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アジア拠点最新レポート
第9回 上海レポート 中国の土地制度と国民の住宅環境
introduction
榊原 秋彦 執行役員 兼 アジア中国運用グループヘッド    東京・上海・香港の各拠点からのレポートを掲載しています。現地スタッフならではの生きた情報を、ぜひアジア・中国投資にお役立てください。(2008年9月末にて更新終了)
 
中国の土地制度と国民の住宅環境

中国の土地制度-所有権と使用権の分離

1949年社会主義国家として新しく誕生して以来、中国では土地の所有権と使用権が分かれた制度となっています。個人には土地の所有権はなく、使用権のみを保有します。ところが、使用権には土地の用途によって期限が設けてあり、住宅の場合は70年となっています。個人の持っている土地の使用権は従来転売禁止であったが、1998年の住宅制度改革後は都市部の人のみ第三者に転売可能となりました。農村部の人は依然として転売禁止ですが、国および地方政府が徴用する場合には売却することができます。なお、都市部と農村部の区別は、中国固有の戸籍制度により判断しています。例えば、農村部の人が都市部に引越ししてきた場合であっても、都市部の戸籍に変更することは原則的にできません。

中国の土地制度

都市部の住宅状況-都市部人口増と設備の旧い住居環境

90年代後半から2005年までの約10年間、中国は都市化が進み、都市人口は3.73億人から5.62億人と都市部人口の比率が30%から43%に上昇しました。これは年平均で1900万人が増加したことになります。第11次五ヶ年計画によると、2010年には中国の人口は約13.6億人に達し、都市部の人口は47%に達すると予想しています。つまり、2006年~2010年の間、毎年1500万人が都市部の住民になるとの予測になります。大学の卒業生から出稼ぎ労働者、企業の経営者まで幅広い人口の都市への流動化は、今後も不動産市場の有力な需要源となります。

ところが、都市部の住居環境は恵まれたものではありません。先ず、居住の広さをみてみますと、90年代は建設事業が盛んになり始めたにもかかわらず、一人当たりの居住面積は15m²にも達しませんでした。中国が「小康社会」(いくらかゆとりのある社会)を実現するには、2010年までに一人当たりの居住面積が30m²に達するのが目安です。次に、居住の設備をみてみますと、住宅の大半が築年1999年以前の公共住宅時代(つまり、企業が福利の一環として社員に廉価なアパートを提供した時代)のもので、トイレと台所とシャワー室が共同使用となっています。90年代後半から住宅の供給不足に対応して、多くの不動産デベロッパーは高層マンションを建て始めました。これらのマンションは昔の公共住宅とは違って、部屋の中に台所とトイレ、シャワー室があり、いわゆる標準型の設備を揃えたものでした。しかしながら、高い販売価格のため、多くの国民の収入が不動産の価格に追いつかない状態です。国家統計局の調査結果によると、中国の住宅市場の主な消費層は月給3000元以下の世帯が主流となりますが、これらの世帯の住宅は1999年以前の公共住宅を安く手に入れたものがほとんどです。不動産デベロッパーが販売している高層マンションの買い手は、月給1万元~4万元の世帯が半分を占めています。2007年11月末の統計によりますと、国の生活補助の対象となっている都市部の貧困層は約2254万人で、彼らの住宅は今後5年間政府が保障することになります。

都市部と農村部の人口構成

農耕地の減少-農村用地の徴用は地方政府の主な収入源

中国の農村部に戸籍を持つ人は、土地の使用権を第三者へ転売することができません。国および地方政府に徴用される場合には売却できます。地方政府は土地の都市化計画や公共施設の開拓のため、農耕地を低価格で徴用し、地方政府の土地貯蓄機関で統一管理をしていました。ところが、土地貯蓄機関は低価格で徴用してきた農耕地を高い価格で不動産デベロッパーに販売し、地方政府の主な収入源となっていました。このため、中国全土の農耕地はどんどん減っていく一方でした。13億人の巨大な人口の食糧問題を自国の供給能力で解決できるには、少なくても約1兆2000億m²の農耕地は確保しなければなりませんが、現存の農耕地の面積は既に1兆2200億m²ぐらいしか残らず、ほぼ農耕地の確保面積の最低ラインに接近してきています(国家土地資源部の「2005年中国土地資源公報」)。

中国の農耕地面積

中央政府の不動産投資抑制策に主眼

農耕地の減少危機、都市部の高い住宅価格、不動産デベロッパーによる建設用地の大量取得・・・このような問題に面し、中央政府は2007年から不動産投資抑制策を強化し始めました。先ずは、①預金準備率の引き上げ、②利上げ、③中国人民銀行の手形の発行による市場からの資金吸収を中心に金融引締め政策を強化しました。2007年は、一年間で連続6回の利上げ、10回の預金準備率の引き上げを実施しました。しかし、深セン等一部の都市では不動産価格が落ち着いてきましたが、利上げによる価格調整の明確な効果が見られるにはもうちょっと時間がかかるでしょう。次に、不動産ローンの引締め策を新たに発表しました。つまり、2軒目として取得する住宅ローンの最低頭金比率を従来の30%から40%に引き上げ、富裕層による投資目的の不動産売買を抑制しました。また、手付かずのままで保有されている土地についても新しい政策を打ち出しました。つまり不動産デベロッパーが2年以上何も開発しないままで放置している土地は政府が無償で回収する政策を打ち出し、不動産デベロッパーの土地の買い占めを抑制し始めました。

2007年を振り返ってみますと、中央政府は不動産投資の過熱抑制などにつながる一連のマクロコントロール政策に加え、「物権法」を発表し、不動産産業の長期的な制度作りに向けて整備してきました。今年も引き続き不動産業者に対する銀行貸出の審査を更に強化することが予想されます。(作成日:2008年1月10日)

劉洋 上海アナリスト
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