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アジア拠点最新レポート
第6回 上海レポート 北京オリンピックで大きく飛躍する中国の旅行産業
introduction
榊原 秋彦 執行役員 兼 アジア中国運用グループヘッド    東京・上海・香港の各拠点からのレポートを掲載しています。現地スタッフならではの生きた情報を、ぜひアジア・中国投資にお役立てください。(2008年9月末にて更新終了)
 
北京オリンピックで大きく飛躍する中国の旅行産業

」(中国語で「ようこそ!北京オリンピックへ」)、この看板は北京首都空港に降りた瞬間から目に入る看板で、北京市内の角々でよく見かけます。北京は今やオリンピックとともに、世界中の観光客を迎えています。

2006年中国の旅行産業は、全体売上は8,886億元で、2005年より16%増えています。しかしながら、同収入は2006年の中国のGDPに占める割合が約4%程度に留まり、これは世界平均レベル10%(世界の旅行産業合計を世界のGDP全体で割った数字)に比べると、まだまだ規模は小さく、中国の旅行産業はこれから発展の余地が大きいと考えられます(参照:図1)。

図-1 中国の旅行収入と増加率

比較的に旅行産業が進んでいる世界各国の過去を振り返ってみると、主に「観光→レジャー→リゾート」の三つのステップを経験しています。一人当たりのGDPが1,000米ドルに達した段階では、観光地をめぐる観光客が増え、2,000米ドルに達した段階では、ゴルフ等レジャーを楽しむ旅行者が増え、3,000米ドルに達した段階では、長期滞在して多様な旅行サービスを求めるようなリゾートを志向する人が増えてきました。こういう世界の旅行産業の沿革を参考にした場合、2006年中国人の一人当たりGDP水準が2,042米ドルであるので、中国の旅行産業は先ほどの「レジャー」のステージに入り始めたとも言えます(参照:表1)。

表-1 経済水準レベルと旅行産業の発展段階
経済発展水準 旅行の主な要望 主な旅行商品
<=1,000米ドル 旅行の需要が少ない 少なくて単一
1,000米ドル-2,000米ドル 観光への需要が急増 名勝旧跡
2,000米ドル-3,000米ドル レジャーへの需要が急増 温泉、ゴルフ、会議
>=3,000米ドル リゾートへの需要が急増 リゾート関連全般
(出所):北京旅行局のデータにより三井住友アセットマネジメント作成

2008年北京オリンピックは、その「レジャー」のステージに突入した中国の旅行産業の更なる発展に大いなる追い風となります。中国政府直轄の北京オリンピック委員会の財政予算案及び北京市第11次五ヵ年計画(2006年~2010年)によると、今回のオリンピックへの総投資額は2,800億元に達し、その約6割である1,800億元の出資元は北京市政府となります。北京市政府は、この1,800億元の予算額を主にインフラ整備に充当する予定で、具体的には約半分である900億元を地下鉄、電車、高速道路、空港等交通インフラに、450億元は「グリーンオリンピック」を実現できるよう環境整備に、300億元は「デジタルオリンピック」を実現できるよう電子取引などIT産業の育成に、残り150億元は電気・水道・ガス等日常生活に欠かせない公益設備の改善にそれぞれ充当する計画となっております。このようなインフラの整備により、旅行産業が「レジャー」のステージに発展することを促すでしょう。

交通や公益関連のインフラ整備以外に、今問題点となっているのは、ホテルの客室が足りないことです。中国のホテルは国家旅遊局が「★」マークを1つ星から5つ星までに分類し、星の数でホテルのグレードを表しています。一番高いグレードは5つ星ホテル(中国語:五星級)で、ホテルの入り口などに五つの星マークが貼ってあります。星の数が少なければ少ないほどランクは落ちます。もちろん、まったく星マークが付いていない宿泊施設もあり、料金としては星が付いているホテルより遥かに安くなります。北京オリンピック委員会の調査によると、オリンピック開催の頃までには、星付きのホテルが800軒、客室数が13万必要とされますが、2005年末時点で、北京の星付きホテルは652軒で、客室数も11万にとどかない状況です。ホテルの客室不足について、北京市の対策では、新しいホテルを増設するよりも星のグレードの低いホテルやより質の劣る宿泊施設の改造により、グレードの高い客室を拡大する方針としたのです。現在、北京には星が無い宿泊施設が4,000軒(ベッド数40万個)ありますが、これらの施設は、衛生面、サービス面、知名度等様々な部分で問題点が多く、外国人観光客にはほぼ無縁な存在です。中国政府は、2007年末までに、こうした施設の9割以上を星付ホテルにグレードアップするよう行政指導を行い、ホテルの供給不足問題を解決していこうとしています。

北京オリンピック期間中は、ホテルの宿泊費も従来より高くなります。北京オリンピック開催中の宿泊については、海外の112の団体から予約が入っており、うち38の団体は単価353米ドル/一泊の5星ホテルへ、うち40の団体は単価272米ドル/一泊の4星ホテルへ、残りの34の団体は単価176米ドル/一泊の3星ホテルを予約しております。これらの宿泊費は従来の3-4倍に相当します。

歴史的に、オリンピックは世界最大規模のスポーツイベントであり、北京オリンピックには200の国と地域が参加する予定です。オリンピックの開催は北京市の国際的な知名度を高める重要な機会を与えてくれますし、北京と中国全土の旅行産業の拡大にも大いなるチャンスを与えてくれます。2006年、海外から北京への観光客数は390万人超で、12年間連続で過去最高を更新しており、旅行による外貨収入は初めて40億米ドルを突破しました。北京市第11次五ヵ年計画によると、2006-2010年の海外からの観光客を年平均8%増加させ、外貨での旅行収入を年平均9%増加させる目標を立てております。オリンピックの開催年である2008年は、海外から北京への観光客は480万人に達し、48億米ドルの外貨収入が見込まれます。(参照:表2)

表-2 第11次五ヵ年計画による北京市旅行産業の主な目標
2006 2007 2008 2009
海外から北京への旅行客(万人) 390 420 480 490
旅行業による外貨収入(億米ドル) 39 42 48 50
(出所):北京旅行局のデータにより三井住友アセットマネジメント作成

世界経済の一体化が進む中、サービス業も急速に発展しており、中国の旅行産業はオリンピックを契機に世界各国と旅行業の連携及びサービスの多様化に向けて新しいステップを踏み出すでしょう。

毛大龍(1976年生まれ 男性) 国籍:中国 職務:SMAM上海事務所のアナリスト

2004年に上海財経大学の投資経済研究科で修士課程を修了後、中国国内の証券会社である天同証券に就職し、主に中国の証券市場の投資戦略の研究及び医薬業のアナリストを経験してきました。2007年4月三井住友アセットマネジメントに入社し、現在、アナリストとして石油化学、医薬品、繊維・アパレル、旅行業を主に担当しております。これからも、投資家の皆様に、成長著しい中国市場の魅力をスピーディにお伝えできるよう全力で取り組んでいきます。

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