ホームマーケット身近なデータで見た経済動向12月のトピック「平年0.2個なのに今年上陸した10月の台風の悪影響など跳ね返し、戦後第2位の景気拡張局面継続」

12月のトピック「平年0.2個なのに今年上陸した10月の台風の悪影響など跳ね返し、戦後第2位の景気拡張局面継続」

2017年12月4日

(「ESPフォーキャスト調査」11月特別調査の中国製造業PMI見通しで悲観的見方は減少)

「ESPフォーキャスト調査」17年10月特別調査(41名が回答)によると、「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える可能性がある要因」(3つまで)で2ケタ回答になったものは、「中国景気悪化」28人、「円高」24人、「国際関係の緊張や軍事衝突」20人、「米国景気悪化」14人など海外発の要因が多く、国内要因は最大でも7人以下の1ケタ回答にとどまった。また、共産党大会の後の調査である11月の中国製造業PMIに関する特別調査では、18年央の50未満の予測が8月調査比で大きく減少した(図表1)。日本のエコノミストの最大の懸念材料である中国景気に関して、失速見込みは減少した。中国景気は緩やかな減速にとどまり底堅いという見方が大勢になったようだ。

(MLBワールドシリーズは4~6月期~10~12月期まで3四半期連続の米国実質GDP3%成長見込みと整合的)

米国景気も、足もとは予想以上にしっかりした実質GDP成長率が続いている。前期比年率ベースで4~6月期+3.1%、7~9月期+3.3%で、アトランタ連銀やニューヨーク連銀のGDPナウによると、10~12月期も3%台の見込みである(図表2)。

MLBのワールドシリーズと米国の実質GDP成長率との相関は今年も満たされたようだ。第1次石油危機が発生した73年以降昨年16年までの44年間の実質GDP成長率の平均は+2.75%である。人気球団がワールドシリーズに出場する時の実質GDP成長率は高めになる傾向がある。ナ・リーグ優勝は29年ぶりのドジャースだった。73年以降は過去5回ワールドシリーズに進出している。今年が6回目だった。過去5回のワールドシリーズ出場年の実質GDP成長率の平均は+3.30%。ワールドチャンピオンになった2回の平均は+3.40%である。ア・リーグ優勝はナ・リーグ所属の05年以来2度目のアストロズで、ドジャースを4勝3敗で下し、初のワールドチャンピオンに輝いた。なお、かつて1回だけワールドシリーズに出場した年の実質GDP成長率は+3.40%で平均を上回っていた。今年のワールドシリーズからみると、足もとの米国の実質GDP成長率が3四半期連続3%台になりそうなことと整合的だ。

(「景気ウォッチャー調査」10月調査でコメント分析からは北朝鮮に関する不安は減少していたが・・)

景気ウォッチャー調査のDIは「良くなっている」から「悪くなっている」までの5段階の回答を1~0まで0.25刻みで点数化し、回答数で加重平均する単純なものである。注目される事象に関するコメントだけから、その関連DIを誰でも簡単に作ることが出来る。「変わらない」が0.5になるので、指数は50が景気判断の分岐点になる。全体のDIと、注目される事象に関するコメントから算出したDIを比べたりすることで、様々な変動要因を数値として「見える化」ができる。

「景気ウォッチャー調査」10月調査でコメント数が特に多かったのは「台風」と「選挙」である。ちなみに9月調査では核実験などを受け増加した「北朝鮮」のコメント数は10月調査では減少し、先行き判断DIは60.4と、なんと50を上回った(図表3)。「北朝鮮問題はあっても・・・」というコメントが増え不安感が低下したことがわかる。11月29日に北朝鮮はアメリカ全土を射程に収める新型のICBMの「火星15」を発射した。「景気ウォッチャー調査」11月調査の回答期間の最後の2日間で北朝鮮に関する材料が景気ウォッチャーの景気判断にどんな影響を及ぼしたか12月8日の発表が待たれる。

(「景気ウォッチャー調査」10月調査でみる「台風」の悪影響とその影響の継続期間)

「景気ウォッチャー調査」10月調査の現状判断で「台風」についてのコメント数は、台風の被害の影響が大きくなった9月、10月と増加した。10月では161件と有効回答数の9%になった(図表4)。「やや悪くなる」54人+「悪くなる」13人は、「やや良くなる」25人+「良くなる」2人を上回り、台風関連DIは42.1と50を下回った。寄与度計算から0.7ポイント全体のDIを押し下げたことがわかる。一方、先行き判断では台風関連DIは50.7になり、「台風」の影響が一過性になりそうなことがわかる。台風が10月に上陸する年はあまりない。平年の上陸数は0.2個にとどまるが、今年は1個上陸、1回接近するという異例の事態だった。

はとバスのスカイツリー入場コースは8月末までは外国人観光客の増加もあって好調だったが、9月、10月と鈍化した。台風の影響である。JRA(中央競馬会)の秋GIレースも秋華賞から天皇賞にかけての3レースが雨になり、入場人員はいずれも前年比2ケタの減少になってしまった。但し、そうした中でも売得金はプラスを推移したレースもあり、底堅さも感じさせる。11月のGIでは天候の影響がない通常の状態に戻った感が強い。今年8月までは「笑点」がその他娯楽番組でその週の視聴率第1位をとったことは2度しかなく消費堅調を示唆した。台風の影響を多く受けた週を中心に、「笑点」が9月半ばから11月初めにかけ7週中6週で視聴率第1位となり懸念材料になっていたが、11月12日の週で第4位となった。以降11月中は第1位になることなく消費動向が落ち着いたとみられる。

(消費税引上げによる景気腰折れを何とか回避できたことを示唆していた「嵐」シングルCD「GUTS!」初動50.1万枚)

今年10~11月シングルCD初動売上50万枚超は2曲ずつで景気拡張局面継続を示唆した。「嵐」は、10月のアルバム「untitled」、11月のシングル「Doors ~勇気の軌跡~」がともに初動売上50万枚超と好調である(図表5)。09年以降17年まで連続して初動50万枚の記録をつくった「嵐」のシングルCD初動売上は、消費の底堅さを示唆している。

シングルCD初動売上50万枚超が景気局面を判断する時の、概ねのものさしだ。かつては、新しい音楽を入手する手段はシングルCDを購入することだった。当時ミリオンセラーはザラだったが、最近は一部のアーティストを除きそこまでは売れない。発売初週での初動売上で50万枚超は大ヒットだ。ネット配信の普及でダウンロードできるし、少し待てばアルバムに入ることが多いからである。パッケージCDは景気が厳しい時は買わないで済ます場合も多く、買おうとするファンは発売された最初の週に買うことが多いので、初動売上に意味がある。現在、最も長く初動売上50万枚超を09年から毎年続けているアーティストが「嵐」だ。

過去を振り返ると、景気の谷の09年3月、経済指標の多くがリーマン・ショックで悪化する中、「嵐」の「Believe/曇りのち、快晴」が50.1万枚と06年のKAT―TUN「Real Face」以来、3年ぶりの初動50万枚超になった。前年08年の景気は2月を山とした後退局面だった。「嵐」の曲が初めてオリコンシングルランキング年間第1位になったのは同年8月発売の「truth/風の向こうへ」。第2位も「嵐」で6月発売「One Love」だった。初の五大ドームツアーを行い「嵐」が国民的人気グループになった08年で、「嵐」のシングルCD初動売上は50万枚を超えなかった。

12年は3月が景気の山で11月が谷。3月発売の「ワイルド アット ハート」は初動55.0万枚だったが、後退局面の6月発売の「Your Eyes」は初動47.7万枚にとどまった。13年3月発売の「Calling/Breathless」は75.6万枚だった。

14年4月30日発売の「GUTS!」は初動50.1万枚。8%への消費税率引上げ月の発売である。「嵐」ファンの財布のしまり度合いを見る指標になった。内閣府が今年6月に開いた「景気動向指数研究会」でアベノミクス景気は12年12月から拡張局面継続とした判断を「嵐」のCD売上が先読みしたと言える。

(鉱工業生産指数・10月分にも悪影響の「台風」。但し、10月景気動向指数の判断は、悪材料跳ね返し「改善」継続)

鉱工業生産指数・10月分速報値前月比は+0.5%と2カ月ぶりの増加になったが、10月10日提出の10月分製造工業予測指数の前月比が+4.7%と大幅な伸び率だったことに比べ、かなり小幅な伸び率だった。これもどうやら「台風」の影響のようだ。経済産業省はホームページで、「10月初旬段階の生産計画の調査結果では、10月は前月比4.7%の上昇が見込まれるという結果でしたが、はん用・生産用・業務用機械工業や電気機械工業などの生産計画が大きく下方修正され、10月の生産は想定外に小さい伸びに留まりました。」と述べている。10月は日本に上陸あるいは接近した2つの台風の他に、フィリピンからベトナム方面に抜けた台風もあり、船が着かない、船が出ないと言う状況が10月後半にかけての生産の下振れにつながったようだ。

10月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲0.5%と2カ月連続減少、前年同月比は+2.6%。鉱工業在庫指数は、前月比+3.1%で6カ月ぶりの前月比増加となった。出荷指数や在庫指数にも台風の影響で船での輸出が出来ず、出荷待ちの在庫が増えたことが反映している。

台風の影響があっても10~12月期全体としては生産は好調のようだ。先行きの鉱工業生産指数11月分を先行き試算値最頻値前月比(▲0.1%)で延長し、12月分を製造工業予測指数前月比(+3.5%)で延長した場合は10~12月期の前期比は+1.6%の増加になる見込みだ。先行きの鉱工業生産指数10月分を製造工業予測指数前月比(+2.8%)で延長し、12月分を製造工業予測指数前月比(+3.5%)で延長した場合は10~12月期の前期比は+3.6%の増加になる見込みだ。11・12月分が横這いでも10~12月期の前期比は+0.5%の増加になる。17年10~12月期まで7四半期連続前期比プラスになる可能性が大きいと考えられる。

そうした状況下で、生産指数も採用系列の1つである景気動向指数・一致CI・10月分の前月差と3カ月移動平均の前月差は一時的マイナス要因を跳ね返し、ともに2カ月ぶりの上昇になるとみられ、「改善」という景気動向指数の基調判断が13カ月連続で続き、景気の基調はしっかりしていることが示されよう。

(九州場所は元横綱・日馬富士の暴行事件にもかかわらず、懸賞本数は5場所連続・前年同場所比で増加)

大相撲の17年を振り返ると、春場所は1707本(前年同場所比+2.1%)と地方場所最高になった。夏場所では2,153本(同+14.0%)とそれまで最高だった15年秋場所の1979本を上回り初の2,000本台となる史上最高記録を達成した。名古屋場所は1,677本(+13.5%)、秋場所は、3横綱と人気力士の髙安、宇良の休場で1,757本(+4.9%)にとどまったが、4場所連続増加にはなっていた。

九州場所は元横綱・日馬富士の暴行事件がマスコミに連日取り上げられるという異常な状況に。安美錦が39歳という昭和以降での最年長・再入幕を果たし、千秋楽で勝ち越し敢闘賞を受賞するという、中高年を元気付けるという明るい話題もあったが、3横綱休場の寂しい内容だった。しかし、九州場所の懸賞本数は、1,498本と前年同場所比+15.1%になった(図表6)。これで懸賞本数は5場所連続・前年同場所比で増加になった。特定の力士ではなく、比較的まんべんなく多くの取組に懸賞が懸けられたのが今場所の特徴だ。広告費と、その裏付けとなる企業収益の良さが改めて確認された。