アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二十一回:アジア債券の現状と魅力について

ローシュー:今日は、UOBアセットマネジメント本社(シンガポール)で、当社のアジア債券運用のヘッドであるフィジュー・コーさんに専門であるアジア債券市場の現状と魅力についてお話を伺いたいと思います。フィジューさん、よろしくお願いします。

フィジュー:ローシューさん、こちらこそ、よろしくお願いします。

ローシュー:シンガポールは、全人口の約75%を華人が占めることから今は国中が旧正月のお祝い一色です。当地では家族や友人などと「魚生(ユーシェン)」*を囲み食事を楽しむ習慣がありますが、フィジューさんもご家族とお祝いをされますか?
*シンガポール独自の旧正月料理で、大根、ニンジンなどの野菜を千切りしたものにすり潰したピーナッツ、ゴマ、中国のワンタンから作ったクラッカーなどが入れられ、生魚としてサーモンが入る。食べる前にプラム・ソース、サラダオイル、コショウとシナモンパウダーを入れた後にその大皿を囲み皆で混ぜて食べる。魚は中国語でイューと発音し、同じ発音の「余」は「余りがある、豊かになる」ことを意味し、「生」はシェンと発音し、同じ発音の「升(シェン)」とかけており、「升」には上昇していくという意味があり、縁起が良い食べ物とされる。

フィジュー:私の家でもご多分に漏れずユーシェンを囲んで「ローヘイ、ローヘイ」**と言いながらお箸で料理をすくい上げながら願い事を言います。ローシューさんは、旧正月をどう過ごされますか?
**「ローヘイ」は、すくい上げることを意味し、「ローヘイ」と言いながら高くすくい上げた方が願いはかなうといわれている。すくい上げる動作が網を投げる動作に似ているとも言われ福を呼び寄せる動作だとされる。

ローシュー:私は、中国北部の実家に戻り旧正月を祝います。ユーシェンは、シンガポール独特のお正月料理で、私の故郷では母のお手製餃子と火鍋でお祝いをします。
それでは、本題に入りたいと思います。最近シンガポールでは、アジア高利回り債券が注目されているようですが、実際はどうなんでしょうか?

フィジュー:注目度は相当高いと思います。
アジア債券市場は、まだまだ成長の余地があり裾野が広がると考えられています。アジア債券への投資は10年以上前に始まりましたが、昨今の世界的な低金利のために投資家の関心がますます高まっています。特にシンガポールでは、シンガポール・ドルの12カ月定期預金の金利が0.1%と低く、アジア高利回り債券が相対的に魅力的になっています。昨年12月に米国が0.25%利上げした後も、アジア高利回り債券には資金流入が見受けられました。

ローシュー:他にもアジア高利回り債券に投資をするメリットはありますか?

フィジュー:はい、あります。一般的に高利回り債券のデュレーションは適格債券と比べて大幅に短くなっています。デュレーションが短い債券は金利変動にともなうリスクが相対的に抑えられ、現在の様に金利が上昇する環境でも、その影響を抑えることが期待されます。更に、金利が高い債券は経済成長の回復局面やインフレ圧力が高まる局面で良いパフォーマンスを上げる傾向にあります。

ローシュー:株式との比較ではどの様な魅力がありますか?株式と比べてボラティリティは低いのですか?

フィジュー:データ(2005年から)によるとアジア高利回り債券(JACIノン・インベストメント・グレード指数)は、アジアや世界株式指数よりもボラティリティが低くなっています。

ローシュー:株式などと比べてリターンは見劣りすると言うことですか?

フィジュー:それが、そうではないんです!過去のデータでは、アジア高利回り債券は他の投資資産より高いリターンを上げている事が分かります。例えば、過去10年間(2016年12月現在)でアジア高利回り債券は平均で8.48%(年率換算)のリターンを上げており、同じ期間のアジア(除く日本)株式のリターン(年率3.99%)を大幅に上回っています。
下図のように、アジア高利回り債券は他の投資資産と比べて最高水準のリスク/リターン・プロフィールを提供しているのです。忘れてはならないのは、債券ですので定期的に投資家にクーポン(金利)を支払います。

ローシュー:他にアジア高利回り債券の投資資産としての魅力はありますか?

フィジュー:まだ、ありますよ。実は、アジア高利回り債券は、過去の数々の危機を乗り越えているんです。過去10年間では一般的にアジア高利回り債券は、世界的なマクロの不透明感に起因した暴落後に急速に回復しました。例えば、リーマンショック、欧州金融危機や2013年のテーパー・タントラム(米連邦準備制度理事会による量的緩和縮小示唆)後の動きで確認できます。暴落の後は、実際、急速に値を戻しています。これは、アジアのファンダメンタルズが良好な一方、市場急変時にはアジア高利回り債券は不合理に売られる傾向があるということだと考えられます。

ローシュー:アジア高利回り債券のリターンが高いことは分かりましたが、その裏にはリスクが存在します。他の高利回り債券と比べてアジア高利回り債券のデフォルト(倒産)リスクは高いのでしょうか?

フィジュー:まず現状の他の高利回り債券との利回りを確認します。アジア高利回り債券の最終利回りは、他の地域の高利回り債券と同程度です。2016年12月現在でアジア高利回り債券の最終利回りは5.82%で、世界高利回り債券は5.87%、米国高利回り債券は6.12%です。

アジア高利回り債券のデフォルト率(倒産確率)は、必ずしも先進国の高利回り債券より高くはありません。アジア高利回り債券のデフォルト率は、世界高利回り債券や米国高利回り債券よりも低くなっています。2016年12月末現在で、デフォルト率は、アジア高利回り債券が3.49%、世界高利回り債券が4.63%、米国高利回り債券が6.99%となっています。

ローシュー:シンガポールのアジア債券投資家にとって為替の恩恵について変化はありますか?私が持っているシンガポール・ドルが毎日のように米ドルに対して下がるのを見るのが怖いです。

フィジュー:UOBアセットマネジメントで運用している米ドル建てのアジア高利回り債券ファンドは、米ドル高により恩恵を受けます。仮に米国経済が引き続き改善するのであれば、利上げペースが予想より早まる余地があります。従って、米ドルの上昇は続くこととなり、投資家はその利益を享受出来ます。

ローシュー:アジア高利回り債券は投資対象として魅力がありそうですね!アジア高利回り債券の運用で最近のテーマや注意点についてお話頂けますか?

フィジー:当社の投資戦略は、債券発行体のクレジット(信用度)分析に基づく銘柄選定に重点を置き(ボトム・アップ)、マクロ分析など(トップ・ダウン)を補完的に活用します。特に高利回り債券のクレジット分析は、たとえ債券発行体の属する業界が好調でも会社が適切に運営されていなければ経営に行き詰る可能性が有ることからボトム・アップによる分析は極めて重要です。ある中国企業は好調なインフラ関連(鉄道)であったにも係らず、経営に困難を来したため、1年弱でS&P社の格付けがB+からCCCに格下げされました。

運用については、短期的には不透明感が残っている(トランプ大統領誕生と中国経済の減速により)ことで価格変動が大きくなる可能性があることから防衛的なスタンスで臨みます。昨年の債券価格上昇で、アジア高利回り債券は多少割高になっており、良好な投資タイミングは考えていません。ただ、アジア債券が置かれている環境(他資産の利回りが低い環境とアジアの富の増加)は引き続き良好であり投資を減らすことは考えていません。価格が下がったところで購入する機会を狙っています。業種としては、消費とTMT(テクノロジー・メディア・通信業界)に注目しています。安定的なキャッシュ・フローを生み出したり、マクロ環境が良好な債券発行体にも注目しています。

ローシュー:そう言えば、1月17日にファンド・セレクター・アジア社が主催する「アワード・シンガポール2017」でフィジューさんが運用するシンガポール投資家向けのアジア高利回り債券ファンドが高利回り債券部門でプラチナ賞(最優秀賞)を受賞しましたね、おめでとうございます!

フィジュー:ありがとうございます!2015年8月にUOBアセットマネジメントに入社したばかりなのにこの様な素晴らしい賞を頂き感激しています。この受賞は、私だけの力では無く、当社の素晴らしい同僚たちの協力と、もともと債券運用では実績を残している企業文化の力が大きいと思います。
因みに当社シンガポール本社の債券運用部門には31名が働いており、その内、11名がアジア債券運用に係わっています。現在、運用経験年数が平均10年を越える経験豊富なチームで、アジアの230以上の企業と国をカバーしています。高利回り債券の運用で重要なのは、さまざまの局面での企業分析と企業経営陣との緊密なコミュニケーションです。アジア地域の投資で30年以上の経験(株式投資などを含む)を持つUOBアセットマネジメントの企業や政府との強力な信頼関係とアジアでも有数の陣容と経験豊富な運用プロフェッショナルが揃ったことから今回の様なアジア債券での最優秀賞受賞に至ったのだと思います。
それから、女性が働きやすい環境を提供して頂いているUOBアセットマネジメントと私を全面的にサポートしてくれる家族にも感謝したいと思います。

ローシュー:フィジューさん、長時間にわたりお話を頂き有難うございました。仕事と家庭を両立しながら活躍されている姿を見て、改めて私もがんばろうと思いました。

以上

インタビュアー ・プロフィール

UOBアセットマネジメント
アジア債券運用 ヘッド
フィジュー・コー氏
金融業務経験年数約17年のアジア債券ファンドマネジャー。
2015年8月にUOBアセットマネジメントに入社。前職は、アムンディ・アセットマネジメント(シンガポール)でアジア社債のファンドマネジャーを2年半務めた。その他、東京海上アセット、日興アセットのシンガポール現法で債券運用に従事。趣味は旅行をして自然に触れること。家族や子供たちと過ごす時間を大切にしている。

UOBアセットマネジメント
クレジット・アナリスト
ローシュー・チャオ氏
金融業務経験年数6年のアナリスト。
2015年1月にUOBアセットマネジメントに入社。現在は、アジア債券チームで主にシンガポール・ドル建て社債のクレジット・アナリストを務めている。前職は、シンガポール地場大手運用会社であるライオン・グローバル・インベスターに勤務。旅行が好きで、現在はジョッギングにハマッテいる。