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2018年4月分機械受注

2018年6月11日

―4月分機械受注(除船電民需)前月比+10.1%と予想外の高い伸び率に―
―4~6月期前期比見通し+7.1%は、残り2カ月前月比▲0.8%ずつで達成―
―内閣府の基調判断は「機械受注は、持ち直している」に8カ月ぶり上方修正―

●4月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は+10.1%と2カ月ぶりの増加になった。2ケタの前月比は事前の予想を上回るポジティブ・サプライズである。機械受注(除船電民需)の前年同月比は+9.6%と2カ月ぶりの増加になった。

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、4月分・5月分・6月分・7月分と0件で、企業行動の慎重さが窺えるような状況であったが、8月分は「その他非製造業」の火水力原動機、9月分は「非鉄金属」の原子力原動機、10月分では「化学工業」の化学機械、11月分は「卸売業・小売業」の運搬機械と各々1件だった。その後12月分・1月分は0件だった。1月分まで17年度は0件か1件と少ないペースで推移してきた。 

●しかし、2月分では機械受注(除船電民需)の大型案件が3件に増えた。内訳は、「化学工業」の化学機械、「造船業」の内燃機関、「その他非製造業」の火水力原動機であった。前回3月分では機械受注(除船電民需)の大型案件が5件に増えた。内訳は、「化学工業」の化学機械1件、「運輸業・郵便業」の通信機1件、「その他非製造業」の航空機3件である。 

●今回4月分では機械受注(除船電民需)の大型案件が1件だった。内訳は、「造船業」の内燃機関1件である。2ケタの前月比は大型案件が多かったためではない。 

●機種別受注額をみると、工作機械の前年同月比は3月分+30.6%から4月分+19.4%と鈍化した。事前予測の根拠にしている業界統計と同様の動きである。しかし、シェアが工作機械の5~6倍とはるかに大きい産業機械受注の前年同月比が3月分+2.3%から4月分+16.8に大きく伸びるなどの動きがあった。 

●4月分の製造業の前月比は+22.7%と2カ月ぶりの増加。製造業17業種中、13業種で増加し、減少は4業種だった。製造業の機械受注の基調はしっかりした状況にあると言えよう。 

●4月分の実質機械受注・製造業の前月比が大幅増加になったことで、景気動向指数・確報値での先行CI前月差は、速報値の+1.1から上方修正される可能性が大きくなった。先行DIは、実質機械受注・製造業がプラス符号で新たに加わるので、他の系列の符号が速報値段階と変わらなければ、44.4%から50.0%に上方修正されるとみられる。 

●4月分の非製造業(除船電民需)の前月比は+0.4%と製造業に比べ低めの伸び率ながら4カ月連続の増加になった。4月分前年同月比は▲1.1%で13カ月連続の減少と弱めの状況が続いているものの、2月分の▲10.4%、3月分の▲4.9%に比べマイナス幅は小幅になっている。電力業の4月分は大型案件が1件あり前月比+94.4%の大幅増加となったため非製造業全体では前月比+11.1%で、こちらは2カ月ぶりの増加になった。非製造業12業種中、5業種が増加で7業種が減少となった。

●大型案件は、前回3月分では年度末ということもあり合計20件と多かった。内訳をみると、民需は前述した「除船電民需」の5件以外は電力業の2件(原子力原動機、その他重電機各1件)だった。官公需は全部で5件。内訳は、防衛省の航空機2件、船舶1件の計3件、国家公務のその他産業機械1件、船舶1件の計2件、外需は8件(火水力原動機1件、発電機1件、鉄道車両1件、航空機3件、電子計算機等2件)であった。今回4月分では合計4件になった。内訳をみると、民需は前述した「除船電民需」の1件以外は電力業の1件(発電機)だった。外需は2件(火水力原動機1件、航空機1件)であった。 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は4月分で前月比▲0.2%と3カ月ぶりに減少となった。3月分の前月比が+9.3%と高い伸び率であった反動の面が大きそうだ。前年同月比は+5.7%と3月分の+3.8%から伸び率が高まり、2カ月連続の増加になった。

 ●外需は4月分で前月比+10.0%と3カ月ぶりに増加となった。前年同月比は+9.7%としっかりした増加が続いていて、先行きの機械の輸出が堅調なことを示唆していそうだ。

●内閣府の基調判断は、17年8月分で「機械受注は 、持ち直しの動きがみられる」に4カ月ぶりに判断が上方修正された。「足踏み」という言葉が入らない表現は16年8月分以来、1年ぶりだった。9月分・10月分に続き、11月分でも基調判断は「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」で据え置きになった。12月分は、「機械受注は、持ち直しの動きがみられるものの、12月の実績は大きく減少した」で実質的に判断据え置きとなった。こうした表現は16年4月分の「機械受注は、持ち直しの動きがみられるものの、4月の実績は大きく減少した」以来であった。18年1月分~3月分では基調判断は「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」で据え置きになった。今回4月分では基調判断は「機械受注は、持ち直している」に8カ月ぶりに判断が上方修正された。 

●機械受注(除船電民需)4~6月期の前期比見通しは+7.1%。4~6月期の前期比実績は見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの9年間で上振れ4回、下振れ5回とほぼ同じになっている。18年(平成30年)の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率102.2をかけたものである。4~6月期の前期比実績は見通しよりも多少下振れる可能性もあるが、それでも前期比で増加する可能性が大きそうだ。 

●5・6月分の前月比が横這いとすると、機械受注(除船電民需)4~6月期の前期比は+8.0%と、見通しの+7.1%を上回る。5・6月分の前月比が▲0.8%ずつとすると、機械受注(除船電民需)4~6月期の前期比は+7.1%と、見通し通りになる。5・6月分の前月比が▲5.0%ずつとすると、4~6月期の前期比は+2.7%。5月分が前月比▲10.0%、6月分が横這いとすると前期比は+0.8%と、かなり弱めに試算しても、4~6月期の前期比は増加する可能性が大きそうだ。 

●日銀短観3月調査で、製造業の18年度の設備投資計画は大企業で+4.9%、中堅企業で+15.6%、中小企業で▲0.1%と、この時期としてはかなりしっかりした数字となっていたが、最近の機械受注の動きは日銀短観と整合的だ。