アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第十一回 国有企業の民営化を柱に、構造改革を進めるベトナム

2015年08月26日

SMAM香港現法アナリストKok Wei Yapがベトナムの現状をレポートします。

国有企業の民営化を柱に、構造改革を進めるベトナム

ベトナムは、1980年代後半から、ドイモイと呼ばれる市場経済化政策を掲げ、社会主義的な枠組みを前提に経済的発展を目指してきました。共産党一党支配のもとで市場経済化を進める姿は、中国に相通じるものがあります。2007年には世界貿易機関(WTO)加盟を果たし、自由貿易圏の一員として一定の発展を遂げています。
現在ベトナム政府は、2011年から2020年までの社会経済開発戦略に基づき、経済構造改革に取り組んでいます。2020年までに工業国入りを果たすとしています。中長期的に見れば、社会主義経済から自由化を進める段階にあり、投資の観点から非常に注目度が高い市場のひとつです。
以下では、ベトナムの経済構造改革の進捗状況と経済の見通しなどについて見ていきます。

1.最大の注目材料は国有企業の民営化、ただし進捗はやや遅れ気味

ベトナム政府は、289社に及ぶ国営企業の株式売却を計画しています。また、300社以上の企業における政府持ち分を売却する予定です。これら売却の対象となる企業の価値は、250億米ドルと見込まれ、そのうち37.5億米ドルが外国人投資家に売り出される予定です。
これは、ここ数年の資本市場深化政策の一部ですが、持ち分売却で政府の支配が及ばなくなることへの懸念などから、計画の進捗はやや遅れ気味です。

2.外国人に対する株式保有規制の緩和は徐々に進展、証券取引規制も緩和へ

外国人に対する上場企業の株式保有比率について、関連法では、上限を49%から100%に引き上げることを認めています(特定の「規制業種」を除く)。ただし、修正条項においてさまざまなケースが定められており、業種や企業ごとに異なるものとなりそうです。規制緩和は今後も徐々に進む方向であり、資本市場にとっては非常にポジティブと考えられます。すでに外国人保有枠の上限に達している企業については、株式売買の自由度が増すことになります。
外国人は、出資証券、上場株式、議決権のない預託証書および派生証券への投資が制限無く認められます。国家証券委員会(SSC)は、市場の流動性向上のため、日中反対売買の認可と、受け渡し期間の短縮(取引3日後から2日後へ)を計画していると発表しました。

3.今年7月1日から外国人による不動産保有が解禁

今年7月1日施行の改正住宅法によると、就業・観光ビザを保有する外国人、または外国企業は、集合住宅1棟あたりの30%と、戸建て・準戸建ての町村内10%の購入(実際は期限付きの所有権)ができるようになります。期間は最大50年です。 不動産開発業者は、外国人へのマーケティングを積極化すべく、同法施行の詳細に関する政府発表を待っている状況です。高級セグメントを手掛けるビンググループ(ティッカーVIC VN、以下同様)などの不動産開発企業が同法の恩恵を受けそうです。
(※)個別企業に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

4.環太平洋経済連携協定(TPP)の進展に期待
~ アパレル・繊維、不動産、農業・水産業等でポジティブ

先ごろ米国議会は、大統領貿易促進権限(TPA)法案を承認し、大統領はこれに署名しました。これにより、TPP発効にむけ前進することが期待されます。繊維、農業、水産などの関連企業が関税撤廃の恩恵を受ける主要な分野となりそうです。企業では、繊維のタイコン縫製(TCM VN)、不動産開発のキンバックシティグループ(KBC VN)、水産関連のビンホアン(VHC VN)、フンブオン水産(HVG VN)などが注目です。
(※)個別企業に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

5.今年は6%程度の成長見込み、通貨ドンは安定化へ

2015年のベトナム経済は、他の主要アセアン地域を上回る6%程度の成長が見込まれます(IMF予想は6.0%、政府予想は6.2%)。インフレ率が落ち着く中、内需、外需の伸びや、海外からの直接投資が経済成長のけん引役となる見込みです。また、不良債権問題の進展や経常収支の黒字化などファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)も強化されていると考えられます。さらに、TPPの発効は、中長期的にベトナム経済にとって大きなプラス要因になると見込まれます。
ベトナムの通貨ドンは、対米ドルでの日々の変動が一定範囲に収まるよう決められています。ベトナム国家銀行(中央銀行)は8月19日、ドンの対米ドル基準レートを1%引き下げると同時に、変動幅を上下3%に拡大しました。12日に変動幅を同1%から2%に拡大した直後の措置です。こうしたことから足元ではドン安が進んでいます。ただし、経常収支の黒字化や直接投資の拡大が見込まれるため、通貨ドンを取り巻く環境は当面安定的と考えられます。
次回ベトナムを取り上げる際には、TPPの進展で恩恵を受ける企業について、さらに掘り下げて行きたいと考えています。

以上

インタビュアー プロフィール

Kok Wei Yap

当社香港現地法人アナリスト。主にASEAN地域の企業調査を担当する。1997年以降、東南アジア、米国系企業などにおいて、企業調査アナリスト、エコノミスト、ファンドマネージャーとして勤務し、投資業務における豊富な経験を有する。2012年6月から現職。