経済指標解説
2月分「鉱工業生産」について
03月30日午前9時現在
-2月分の鉱工業生産指数の前月比は▲0.9%と、12カ月ぶり減少だが、
前年同月比は+31.3%と、1959年12月分の+29.5%を上回る史上最大の増加率に-
-「2月分確報では、従来と同じ方法で年間補正を行う予定」と経済産業省発表-
(鉱工業生産)
●鉱工業生産指数・2月分速報値は前月比▲0.9%と12カ月ぶりの減少になった。輸出増に支えられて生産の基調は強いものの、前月比に関しては1月分が+2.7%も伸びた反動が出たとみる。輸送機械工業、その他工業、情報通信機械工業などが減少に寄与したようだ。
●前年同月比は+31.3%と3カ月連続の増加になった。前年同月の水準が最近で最も低かった反動もあるが、過去最大の前年同月比だった1959年12月分の+29.5%を上回る前年同月比になったことは生産の基調が強いことを示唆していよう。
●2月分の鉱工業生産指数の水準は91.3。直近のピークである2年前の08年2月分の110.1より18.8ポイント低い水準で、直近のボトムである09年2月分の69.5より21.8ポイント高い水準である。
●2月分速報値の出荷指数は前月比▲0.2%とこちらも12カ月ぶりの減少になった。在庫指数は前月比+1.0%となった。09年2月分に158.5と史上最高水準を更新した在庫率指数は、2月分速報値では前月比+1.8%で、指数水準は111.0になった。
●製造工業予測指数前月比は3月分こそ+1.4%と増加に転じる見通しだ。生産は先行きも増加が期待されている。但し、4月分は▲0.1%と再びの減少見通しである。いわゆるトヨタ・ショックの影響が懸念される輸送機械工業の前月比が3月分+1.6%のあと4月分▲4.7%と減少見込みであることなど、この辺りの業種の動向が注目される。
●経済産業省は、09年3月分では「生産は停滞している」と判断していたが09年4月分では「持ち直しの動きが見られる」と07年8月以来の上方修正をした。そして5月分では同じ表現。09年6・7・8・9・10・11・12月分・10年1月分では「生産は持ち直しの動きで推移している」とした。10年2月分でも11カ月連続で「持ち直しの動き」を使い、「生産は持ち直しの動きで推移している」として判断を据え置いた。
●鉱工業全体での在庫サイクル図をみると、08年10~12月期では出荷の前年比が▲14.9%、在庫が同+4.8%と45度線を上回り、鉱工業全体で在庫調整が必要な局面になっていた。09年1~3月期では、出荷の前年比が▲33.5%、在庫が同▲5.2%であった。09年4~6月期では、出荷の前年比が▲27.6%、在庫が同▲10.3%であった。09年7~9月期では、出荷の前年比が▲19.3%、在庫が同▲12.1%であったが、09年10~12月期では、出荷の前年比が▲4.1%、在庫が同▲14.6%と45度線を下回った。10年1~2月分では、出荷の前年比が+24.1%、在庫が同▲7.7%で景気が回復局面にあることを示唆している。
●今回の2月分速報値発表とあわせ「平成21年年間補正について」のお知らせが経済産業省HPに掲載された。「平成22年4月15日公表予定の鉱工業指数平成22年2月分確報では、従来と同じ方法で年間補正を行う予定です」となっており、GDP統計のようなリーマン・ショックの影響に対応した季節調整方法の変更などは行われないことになった。このため、今回の年間補正で過去データが大きくリバイスされることはなくなったとみられる。
(1~3月期のGDP予測)
●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の1~2月分平均の対10~12月分平均比は▲1.0%の減少となった。環境対応車の購入に係る減税・補助などの政策効果が出ているものの、厳しい所得・雇用環境下ということが影響していよう。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数の方は同+1.6%の増加になった。また、需要サイドの関連データでは、家計調査の実質消費支出(除く住居等)の1~2月分平均の対10~12月分平均比は▲2.1%の減少である。乗用車販売台数の1~2月分平均の対10~12月分平均比は▲1.3%の減少である。以上のデータからは実質個人消費の1~3月期分は所得・雇用環境の厳しさもあり、前期比は増加となっても低めの伸び率になる可能性が大きいと思われるが、GDPの個人消費に近いデータである消費総合指数(月次)の1月分の対10~12月分平均比は+1.5%の増加と非常に強い。2月分がどうなるかが注目されるところだ。
●設備投資の関連データである資本財出荷指数の1~2月分平均の対10~12月分平均比は+5.6%の増加となった。資本財(除、輸送機械)も同+5.6%の増加となった。なお、建設財は同+3.4%の増加である。供給サイドから推計される1~3月期第1次速報値は3月分の動向次第のところもあるが、実質設備投資の前期比はしっかりしたプラスになる可能性が大きいとみる。
●実質輸出入の動向をみると輸出の1~2月分平均の対10~12月分平均比は+4.2%の増加となった。輸入が同+4.5%であり、外需の寄与度は10~12月期の前期比+0.5%からゼロ程度に低下しそうだ。
●以上の関連データからみると、5月20日に発表される1~3月期の実質GDP成長率は、前期比プラスの伸びにはなりそうだが、その強さの判断は4月上旬に発表される2月分の消費総合指数などを待ちたいところだ。
(2月分景気動向指数)
●2月分の景気動向指数・速報値は、先行CIは前月差+1.6ポイント程度と、86年11月分から87年11月分に記録した13カ月連続以来の12カ月連続の上昇になろう。一致CIは前月差+0.3ポイント程度で96年2月分から97年1月分に記録した12カ月連続以来の11カ月連続の上昇になると予測する。一致CIを使った基調判断は5カ月連続の「改善」になろう。先行DIは100.0%程度で、98年11月から00年4月の18カ月連続以来の10カ月連続50%超になろう。一致DIは2ヶ月連続の100.0%と、10カ月連続しての50%超になろう。これは05年8月から06年8月の13カ月連続以来になろう。先行DI、一致DIとも全系列がプラス符号になるとみた。
●先行CIでは速報値からデータが利用可能な10系列のうち、新規求人数、耐久消費財出荷指数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与の系列、長短金利差1系列が前月差横ばい寄与の系列、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積の3系列が前月差マイナス寄与の系列になると予測する。先行CIの前月差は12カ月連続の上昇になり、先行きの景気は目先腰折れすることなく回復基調を続けることを裏付ける内容となろう。
●一致CIでは速報値からデータが利用可能な9系列のうち、投資財出荷指数、商業販売額(小売業)、商業販売額(卸売業)、有効求人倍率の4系列が前月差プラス寄与の系列、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、所定外労働時間指数、中小企業売上高の5系列が前月差マイナス寄与の系列になろう。一致CIは11カ月連続の上昇となり、景気拡張が継続していることを裏付ける内容となろう。
宅森昭吉(たくもりあきよし)
当社チーフエコノミスト

- 著書
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:「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社、1988/12)
「日本経済「悲観神話」はもういらない」(中央公論新社、2003/04) - その他
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:総務庁統計局「個人消費動向の的確な把握のための検討会」委員
経済企画庁「動向把握早期化委員会」委員などを歴任。
現在、経済企画協会「ESP景気フォーキャスト調査委員会」委員、
内閣府「景気ウォッチャー調査研究会」委員
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