ホームマーケット身近なデータで見た経済動向12月のトピック「九州場所懸賞地方最高更新、「下町ロケット」「あさが来た」の視聴率が景気底堅さを示唆」

12月のトピック「九州場所懸賞地⽅最⾼更新、「下町ロケット」「あさが来た」の視聴率が景気底堅さを⽰唆」

2015年12月1日

今年の漢字、景気下支えとしては「節」が望ましいと思われるが、11 月のパリのテロ事件の影響などで「爆」か?

 今年は12 月12 日が土曜日のため12 月15 日に発表される「今年の漢字」は、幅広い層が投票することからみて中国人の爆買いや、パリなどのテロ事件の爆弾・爆発などから「爆」の可能性が足元では大きくなったようだ。良い意味も悪い意味もある漢字だ。マンションくい打ち問題で07 年と同じ「偽」などが選ばれると、景況感にはマイナスに働こう。筆者としては、今年は戦後70 年、高校野球100 年などの節目の年であり、日本の経済指標では97~98 年の「金融危機」以来、あるいは「バブル崩壊直後」の景気の山の翌年に当たる92 年以来のデータが多かった年なので、景気の底上げを意識できる「節」が好ましいと考える。「金融危機以来」の節目のデータを1 つ挙げれば、1~10 月分の自殺者の前年比は▲6.1%で、2015 年の自殺者数は秋に金融危機が発生した97 年以来18 年ぶりの2 万人台前半になりそうだ。2 万人台前半は昭和から97 年(平成9 年)にかけての安定的な水準の数字である。

10 月景気ウォッチャー調査現状判断DI 季節調整値は51.7、2014 年3 月以来の高水準に回復

 新聞などで通常報じられる数字では、景気ウォッチャー調査の現状判断(原数値)は、前月比+0.7 ポイント上昇の48.2 になった。景気判断の分岐点となる50 を下回っているので、それほどの改善とは受け止められなかったようだが、10 月は季節的に弱めに出やすい月である。内閣府は公式に季節調整値を発表しているが、この数字は51.7 と50 を上回っている。消費税率引き上げ前の駆け込み需要効果があった14 年3 月の53.4 以来の高水準である。

 10 月の数字が原数値でも季節調整値でも9 月から改善したのは、プレミアム付き商品券などのプラス効果がある他、8 月に発生した中国経済に対する深刻な懸念やそれを受けた世界同時株安などの影響が薄れたことが大きい。

 中国関連の現状判断DI を作ってみると9 月は42.6 だったが、10 月は47.7 へと+5.1 ポイント上昇した。株価関連の現状判断DI も8 月32.7、9 月40.8、10 月47.9 とだいぶ落ち着いてきていることが確認できる。

ESP フォーキャスト調査特別調査は11 月でも、16 年中国製造業PMI 年改善見込み

 オールジャパンのエコノミストに対するコンセンサス調査である「ESP フォーキャスト調査」で、10 月調査から始まった中国製造業PMI(国家統計局)予測に関する特別調査の結果は、11 月でも概ね同様であった。中国製造業PMI 15 年10 月の実績は49.8 だった。このため、15 年10~12 月期(Ⅳ期)の見通しは32 人の回答者中、保合い(PMI を50 と予測)が17 人と一番多く、下降(50 未満)が11 人と上昇(50 超)の4 人を上回っている。16 年1~3 月期になると保合いが15 人と一番多いのは変わらないが、上昇が10 人と下降の7 人をやや上回るようになる。4~6 月期では上昇が15 人と一番多くなり、次いで保合い13 人、下降は4 人となる。7~9 月期、10~12 月期と上昇の人数が増加することから、エコノミストは中国景気の厳しさが徐々に緩和されていくとみているようだ。

10 月完全失業率3.1%と20 年ぶり低水準など景気底上げを示唆。一方、家計調査は弱い内容に

 足もと発表される経済指標は明暗入り混じる形になっていて景気判断を難しくしている。

 10 月の完全失業率は3.1%(3.12%)と3.1%は95 年7 月(3.13%)以来、小数点第2 位までだと95 年6 月(3.09%)以来と、これまで18 年ぶりの低水準だった5 月の3.31%を大きく下回る20 年ぶりの低水準を記録した。特に最近まで職探しのために5 月3.0%から6~9 月は3.1~3.2%とやや上昇していた女子の失業率が93 年以来22 年ぶりの2.7%まで大きく低下したことが注目される。

 一方、10 月の家計調査は弱かった。7~9 月期の毎月勤労統計の実質賃金は前年同月比プラスだが、9~10 月と勤労者世帯の実質可処分所得の前年同月比は2 ヵ月連続の減少となった。実質消費支出二人以上世帯(除く住居等)前月比は9 月に▲1.8%と大きく減少したあと、10 月も▲0.4%と連続して減少となってしまった。

「下町ロケット」など支持する世の中の風潮が、中小企業の設備投資をあと押し、代理店受注に明るい動き

 景気と関連の深い身近な社会現象は景気の底堅さを示唆するものが多い状況が続いている。

 11 月の大相撲九州場所の懸賞本数は1579 本と7 月の名古屋場所の1509 本を上回り地方場所最高を更新した。千秋楽結びの一番鶴竜対白鵬の取り組みには51 本の懸賞がかかった。企業の広告費、その背景の収益の良さを表している。

 10~12 月期の連続ドラマで視聴率が初めて20%を超えたのは11 月15 日放送の「下町ロケット」だ。素晴らしい技術を持った中小企業の部品を使った純国産ロケットの打ち上げが成功した回だ。様々な困難を乗り越えた中小企業にエールを送りながらテレビを見た視聴者が多かったことだろう。

 NHK の朝の連続テレビ小説では、初の幕末スタートとなった明治期の女性経営者を主人公とする「あさが来た」の視聴率が第3 週以降第8 週まで毎週最高視聴率を更新した。第1 週、第2 週の21%台から第3 週の10 月16 日に23.1%に一気に視聴率がアップしたが、これは土方歳三役が大河ドラマ「新選組」と同じ山本耕史が演じて話題になったことも大きいだろう。11 月20 日には25.0%を記録した。これは3 月20 日の「マッサン」の最高視聴率と並ぶ数字になった。

 「下町ロケット」「あさが来た」のヒットは中小企業の経営者が困難を乗り越え頑張る姿を応援する、世の中の風潮を示唆していよう。

 7~9 月期に前期比で大きく減少したことで機械受注(除く船舶・電力の民需)の悪さが大きく伝えられているが、別枠の統計で中小企業の設備投資に関連があると言われる代理店受注は4~6 月期前期比増加に続き、当初▲2.1%のマイナス見込みだった7~9 月期の前期比が実績では+7.6%の増加に上方修正となり、10~12 月期も3 期連続増加が見込まれ、しっかりした動きになっている。7~9 月期の法人企業統計では資本金1000 万円~1 億円未満の中小企業の設備投資が前年同期比+21.8%と大きく伸びた。

最大級エルニーニョ現象は懸念材料

 現在発生しているエルニーニョ現象は20 世紀最大級だった97~98 年並みに強くなっている。通常+0.5℃が目安のエルニーニョ監視指数は11 月中旬は+2.9℃と98 年1 月の+3.2℃以来の数字となっている。暖冬や太平洋側での大雪などのリスクが懸念される。一方で、米国の大統領選挙や夏季五輪といった世界景気にプラスに働く傾向がある大きなイベントが2016 年にあるという明るい材料もある。