拡張が継続する中、需給ギャップや予想物価上昇率は緩やかな上昇が期待される。 

●ESPフォーキャスト調査・3月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、18年1~3月期+0.91%(実績+0.9%)になった後、4~6月期+0.93%、7~9月期は+0.99%と上昇し、その後10~12月期は+0.93%、19年1~3月期は+0.92%、4~6月期+0.90%、7~9月期は+0.90%と0.9%台前半の上昇率を見込んでいる。19年10~12月期は消費増税を受けて1.83%に上昇(消費増税の影響除くと+0.91%)となっている。当面+0.9%台を中心とした伸び率が続きそうだ。