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経済指標解説

5月分「鉱工業生産」(速報値)について

06月29日午前11時現在

-5月分の鉱工業生産指数の前月比は▲0.1%と3カ月ぶりの低下-

-5月分景気動向指数・先行CIは2カ月連続下降、一致CIは14カ月ぶり下降か-

 

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(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・5月分速報値は前月比▲0.1%と3カ月ぶりの低下になった。輸送機械工業、パルプ紙・紙加工品工業、石油・石炭製品工業などが低下に寄与したようだ。

●なお、今年の鉱工業生産指数の季節調整値はリーマン・ショックによる大きな変動の影響をどこまで入れて計算するかという問題から、昨年のパターンとかなり異なっている。指数そのものだと7~10月分が弱い数字で出やすく、1~4月分がかなり強めに出やすい。このため現在の指数では09年5月分の前月比は+4.6%だが、以前(今年4月半ばの年間補正前)の季節調整パターンでは+5.7%だったことと比較すると1%強低めの伸び率になる。10年5月分の前月比も1年前の季節調整パターンではプラスの伸び率であったと思われる。

●前年同月比は+20.2%と6カ月連続の増加になった。但し、最近で最も高かった2月分の+31.3%から伸び率は鈍化している。

●5月分速報値の鉱工業生産指数の水準は95.9。直近のピークである約2年前の08年2月分の110.1より14.2ポイント低い水準で、直近のボトムである09年2月分の71.4より24.5ポイント高い水準である。

●5月分速報値の出荷指数は前月比▲1.7%でこちらも3カ月ぶりの低下になった。在庫指数は前月比+2.0%となった。09年2月分に154.6と史上最高水準を記録した在庫率指数は、5月分速報値では指数水準は108.1で、3月分の102.3から2カ月連続で上昇した。

●製造工業予測指数前月比は6月分+0.4%、7月分+1.0%と2カ月連続緩やかな増加と明るい見通しである。但し、製造工業予測指数をみると、5月の実現率、6月の予測修正率がそれぞれ▲0.6%、▲0.5%とマイナスであることが気がかりだ。

●経済産業省は、09年4月分では「持ち直しの動きが見られる」と07年8月以来の上方修正をした。そして5月分では同じ表現。09年6~12月分・10年1~3月分では「生産は持ち直しの動きで推移している」とした。10年5月分でも14カ月連続で「持ち直しの動き」を使い、「生産は持ち直しの動きで推移している」として判断を据え置いた。

●鉱工業全体での在庫サイクル図をみると、08年10~12月期では出荷の前年比が▲14.9%、在庫が同+4.8%と45度線を上回り、鉱工業全体で在庫調整が必要な局面になっていた。09年1~3月期では、出荷の前年比が▲33.5%、在庫が同▲5.2%。09年4~6月期では、出荷の前年比が▲27.3%、在庫が同▲10.3%。09年7~9月期では、出荷の前年比が▲18.8%、在庫が同▲12.1%であったが、09年10~12月期では、出荷の前年比が▲3.3%、在庫が同▲14.6%と45度線を下回った。10年1~3月期では、出荷の前年比が+26.5%、在庫が同▲6.0%で景気が回復局面にあることを示唆している。10年4~5月分でも、出荷の前年比が+24.1%、在庫が同▲0.8%で景気が回復局面にあることが確認される状況だ。

(4~6月期のGDP予測)

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4~5月平均の対1~3月平均比は▲2.2%の減少である。薄型テレビの家電エコポイント対象商品の変更による駆け込み需要の反動などが出ていよう。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+2.4%の増加になった。水準的には依然厳しいが方向的には改善してきている雇用・所得環境などが背後にあろう。

また、需要サイドの関連データでは、家計調査の実質消費支出(除く住居等)の4~5月平均の対1~3月平均比は▲2.4%の減少である。乗用車販売台数の4~5月平均の対1~3月平均比は+4.0%の増加である。このように関連指標は強弱まちまちだ。消費総合指数(月次)の4月分の対1~3月平均比は+0.1%の増加である。

●設備投資の関連データである資本財出荷指数は5月分の前月比はマイナスになったものの、4~5月平均の対1~3月平均比は+3.2%の増加となった。資本財(除、輸送機械)も同+5.8%の増加となった。なお、建設財は同+2.0%の増加である。供給サイドから推計される4~6月期第1次速報値の実質設備投資の前期比は3四半期連続プラスになる可能性が大きいとみる。

●実質輸出入の動向をみると輸出の4~5月平均の対1~3月平均比は+9.4%の増加と高い伸び率になった。輸入が同+5.0%の伸びにとどまっており、外需の寄与度は4~6月期でもしっかりしたプラスになりそうだ。

●以上の関連データからみると、8月16日に発表される4~6月期第1次速報値の実質GDP成長率は設備投資や外需が牽引するかたちのプラス成長率になりそうだ。

(5月分景気動向指数)

●5月分の景気動向指数・速報値は、先行CIは前月差▲2.5ポイント程度と予測する。4月分で14カ月ぶりの下降になったが、5月分では2カ月連続の下降になろう。一致CIは前月差▲0.5ポイント程度で14カ月ぶりの下降になると予測する。09年3月を谷とする拡張局面では初めての下降となろう。一致CIを使った基調判断は8カ月連続の「改善」になろう。3カ月後方移動平均の符号は変化しないので「足踏み」という判断になることはないだろう。先行DIは65.0%程度で、98年11月から00年4月の18カ月連続以来の14カ月連続50%超になると予測する。一致DIは88.9%程度で、13カ月連続しての50%超になろう。これは05年8月から06年8月までの13カ月連続以来だ。DIからは景気拡張継続が裏付けられる。

●先行CIでは速報値からデータが利用可能な10系列のうち、消費者態度指数、中小企業売り上げ見通しDIと、新設住宅着工床面積(微妙だが)の3系列だけが前月差プラス寄与の系列になると予測する。一方、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、耐久消費財出荷指数、日経商品指数、長短金利差、東証株価指数の7系列が前月差マイナス寄与の系列になるとみる。先行CIの前月差が2カ月連続の下降になれば、欧州経済など不透明さが強い状況下ということもあり、先行きの景気の懸念材料として注目されるかもしれない。

●一致CIでは速報値からデータが利用可能な9系列のうち、生産指数、大口電力使用量、所定外労働時間指数、投資財出荷指数、商業販売額指数(小売業)、商業販売額指数(卸売業)、中小企業売上高の7系列が前月差マイナス寄与の系列になり、残りの鉱工業用生産財出荷指数と有効求人倍率の2系列だけが前月差プラス寄与の系列になると予測する。一致CIは14カ月ぶりの下降となり、景気拡張が足元ややもたついている印象を与える内容となろう。

 

宅森昭吉(たくもりあきよし)
当社チーフエコノミスト

著書

:「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社、1988/12)
「日本経済「悲観神話」はもういらない」(中央公論新社、2003/04)

その他

:総務庁統計局「個人消費動向の的確な把握のための検討会」委員
経済企画庁「動向把握早期化委員会」委員などを歴任。
現在、経済企画協会「ESP景気フォーキャスト調査委員会」委員、
内閣府「景気ウォッチャー調査研究会」委員

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