アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第七回 魅力的なアジア・オセアニアの株式投資(第二部)

2013年05月22日

第二部 アジア・オセアニア地域の魅力

前回に引き続き、魅力的なアジア・オセアニア株式投資について、お伝えしていきます。
第一部では世界経済の流れとアジア地域が注目される理由についてお伝えしました。
第二部の今回は、第三回の対談にも登場した三牧副ヘッドに、具体的なアジア・オセアニア地域の魅力について語ってもらいました。

1.アジア・オセアニアの特長

石山:
ここからは、オーストラリアを含むアジア・オセアニアの特長についてまとめてみたいと思います。
同地域のうち、アジアは他のエマージング市場に比べて経済成長率が高い一方、物価水準が相対的に低く、平均的にマクロ環境が安定していることが指摘できます。この点から、中長期的な投資魅力度が相対的に高くなっています。
IMF(国際通貨基金)によれば、続く2013年も実質GDP成長率や消費者物価上昇率についてアジア地域は他のエマージング諸国を上回ると見られています。
まず、アジアの特長について教えてください。

特長1:世界人口の6割がアジアに集中。都市化も進展

三牧:
アジアは人口が多く、世界人口の6割がアジアに集中していると言われています。インドやインドネシアを中心に人口は今後も伸びると見られ、都市部に人が集中する都市化が進展しています。
人口が増え、都市化が進展すれば衣食住の質的ニーズが高まり、経済の成長を押し上げる要因となります。
昭和40~50年代の日本と同様に、今後、高層ビルの建設、鉄道網の拡充、沿線の整備など都市のインフラ整備が進むでしょう。

特長2:成長段階の異なる国・地域

三牧:
2番目の特長は、アジアには沢山の国・地域があり、しかも、成長段階がそれぞれ異なる、という点です。
年率+6~8%の高い経済成長が見込めるのが、中国やインド、インドネシアで、これらの国々は今後も都市化によるインフラ整備が進むでしょう。
一方、年率+4~6%の安定した経済成長が見込めるのが東南アジアの国々です。また、韓国や台湾は成熟度の高い国・地域であり、今後は日本と同じように中国やアジアに進出してその地域で成功を収めていく事業モデルで今後も成長が期待されています。
オセアニアはアジアの成長を資源供給の面からサポートする役割があります。オーストラリアは移民の受け入れで人口の増加も見込まれ、それによる経済成長も期待できます。

石山:
アジア・オセアニアは、人口の多い消費圏を抱え、高成長・安定成長が見込める国・地域と、成熟した輸出国とこれらを支える資源国が1つの経済圏としてまとまっている、というのが特長なのですね。

2.アジア圏の魅力は「繋がり」

1:鉄道で「繋がる」アジア圏

三牧:
そうですね。そして最近最も注目しているのが、この発展著しいアジア圏が鉄道網で繋がりつつあるということです。
例えば、シンガポールとクアラルンプールを結ぶ高速鉄道が2020年までに建設される予定です。自動車で両都市を結ぶと4時間でしたが、高速鉄道だと90分で結ばれます。
同様に中国とシンガポールを鉄道で結ぶ構想もあります。完成は未定ですが、タイやラオスなどを経由することから、実現すればアジア大陸が一つの地域となって繋がることになります。

2:LCCで繋がるアジア圏

三牧:
LCC(格安航空会社)の台頭にも注目しています。
従来のナショナルキャリアは運賃が高く、庶民には使いにくい面もありましたが、LCCの登場で国内・域内を低価格で移動できるようになりました。結果、これまで旅行ができなかった人が旅行するなど新たにレジャー需要が生まれています。

石山:
国によって成長段階や役割が異なることが、アジア圏の多様性を生み出しているのですね。アジア圏が鉄道で繋がるのは注目に値しますね。格安航空会社の登場も魅力的です。最近は日本でも格安航空会社が進出しています。利便性やサービスの面でまだまだ多くの課題を抱えているようですが、長い目で見れば日本への観光を通して相互に経済面でのプラス効果が期待されます。
一方、繋がりといえば、もう一つ、情報面があると思います。情報面ではどのような状況でしょうか?

3:情報網で繋がるアジア圏

三牧:
モバイル端末を使ったデータ通信は各国で盛んです。例えば、SNSのFacebookやスマートフォンで通信・通話ができるLINEのように、新しい通信手段で人々が急速に繋がっています。もはや、従来のような通信インフラの面での遅れというイメージはありません。

石山:
鉄道・空港・情報に絡んだインフラ構築が重要な分野で、レジャーや観光といった分野も伸びそうですね。
関連する企業にはどのようなところがありますか。

3.注目産業

低コスト経営に長けたアジア企業

三牧:
マカオやシンガポールにはカジノが多く、この分野の経済は活発です。また、タイのホテルなどは東南アジアに進出しています。
同様に、映画館を経営する会社が国内にネットワークを広げる動きも目立っています。日本では映画はレンタルやダウンロードして観ることもありますが、暑い国では冷房の設備が整った施設で観るのが盛んです。

石山:
所得水準の上昇で、消費力がついてくるに従い、求められるサービスも変化しているのですね 。こうした変化によって国内外の企業の投資にも変化が表れているのでしょうか?

三牧:
かつては先進国の企業がアジアへ投資したり、生産拠点としていましたが、近年はアジアの企業がM&Aなどでアジア域内に進出したり、海外の有名ブランドを買収するケースも目立っています。
インドのタタ・モーターがジャガーを傘下に収めたり、中国の吉利(ジーリー)自動車がボルボブランドを買収するなど動きが加速しています。
外資系企業がインドや中国で成功するためにはコスト管理を徹底しなければなりません。ボルボブランドやジャガーを買収した会社はコスト管理を追求し、ブランド価値を高め、質の高い経営をして事業を軌道に乗せています。近年は、化粧品やシャンプーなどの分野で中南米やアフリカに進出してシェアを拡大する企業もあります。
低コスト経営に長けたアジアの企業が、所得が高くない新興国の市場で成功する例は珍しくなく、ビジネスモデルがアジアに馴染んでいるのかもしれません。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

4.相対的に質の高い経営

石山:
アジア企業の実力と位置づけは世界ベースで随分と変わってきているのですね。
株式投資の観点からは企業経営の質や透明性が重要です。これらの点は先進国と比べてどうですか?

三牧:
市場によって異なりますが、アジアの企業はアジア危機を経験しておりその教訓を生かしています。
アジア危機の前は情報を開示しなくても世界中からお金が集まりました。しかし、アジア危機の後、アジアに対する信頼が低下し、海外から資金を呼び込むために情報を開示し、透明性を高める必然性に直面しました。それから15年以上が経ち、四半期報告は当たり前になっています。
また、流暢な英語を話す社員を持つ会社が多いほか、経営陣が欧米の有名大学・大学院を出ているケース等も目立ちます。

5.アジア・オセアニアの株式市場の特長

石山:
経営の質や透明性の点ではむしろ欧米企業と同等といった印象なのですね。
こうした企業経営の質の高さは株式市場できちんと評価されているのでしょうか?

三牧:
そうですね。例えば、PBR(株価純資産倍率)を例に見てみましょう。現在、PBRは概ね先進国とアジアで同水準です。
10年前は先進国とアジアではアジアにリスクがあったために差がありましたが、その後アジアの信頼性は高まり、価格が低位に放置されてしまう要因ではなくなりました。とは言え、アジアは成長性が高いのに、まだ先進国と同等のバリュエーション水準に留まっています。さらに信頼度が高まれば、先進国を抜いてより高いバリュエーションの位置になることも期待されます。
成長性が高い割に株式配当利回りが先進国と同等なのもアジアの特長です。アジア企業も比較的高成長だった局面が終わり淘汰され、株主還元ができる会社が残ったためと言えます。アジア危機を乗り越え、10年、20年としっかり経営している企業が残っています。

石山:
投資家はアジア企業の経営の透明性や、株主重視のスタンスを評価するようになってきている、ということなのですね。
今後のアジア・オセアニア地域の展開をどうお考えですか?

三牧:
短期的に見ると、欧米経済が良くなれば、アジア・オセアニア経済も良くなると思います。中国経済からの影響は受けますが、人口の増加、所得の上昇など経済の根幹は手堅く、特にアジア圏の新しい産業は比較的影響を受けないと見ています。アジア経済の成長の持続性が期待できると思われます。

三牧:
経済成長面では、三つの要素が重要です。一つ目は豊富な労働力。二つ目は資本、三つ目が生産性の向上です。
一つ目の労働力は人口の増加と平均年齢の低さから今後も期待が持てます。この要素が満たされているだけで、潜在成長率は高まると見ています。
二つ目の資本については、規制緩和を行い、海外資本を取り込む動きが今後も活発化するすると期待しています。
三つ目の生産性の向上は、基本的に欧米や日本などの方策から吸収することができます。
これらの点からも、中・長期での成長が期待できると思います。

石山:
先に、アジアには成熟したアジアと、成長性のあるアジア、そして資源国のオセアニアがあり、それが一つの大きな経済圏を作っているというお話でした。
まとめになりますが、具体的に描いているアジア・オセアニア地域の魅力をまとめると、どのようなイメージでしょうか?

三牧:
ファンドマネージャーとしては、特に成長性の高いのは中国、インドと見ています。
経済が成熟していき、国内の成長よりも海外進出で外貨を稼ぐのは、韓国と台湾。
このほか、経済成長率は5%程度ですが、インドネシア、タイ、フィリピンも堅調です。
マレーシアやシンガポールも底堅い成長が期待できます。ベトナムも中国やインドと同様の高成長の局面が見込めます。

石山:
アジア・オセアニア株式の運用を考える際には、ここまでお話したような要素をどう組み合わせるかが重要ですね。息の長い安定した成長が見込める東南アジア、足元で景気が良くなりつつある中国。今後も人口が増加し、インフラ投資と強力な消費力が経済を支えるインド、これらの国々の経済発展を資源面からサポートするオーストラリアにも注目です。
三牧さん、今回はありがとうございました。
アジア・オセアニアのセクターや銘柄の魅力については、第三部で橋爪さんに聞いてみます。

インタビュアー プロフィール

株式運用グループ 副ヘッド グローバル株式運用担当 三牧 洋介

アジア株式を運用するファンドマネージャー。運用経験年数約19年。欧米株式のファンドマネージャーやアナリストを経て2006年から現職。

マーケット情報部 チーフストラテジスト 石山仁

世界の経済情勢などをエコノミストやファンドマネージャーの協力を得ながら分析し、見通しや戦略などを顧客に提供している。