ホームマーケット身近なデータで見た経済動向2月のトピック「笑点視聴率は1月で落ち着く。大相撲初場所懸賞は増加、国民栄誉賞、平昌オリンピックに期待」

2月のトピック「笑点視聴率は1月で落ち着く。大相撲初場所懸賞は増加、国民栄誉賞、平昌オリンピックに期待」

2018年2月2日

(12月調査の日銀短観、中小企業・製造業・業況判断DIは+15と91年8月以来26年4カ月ぶりの高水準)

17年12月調査の日銀短観では、大企業・製造業・業況判断DIが+25まで上昇し、11年ぶりの高水準になった。また中小企業・製造業・業況判断DIは、+15と91年8月以来26年4カ月ぶりの高水準と、バブル期直後のレベルまで回復した。

日銀短観の類似月次指標である、ロイター短観・1月調査の製造業・業況判断DIは+35。半導体関連や産業機械などを中心に幅広い業種で景況感が改善し07年1月以来11年ぶりの高水準になった。また、QUICK短観・1月調査の製造業・業況判断DIは+40で、こちらは06年12月の調査開始以来の最高を更新した。足もと景気がしっかりしていることを示唆する統計が多い。

(12月分鉱工業生産指数はリーマン直後以来9年2カ月ぶり高水準)

鉱工業生産指数・12月分速報値前月比は+2.7%と3カ月連続の増加になった。季節調整値の水準は106.3と、リーマンショック発生直後の08年10月分107.4以来の水準になった(図表1)。17年10~12月期は鉱工業出荷指数の前年同期比が+2.9%、在庫が同+2.0%で、在庫サイクル図からみて「在庫積み増し局面」にある状況だ。経済産業省の基調判断は、11月分で「生産は持ち直している」に12カ月ぶりに判断が上方修正され、12月分でも同じ判断になった。

(北朝鮮問題を懸念する景気ウォッチャー調査は少なくなった)

「景気ウォッチャー調査」で現状判断DIは17年11月54.1、12月53.9。14年4月の消費税率引き上げ直前の駆け込み需要が出た時以来の水準だ。9月以降4カ月連続して50超となっている。キーワードごとに関連DIを作成してみると、株価上昇などが景況感のプラス要因として働いていることがわかる。一方で、「北朝鮮問題」などの懸念材料を過度に問題視するウォッチャーはあまりいない(図表2)。

(青山学院箱根駅伝4連覇は戌年の日経平均株価4連続上昇を示唆か。日経平均株価・月初高の連続記録「20」に)

正月の箱根駅伝で青山学院大学が4連覇を達成したことは、今年の日経平均株価の上昇を示唆していそうだ。51年以降の日経平均株価・十二支別の上昇記録をみると、第1位は酉年で17年までに5回連続上昇で記録更新中だ。2位は亥年の4回。3位は4つの干支で、その中で戌年だけが3回連続の上昇記録を更新中である。今年上昇になれば、青山学院大学と同じ4回連続を達成する。

また、2月1日に、16年7月からの日経平均株価・月初高の連続記録が、ついに「20」に達した。16年後半中の上昇幅は比較的小幅で平均97円22銭高、最大でも12月の204円64銭高にとどまった。ところが、17年以降は上昇幅の平均は218円77銭、最大は18年1月の741円39銭高だ。直近18年2月は387円82銭高で上昇幅が大きい。さらに17年以降は前月末が下落した回数は11回で上昇は3回にとどまった。月末に売って、月初に買い戻す動きがみられるようだ。

(1月の「笑点」視聴率は12月と違い、1度も「その他娯楽番組」の第1位にならず)

17年後半の個人消費は台風・長雨といった天候要因でもたついた。「笑点」の視聴率は台風の影響で週末の天候が悪かった9月半ば以降10月にかけてビデオリサーチ調査「その他娯楽番組」の週間第1位になることが多かった。日曜の夕方に買い物や、レジャーに行かずにテレビを見ている人が相対的に多いことを意味した。視聴率は11月にはいったん落ち着いたが、12月には再び1位になることが多く、懸念材料だった。さらに中央競馬GIレースで、キタサンブラック優勝が話題になった有馬記念の売上が前年比▲1.6%だったことも懸念材料だった。年末年始には野菜・果物の値段が季節的に高くなるが、そこに台風の影響が重なり大幅上昇したことで、節約度を強めた可能性がありそうだ。

しかし、1月には笑点の視聴率は1度も第1位になったことはなく、落ち着きがみられる。中央競馬の売上(売得金)は年初~1月28日の累計で前年比+2.9%で、7年連続前年比増加に向けて幸先のよいスタートを切っている。個人消費の悪化回避を示唆する動きだ。雇用関連指標がしっかりしている中、今年の春闘でしっかりした賃金上昇が実現することが目先の注目点である。

(17年自殺者21,140人、2年連続2万2千人割れ。17年刑法犯認知件数91.5万件2年連続100万件割れ)

17年12月分有効求人倍率は1.59倍で43年11カ月ぶりの高水準である。好調な雇用環境下、17年の自殺者は速報値で2万1,140人、前年比▲3.5%、16年に続き2万2千人割れとなった。刑法犯認知件数17年暫定値は91.5万件で、前年比▲8.1%となり、2年連続の100万件割れである(図表3)。生活保護受給者数は17年10月まで前年比26カ月連続して減少している。

(不祥事や横綱休場吹き飛ばし、初場所の大相撲懸賞は歴代2位の1,993本、6場所連続前年比増加)

17年11月の大相撲九州場所の懸賞は、初日前年比+24.1%だったが、その後日馬富士暴行問題発覚、9力士休場等で鈍化した。しかし15日間で1,498本、前年比15.1%と5場所連続前年比増加し、企業の広告費・企業収益好調を裏付けた。18年初場所は立行司式守伊之助のセクハラなどの不祥事があっても場所前の段階で2,239本と、過去最高だった17年夏場所の2,153本を上回る申し込みがあった。場所中に十両大砂嵐の無免許運転や春日野部屋の過去の暴力事件が発覚し、白鵬、稀勢の里両横綱休場もあったため減少したが、初場所の懸賞は歴代2位の1,993本で昨年初場所の1,850本を上回り前年比で6場所連続増加となった(図表4)。

(国民栄誉賞受賞直後の羽生善治竜王と対戦する藤井五段の対局は国民的関心事に)

政府は、将棋界初の永世7冠を達成した羽生善治氏と、囲碁界で全7タイトルを再制覇した井山裕太氏に対し2月13日に国民栄誉賞を授与する。国民栄誉賞は俳優や歌手など文化人が受賞した時の景気局面は、拡張6回・後退6回と半々だが、スポーツ選手の場合はほとんどが拡張局面に当たる。スポーツ選手が拡張局面で受賞したのは冒険家の植村直己さんを含むと山下泰裕さん等過去10人(なでしこジャパン含む)。吉田沙保里さんは景気の谷だった。唯一、後退局面だったのは王貞治氏の77年9月。だが翌月10月が景気の谷で、すぐ拡張期に転換した。スポーツ選手は大記録を樹立したり、世界一になったりというタイミングで受賞することが多い。祝賀ムードから選手ゆかりの商品が売れることも期待できる。囲碁・将棋界からは今回初受賞だが新記録樹立という点ではスポーツ選手に近いだろう(図表5)。

昨年からの将棋ブームは現在も継続中だ。藤井聡太四段は2月1日の第76期名人戦・順位戦C級2組の対局に勝利し、中学生としては史上初の「五段」に昇段した。なお、五段への昇段年齢は加藤一二三・九段の方が3カ月早いが、昇級日が4月1日と中学を卒業した後だった。17年6月には将棋の最年少棋士、藤井聡太四段の公式戦新記録の29連勝が大きな話題になった。16年12月24日に加藤一二三・九段に公式戦デビュー戦で勝利してから約半年間にわたり勝ち進み、30年ぶりに連勝記録を更新した。中学生の大活躍は、日本の将来への期待を膨らませることにつながり、国民にとっての明るい話題になった。84年以降の将棋の棋士の公式戦の連勝記録を調べると、その当時での連勝新記録が誕生した年は、不思議と景気拡張局面だ。普段はさほど注目を集めない分野でも、大きな話題になると人々の注目を集め、その期待に応えた結果が出ると、人々を元気にさせることになるのだろう。

2月17日には朝日杯の準決勝で公式戦では初めて、国民栄誉賞受賞直後の羽生善治竜王と対戦する予定で、大きな話題となろう。なお、藤井五段が朝日杯オープンで優勝すれば六段に昇段することになるという。

(冬季オリンピックでも日本代表選手がメダルを多く取った大会が、日本の株価に好影響を与える傾向に)

2月9日から平昌冬季オリンピックが始まる。海外で開催された夏のオリンピックで日本が金メダルを10個以上獲得した大会では、期間中の日経平均株価は全て上昇。同様に、冬季オリンピックでも日本代表選手が頑張ってメダルを多く取った大会が、日本の株価に好影響を与える傾向があるようだ。

98年長野大会の時は、金融危機で真っ暗闇だった。年末の日経平均株価は前年比で下落した。ところが日本が最多の10個のメダルを獲得した開催月の2月は日経平均株価の前月末比はプラスだった。逆に06年のトリノ大会はいざなみ景気の拡張局面だったが、日経平均株価の前月末比はマイナスだった。当初メダルが5個ぐらい取れるだろうと言われていたが結果として荒川静香選手の金メダル1個にとどまった。株価は2月20日に2月の最安値をつけた。女子フィギュアスケートが始まると上昇に転じたが戻りきれなかった。

10年のバンクーバー・オリンピックではメダルは銀3個、銅2個の計5個。メダル数は、トリノ・オリンピック(メダル1)を上回った。しかし、金メダルが惜しいところで取れなかった。金メダルを期待され一歩及ばず銀メダルに終わった浅田真央選手が出場した女子フィギュアスケートでは、NHK中継の平均視聴率が36.3%と高視聴率を記録した。瞬間最高視聴率は浅田選手が演技していた日本時間午後1時30分から33分と浅田選手の得点が出た直後の37分にともに記録された46.2%だった。場中だった日経平均株価は、浅田選手の演技が始まると上昇し、演技中は高水準での推移となったが、得点が出てキム・ヨナ選手に届かなかったことがわかると下落した(図表6)。

(今年の花粉は過去33年間の6位に相当する多さ。予測通りなら3月の個人消費に与える影響はマイナスか中立)

東京都福祉保健局の大田区のデータを使用し、スギ・ヒノキ花粉の飛散数と景気の関係を調べた。スギ・ヒノキ花粉が85~14年の30年間の平均に比べおよそ0.9倍~1.3倍程度とほどほどに多い飛散数の年は、花粉対策関連グッズの購入や医療費の増加などで3月分の個人消費にプラスに働く。85年以降の33年間で該当するのは88年、93年、97年、01年、13年、14年、17年だ。昨年17年は30年間平均を100とした指数で、事前の予想値平均119.1、レンジ101.2~137.0だったが、実績は105.5で予想レンジの下の方だった。33年間では歴代13位だ。なお15年の飛散数はこの範囲に入ったが、14年3月に消費税率引き上げ前の駆け込み需要が出た反動で前年同月比ではマイナスになった。しかし、85~14年の30年間の平均のおよそ1.8倍以上とあまりに飛びすぎると、買い物に出かけることや、レジャーを控えたりしがちなので消費全体でみてマイナスだ。該当するのは95年、00年、02年、05年、09年、11年で3月分の消費にマイナスに働いた。最も多かったのは05年で平均の約3.7倍だった。なお、平均に比べおよそ0.8倍以下の飛散数になった年の3月分の消費はプラス・マイナスまちまちで影響を及ぼさないようだ。

18年の事前予想値の平均は201.6で過去33年間の6位に相当する多さである。予想レンジは、171.0~232.3である。予測通りなら3月の個人消費に与える影響はマイナスか中立だろう。

18年1月3日に既に台風1号が発生した。今年も異常気象になる可能性を感じさせる事象だ。金融緩和の継続などの下支えもあり、今年の日本経済には、天候など一時的な悪材料や北朝鮮問題など国際関係の緊張などの悪材料を跳ね返す、基調の強さがあろう。緩やかではあるが、内外需バランスのとれた安定した景気拡張局面の継続を期待したい。