ホームマーケット身近なデータで見た経済動向2月のトピック「年明け市場は波乱の展開も、足元の日本の景気は堅調。過去最高の大相撲初場所の懸賞本数など身近な指標も景気底堅さ示唆」

2月のトピック「年明け市場は波乱の展開も、足元の日本の景気は堅調。過去最高の大相撲初場所の懸賞本数など身近な指標も景気底堅さ示唆」

2014年2月4日

 午年は辰巳天井の後の株安、辰巳の円安基調の後の円高というジンクスがあるが、2014 年午年も年初に関してはそうした動きになってしまった。2013 年12 月末の日経平均株価は16291 円31 銭、ドル円レートは105.365円、10 年国債利回りが0.735%だった。2013 年12 月末と1 月末を比較すると、日経平均株価が14914 円53銭で1376 円78 銭の株安、ドル円レートは102.49 円と3 円弱の円高、10 年国債利回りが0.620%で0.1%程度の長期金利低下となった。2 月3 日の終値は日経平均株価が14619 円13 銭、ドル円レートが102.125 円、10 年国債利回りが0.615%でさらに株安、円高、長期金利低下が進んだ。新興国経済に対する警戒感から投資家がリスク資産の圧縮に動いたことが背景にある。

 FRB は12 月のFOMC で月額850 億ドルの証券購入を100 億ドル減らすテーパリング開始を決め、1 月のFOMC でも市場の予想通りに、さらに100 億ドル減らし650 億ドルとすることを決めた。米国の経済活動がしっかりしていることを背景とした決定である。しかし、市場では、テーパリングにより新興国からの資金流出が生じるという懸念が出ている。

 また、中国のシャドーバンキングの問題も実体がわからないため、懸念は消えない。但し中国の国内の問題でありリーマン・ショックとは様相が違うだろう。中国政府がそれなりの対応をすることを期待するしかない。

 但し1 月に発表されたIMF の世界経済見通しでは前回10 月に続いて中国の14 年の実質成長率は0.3 ポイント上方修正し、7.5%とした。また、ユーロ圏は0.1 ポイント上方修正の1.0%、米国は0.2 ポイント上方修正の2.8%、世界全体の見通しは0.1 ポイント上方修正の3.7%成長となった。昨年秋より見通しは幾分明るくなっている。OECD 先行指数で米国・欧州などは改善傾向、シャドーバンキングの悪影響など不安がある中国も足もとは持ち直しの動きがみられる。

 一方、日銀は1 月の金融政策決定会合で昨年10 月の「展望レポート」の中間評価を行った。成長率、消費者物価ともに概ね見通しに沿って推移すると見込まれると判断した。また、リスク要因として「新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなど」を挙げた。欧州債務問題が落ち着いていることを踏まえて、前回まで一番初めに指摘していた欧州問題と新興国の経済動向の順番が入れ替わった。新興国の動向は依然として不透明度が高いという判断だったのだろうが、皮肉にもこの直後にアルゼンチンの通貨不安が生じた。

 市場動向が波乱含みであるものの、国内の景気は足もとしっかりしている。日銀短観の直近12 月調査の業況判断DI は長年マイナスが続いていた中小企業・非製造業までが「良い」超を意味するプラスになった。前回の消費税率引き上げの97 年もマイナスだったこのDI は92 年2 月調査以来実に21 年10 ヵ月ぶりのプラスになった。

 ESP フォーキャスト調査(1 月調査)の総合景気判断DI では、14 年4 月の消費税率8%への引上げ前の駆け込み需要が見込まれる1~3 月期は97.5 である。これはほとんど全員が景気は上向きとみていることを意味する。消費税率引き上げが実施される14 年4~6 月期は7.5 と一時的に景気判断の分岐点の50 を大きく割り込む。1~3 月期の実質GDP 成長率は予測値総平均でみて前期比年率+4.50%と高い予測だが、4~6 月期は▲4.48%と急落する。しかし、その後は概ね1%台後半で緩やかに成長する見通しだ。総合景気判断DI は14年7~9 月期に80.0、10~12 月期は95.0 と回復を示唆している。落ち込みは4~6 月期だけの一時的なものとみられる。また、景気後退になる確率は26.2%にとどまるというのが、エコノミストのコンセンサスだ。

 景気に敏感な立場にある2050 人を対象として回答率9 割を誇る「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIの季節調整値は、13 年ではすべての月で景気の分岐点の50 を上回り、景気が堅調であることを示唆している。直近11 月と12 月の季節調整値は56.9 でこちらは05 年12 月の57.5 に次ぐ統計史上第2 位の高水準になっている。

 なお、12 月の先行き判断DI・原数値は、54.7 と水準は高いものの11 月から0.1 ポイント低下した。消費税率引上げ前の駆込み需要への期待感等を背景に、企業動向部門、雇用部門では上昇したものの、一部で需要の他業態へのシフトが懸念されること等もあって、家計動向部門では低下した。今年1 月調査で、先行きの範囲が4 月以降を対象に含むようになると、一時的な数字の悪化は避けられないだろう。

 足もとの景気堅調な中にも、人々には、4 月の消費税率引き上げの景気へのマイナスの影響に対する不安感はありそうだ。今年は正月3 が日の初詣の人出が前年より増えたようだ。警察庁の初詣の人出の最後の発表は09 年だったが、その時の上位は、1 位明治神宮、2 位成田山新勝寺、3 位川崎大師、4 位伏見稲荷大社だった。その後毎年筆者はこの4 つの神社・仏閣に初詣の人出を電話でヒアリングしているが、今年から伏見稲荷大社だけは人出数を数えるのを中止したという。それ以外の主要3 ヵ所は人出が増加した。明治神宮は316 万人で前年の313 万人から3 万人増加、成田山新勝寺は305 万人で前年の300 万人から5 万人増加、川崎大師は300万人で前年の298 万人から2 万人増加した。前回消費税が引き上げられた97 年は正月3 が日の初詣の人出は逆に減少していた。96 年はバブル崩壊後で最も景気の良かった年だったので、人々も無防備だったのかもしれない。初詣に行かず遊びに出かけたのだろう。今回は、人々の神頼み的な動きの増加に先行きに対する不透明感が感じられるが、その分、影響を既に慎重に見ているとも言え、結果として「思ったより状況は良かった」となりやすいのではないだろうか。

 雇用は底堅い。限界的な雇用の数字である自殺者数は15 年ぶりに3 万人を下回った12 年に続き、13 年も2年連続3 万人割れとなった。警察庁がまとめた13 年の自殺者数(速報値)は2 万7195 人、前年に比べて▲2.4%と減少になった。自殺者は金融危機時の98 年に初めて3 万人を超え、日経平均株価が7607 円の安値をつけりそな銀行に公的資金が注入された03 年に過去最悪の3 万4427 人を記録した。10 年からは4 年連続減少となった。また東京23 区内のホームレスも統計がある95 年以降で直近13 年8 月調査が最低水準になっていることも限界的な雇用面の明るい指標だ。雇用関連の経済指標をみると、有効求人倍率は13 年12 月分で1.03 倍まで上昇し、完全失業率は13 年12 月分で3.65%まで低下してきた。

 目先は、賃金・設備投資動向が消費増税のマイナスをどれだけ相殺するかが、注目される。今のところどちらも明るい材料が多い。所定内給与の前年比は足もとマイナス基調にあるが、地方公務員の給与引き下げの影響が▲0.3%分赤字に寄与しているという。ESP フォーキャスト調査1 月特別調査によると、14 年度の所定内給与は、前年度比+0.3%の上昇とみるのが平均予測である。

 設備投資先行指標の受注統計でも改善の動きがみられる。11 月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース)の前月比は+9.3%と2 ヵ月連続の増加となった。事前の市場予測の平均が1%台だったので、予想以上に強かったと言える。内閣府の基調判断は10 月分で「機械受注は、緩やかな増加傾向がみられる」に、それまでの「機械受注は、持ち直している」から上方修正し、さらに11 月分で「機械受注は、増加傾向にある」に2 ヵ月連続で上方修正した。需給ギャップが縮小する中で、予想物価上昇率は上向いてきている。その分、実質金利は低下し、設備投資の環境は改善している。

 日曜夕方に放送される「笑点」の視聴率が「その他娯楽番組」で首位になることは1 月では全ての週でなかった。日曜の夕方に外出する人が多かったことを示唆し、買い物やレジャーなどの消費行動をした可能性が大きい。これは1 月3 日の「箱根駅伝」の視聴率の動きとも符合する。箱根駅伝の復路のテレビ視聴率も景気拡張局面を示唆するものとして挙げられよう。今年は27.0%で04 年の26.6%以来10 年ぶりの低水準になった。過去20 年間の平均よりも1.1%低い。裏を返すと、1 月3 日に外出している人が増えたとみられる。百貨店の初売りが好調だったことと符合する。マーケットニュース社は「百貨店サーベイ」を毎月実施している。1 月13 日までの主要百貨店売上高・前年比は数字がわかっている高島屋が+3.4%で12 月の+1.7%から上昇、小田急は約+4%で12 月と同じ伸び率である。他社は数字が出ていないがプラスの伸び率である。

 大相撲初場所の懸賞本数は前年同場所比で+18.8%増加し、1198 本になった。1 本あたりの懸賞金額が6 万円になった91 年夏場所以降では最多だった07 年初場所1146 本を52 本更新した。企業の広告費の動きがしっかりしていることを示唆していよう。

 2 月7 日からソチ冬季オリンピックが始まる。2020 年の東京オリンピックが決定して最初のオリンピックということもあり、従来の冬季オリンピックより日本中の関心が高いようだ。日本選手団の橋本聖子団長は選手村入村式後の記者会見で、メダル獲得数について「長野オリンピック超えをしたい」と決意を述べた。選手の士気も高まっているようだ。実は冬季オリンピックで日本代表選手が頑張ってメダルをたくさん取ったほうが、日本の株価に好影響を与える傾向があるようだ。なお02 年ソルトレークシティ大会の時のように01 年の同時多発テロから予想外に日経平均株価が持ち直した例外はもちろんある。98 年の長野大会の時は、日本経済は金融危機で真っ暗闇だった。ところがオリンピック開催の2 月は日経平均株価の前月末比はプラスだった。実際日本は10 個のメダルを獲得した。逆に06 年のトリノ大会では景気は「いざなみ景気」の真っ只中だったが、日経平均株価の前月末比はマイナスだった。当初メダルが5 個ぐらい取れるだろうと言われていたが結果として荒川静香さんの金メダル1 個にとどまった。株価は2 月20 日に2 月の最安値をつけたがこれは期待されたメダルが取れなかった影響が大きそうだ。女子フィギュアスケートが始まると株価は上昇傾向になったが月初の水準には戻れなかった。10 年バンクーバー大会では2 月は前月末に比べ70 円程度の下落となった。逆転金メダルが期待されて浅田真央さんが女子フィギアスケートのフリーで競技した2 月26 日の日経平均は、浅田選手の競技中のミスがあり、金メダルの可能性が難しくなったあたりで当日の高値10171 円をつけた後下落、終値は10126 円と約50 円低かった。逆転金メダルなら2 月は前月末比プラスだった可能性が大きいだろう。

 ソチオリンピックでの選手の活躍が日本中に元気を与えてくれることを期待したい。