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2018年6月分全国消費者物価指数について

2018年7月20日

 ―全国消費者物価・生鮮食品を除く総合・前年同月比+0.8%に上昇、18カ月連続上昇―
―生鮮食品を除く総合・前月比4カ月ぶりプラス、携帯電話機在庫処分セールの一時的下落通過―
―生鮮食品及びエネルギーを除く総合・前年同月比12カ月連続上昇だが、+0.2%に鈍化―

●6月分の全国消費者物価指数・総合指数は2015年を100として100.9となり、前年同月比は+0.7%と5月分と同じ伸び率になり、21カ月連続の上昇となった。一方、前月比(季節調整値)は+0.1%と2カ月連続上昇となった。

●6月分のエネルギー全体の前月比は+1.6%上昇した。前年同月の前月比を上回り、前年同月比は+7.3%と5月分の+5.6%から上昇率が高まった。総合指数の前年同月比に対するエネルギーの寄与度差は+0.13%と総合指数と生鮮食品を除く総合指数の前年同月比上昇要因になった。後述するように、特にガソリンの寄与が大きかった。 

●エネルギー分野の各項目の、総合指数の前年同月比に対する寄与度差はまちまちだった。原油市況や為替動向が遅れて反映される電気代の前年同月比は+3.1%と5月分の+3.3%から上昇率が鈍化した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.01%とマイナスになった。都市ガス代の前年同月比は+3.2%と、5月分の+3.1%から上昇率がやや高まったが、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。石油製品をみると、前回5月分で+1.3%だったプロパンガスの前年同月比は今回6月分では+1.5%に上昇したものの、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。一方、寄与度差がプラスに働いたのは、灯油とガソリンだ。灯油の前年同月比は、5月分では+14.3%だったが、6月分では+20.5%に上昇した。前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。ガソリンの前年同月比は、5月分では+10.5%だったが、今回6月分では+16.1%の上昇率になり、総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.11%になった。エネルギー全体の寄与度差は+0.13%の大部分を占めることがわかる。 

●テレビやパソコン、エアコンといった教養娯楽用耐久財は6月分では前年同月比▲2.9%と、5月分の前年同月比▲3.8%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。また、家庭用耐久財は前年同月比▲2.9%で、こちらも5月分の前年同月比▲3.5%から下落率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%だった。 

●6月分の宿泊料は前年同月比+2.1%で、5月分の前年同月比▲1.8%の下落から上昇に転じた。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.04%だった。また、5月分は前年同月比+5.6%の上昇だった外国パック旅行費は、6月分では同+11.7%へと伸び率が上昇した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.02%だった。 

●6月分で前年同月比の下落に寄与したのは、まず、生鮮食品を除く食料だった。6月分では前年同月比+0.7%と、5月分の前年同月比+1.1%から上昇率が縮小した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.08%だった。主にスーパーの食料品などの価格動向を示す日経CPINowの前年同月比が6月分でもたついた動きだったことと整合的だろう。また、通信料(携帯電話)は6月分では前年同月比▲6.7%と、5月分の前年同月比▲3.5%から下落率が拡大した。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は▲0.07%だった。

●6月分の全国消費者物価指数・総合指数・財の前年同月比は+1.1%と5月分の同+1.1%とほぼ同じ上昇率で総合指数の前年同月比に対する寄与度差は、+0.03%と僅かな物価上昇要因になった。生鮮食品を除く財でみると前年同月比+1.4%と5月分の+1.2%から上昇率が高まり、5月分から6月分への寄与度差は+0.05%だった。また、サービスの前年同月比は+0.3%と5月分の同+0.2%から上昇率がやや上昇したが、5月分から6月分への寄与度差は0.00%だった。なお、そのうち一般サービスの総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.01%である。外食の総合指数・前年同月比は5月分・6月分とも+1.0%で寄与度差は0.00%。また通信・教養娯楽関連サービスの総合指数・前年同月比は5月分・6月分とも▲0.7%で寄与度差が0.00%だった。 

●また、実質賃金等の計算に使用する6月分の全国消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合指数・前年同月比は+0.8%と5月分とほぼ同じになった。総合指数の前年同月比に対する寄与度差は+0.03%だった。なお6月分の持家の帰属家賃は前年同月比▲0.2%で5月分同▲0.2%と同じだった。詳細にみると持家の帰属家賃(木造)前年同月比が6月分▲0.2%で5月分と同じで、持家の帰属家賃(非木造)前年同月比が6月分0.0%で5月分同▲0.1%の下落から横ばいになった。持家の帰属家賃の総合指数の前年同月比に対する寄与度差は0.00%だった。 

●6月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数は2015年を100とした指数で101.0、前年同月比は、5月分の+0.7%から上昇し+0.8%となった。前年同月比は17年1月分で13カ月ぶりの上昇に転じたあと、18カ月連続の上昇になった。 

●6月分の全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は+0.1%だった。前月比は4カ月ぶりにプラスになった。3月の「月例経済報告」で、消費者物価はそれまでの「横這いとなっている」から「このところ緩やかに上昇している」に変更された。消費者物価の判断に関しては、15年5月に「横這い」から「緩やかに上昇」と変更して以来の上方への変更であった。「月例経済報告」では季節調整値を中心に判断しているようだ。4月~6月の「月例経済報告」でも同じ表現だった。全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合指数・前月比(季節調整値)は3月分・4月分で前月比が16年1月分・2月分以来の、2カ月連続マイナスになっても「月例経済報告」の消費者物価の基調判断は変わらなかった。携帯電話機在庫処分セールの一時的下落と判断していたためだ。前回5月分の前月比が0.0%と横ばいになった情報から判断した昨日発表の7月の「月例経済報告」での消費者物価の判断も「このところ緩やかに上昇している」で変わらなかった。8月の「月例経済報告」でも変わらないと思われる。 

●6月分の生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.9で、前年同月比は5月分の+0.3%から鈍化し、+0.2%になった。前年同月比は17年7月分で+0.1%と5カ月ぶりの上昇に転じ、8~10月分で+0.2%、11~12月分で+0.3%、18年1月分+0.4%、2~3月分+0.5%、4月分+0.4%、5月分+0.3%に続き、12カ月連続の上昇になった。前月比(季節調整値)は▲0.1%と2カ月ぶりにマイナスになった。通信料(携帯電話)の下落などが影響していよう。

●物価上昇率を決める主因の需給ギャップ(GDPギャップ)は内閣府の試算では16年10~12月期▲0.3%の後、17年1~3月期は+0.1%とプラスに転じ、4~6月期は+0.4%、7~9月期は+0.7%、10~12月期は+0.7%、18年1~3月期+0.3%と5四半期連続のプラスになった。一方、日銀の需給ギャップは16年10~12月期+0.41%、17年1~3月期+0.80%、4~6月期は+1.17%、7~9月期は+1.28%、10~12月期+1.57%、18年1~3月期+1.71%まで6四半期連続でプラスになっている。需給ギャップ(GDPギャップ)の改善基調はやがて物価上昇要因になると思われる。 

●内閣府「消費者マインドアンケート調査」で1年後の物価が上がるとみている人の割合(上昇+やや上昇)は18年1月分で83.8%と16年9月の調査開始以来初の80%台になった。2月分では78.4%とやや減少したが3月分で81.0%、4月分で81.1%と80%台に戻ったが5月分で78.4%と再び鈍化していた。しかし、直近6月分では一気に改善し86.2と調査開始以来最高水準になった。また、6月調査の日銀短観の「企業の物価見通し」は全規模・全産業でみると「物価全般見通し」で1年後が3月調査から0.1ポイント上昇し0.9%になった。3年後と5年後は3月調査と同じ前年比上昇率で下げ止まり感が出ている。また、「販売価格の見通し」では5年後が+1.5%と3期連続で0.1ポイントずつ上昇率が高まった。また1年後と3年後は3月調査と同じ伸び率でこちらも下げ止まり感が出ている。 

●ESPフォーキャスト調査・7月調査によると、全国消費者物価指数・生鮮食品を除く総合の前年同期比の総平均予測値は、18年7~9月期+0.93%、10~12月期は+0.94%、19年1~3月期は+0.95%、4~6月期+0.93%、7~9月期は+0.89%と+0.8から+1.0%程度で推移し、19年10~12月期は消費増税を受けて1.81%に上昇(消費増税の影響除くと+0.91%)となっている。当面+0.9%台を中心とした伸び率が続くという予測だ。