アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二回 上海事務所のご紹介;中国本土から現地情報をお届け、そして中国景気は

2012年08月09日

第3四半期に景気底打ち

三井住友アセットマネジメントの中国株(本土株)の運用体制はどうなっているのか。また、中国の経済やマーケットの現状はどうなのか。そして今後の注目ポイントは――。
激動する中国の今について、石山仁が上海事務所長の山内裕也に確認しました。
※この対談は2012年8月に実施したものです。

上海事務所経由で、本土並みの情報が日本に

石山:
まず始めに上海事務所の位置づけや業務内容についての紹介をお願いします。

山内:
上海事務所は中国本土株の市場のリサーチを目的に2005年に設立しました。中国本土株について現地採用のアナリストが調査を行い、東京のファンドマネージャーに調査結果を報告しています。

石山:
アナリストの内訳は?

山内:
男性1人、女性3人です。中国では女性の社会進出が著しく、この上海事務所のシニアアナリストも日系の銀行や中国の証券会社での勤務経験がある10年選手です。

石山:
2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟して以来、中国の経済成長は著しいものがあります。中国の経済力の拡大に伴い、日本国内で得られる中国の情報も増加してきたように感じますが。中国本土で得られる情報というのは、日本国内にある情報とどのように異なるのでしょうか。

山内:
5-6年前は中国の株式市場の情報は香港経由で日本に入っていたため、新聞のヘッドラインの情報さえカバーできていない薄い内容でした。当時に比べると、今はヘッドラインレベルであればスピードも量も本土並みのしっかりした情報が日本にはあると思います。ただ、情報のギャップがあるとすれば、それは読み方の違い、歴史的経緯や環境を踏まえた理解の仕方が違うのだと思います。例えば最近中国の地方政府が相次いで大型プロジェクトを発表しており、海外でも当初景気にプラスのニュースとして報道されました。確かに過去の景気対策を連想させるところがありますね。でも当地では「大型プロジェクトは全て中央認可、地方が自由にできる部分は限定的」「地方政府は財政の柔軟性がなく、大規模な財政出動は容易でない」というのが常識です。そのため、現地ではこのニュースについて、そもそも最初から懐疑的な見方が大勢を占めていました。

石山:
中国本土の情報には、中国本土に精通した上での独自の解釈が必要なのですね。

山内:
東京で利用できる中国経済や個々の中国企業に関するデータも豊富になってきてはいますが、解釈も含めると投資家のニーズに追いつけていないと言えるでしょう。それだけに一層、中国現地でのリサーチの重要性を感じます。上海事務所では、東京で見ているのに比べれば遥かに近い肌感覚で捉えられていると思います。

不動産価格は高水準

石山:
ところで上海での生活はいかがですか?

山内:
年間1900万台もの車を生産している国ですから、空気はよくありません。それでも、青空が見えない北京に比べるとまだましなのかもしれません。上海万博以降、地下鉄やバスなど公共交通機関がとても便利になり、使い勝手は東京並みです。

石山:
物価はいかがですか。

山内:
都市中心部の不動産は金融商品化しているだけあって、相当高騰しています。アパートの値段は1m2あたり2万元(約25万円)~3万元(37万円)で売られています。100m2の3LDKで300万元(3700万円)ほどします。東京と変わらないと思うかもしれませんが、平均賃金を考えれば相当高いです。ただモノの値段では不動産は突出していて、全てがこの調子で上がっているわけではありません。

経済政策の“微調整”と中国景気

石山:
さて、中国は昨年10月、景気支援に向け経済政策の“微調整”が必要とし、金利を2度にわたって下げたり、積極的な財政出動などの政策を“微調整”と銘打って推進しているようです。中国は経済政策を“転換”ではなく“微調整”という表現で進めていますが、日本にいると、この“微調整”の意味がよく分かりませんが。

山内:
政策を調整するものの、2008年に行ったような大きな金融緩和はやらない、これまでの方向性は変えない、という意味で“微調整”という言葉を使っているんだと思います。

石山:
なるほど。では、中国政府の“微調整”による景気への影響と、現状と見通しについて教えてください。

山内:
今年5月から政府首脳から相次いで緩和の発言が相次ぎ、今までにない中国の本気度がうかがえます。しかし、なかなか効果は表れておらず、2012年第2四半期(4-6月)の国内総生産(GDP)は、前年同期比7.6%と依然低迷しています。景気の底は第2四半期ではなく第3四半期になりそうで、今のところ利下げの効果も目立ったものではありません。2008年の景気対策の後遺症が出てきているためと言えます。ただし、今後は第3四半期の底打ちを起点に中国の景気は緩やかに持ち直しそうです。

石山:
気になる今後の経済成長率ですが、8~9%は維持できそうですか?

山内:
エコノミストの見方は相当に分かれています。そもそもこれまでのように伸び率が8%でよいのか、という議論も一般的になってきました。温家宝首相は目標を7.5%に定めています。

石山:
市場参加者の中にはハードランディングを懸念している向きもありますが、その可能性をどのように考えていますか。

山内:
ハードランディングはないと思います。ただ、中国経済は明らかに変わってきています。

石山:
具体的にはどのような変化でしょうか?

山内:
不動産投資や海外の企業を誘致するグローバリゼーションは一定の成果を上げましたが、賃金は上昇し、需要は減速してきました。今、その転換期がやって来ています。

石山:
新たな成長要因を創る必要がありますね。

山内:
その通りです。政府は今後、量より質への転換が必要だと言っています。

石山:
大衆車から高級車へシフトするように、安い労働力・技術から、付加価値の高いものの創造や高付加価値サービスへの質的転換が必要というわけですね。

指導部交代も大きな影響はなし

石山:
ところで、来年3月には胡錦濤総書記が退任するなど指導部の交代があります。これは景気にどう影響しそうですか。

山内:
色々懸念する声もありますが、過去の指導部の交代を見るとほとんどが前政権の政策を踏襲しており、すぐに大きな改革は見られないと思います。

石山:
今年は選挙イヤーのため、各国で政権交代や指導者の交代が見込まれていますが、指導部の交代により何か大きな変化があることは想定されていないというのも、中国ならではですね。中国については上海事務所からの現地情報を踏まえ、今後も取扱っていきたいと思います。

インタビュアー プロフィール

上海事務所長 山内裕也

外務省出身。在中国大使館勤務を経て2009年4月に三井住友アセットマネジメント勤務。中国政策動向分析、中国本土株の市場リサーチを行う上海事務所にて、現地採用のアナリストを取りまとめている。2012年4月から現職。

マーケット情報部 チーフストラテジスト 石山仁

世界の経済情勢などをエコノミストやファンドマネージャーの協力を得ながら分析し、見通しや戦略などを顧客に提供している。