アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二十二回:インドにおける投資信託事情

マナリー:今日は、コタック・マヒンドラ・アセットマネジメント本社(インド/ムンバイ)で、当社の債券運用責任者(CIO)で商品部長を兼務しているラクシミ・アイアールさんに最近のインド国内の投資信託事情についてお話を伺いたいと思います。ラクシミさん、よろしくお願いします。

ラクシミ:マナリーさん、こちらこそ、よろしくお願いします。

マナリー:ラクシミさんは、債券運用責任者(CIO)と言うイメージが強いのですが、商品部長も兼務しているのですね。

ラクシミ:ええ、私は、2006年9月から商品企画の責任者をしています。債券運用責任者(CIO)との兼務になったのは2008年10月からです。インドでは、国内機関投資家が債券での資産運用を選好することから、私の様に長らく債券運用に携わっている人間を商品企画の責任者にしたのだと思います。

マナリー:実は、2016年12月に株式調査部のヘッドであるシバニさんと対談(第二十回Asia Talk)をしたのですが、彼女はラクシミさんを尊敬しており、目標にしているとのことでした。私にとっても身近で活躍されているシバニさんやラクシミさんは同じ女性として目標であり、この様な対談の機会を持つことが出来てワクワクしています。今回の対談では、インド国内投信事情についてお話を伺って行こうと思いますが、まずはインドの投資信託市場についてお聞かせください。

ラクシミ:わかりました。今年で私は、当社での勤務年数が17年目を迎えます。振り返ってみると幸運にも運用業界の急成長と共に歩んで来たことを実感します。17年前の運用資産残高は、現在の10分の1にしか過ぎませんでした。また、この5年間弱で運用業界全体の運用資産残高は、2012年3月末の約5.9兆ルピーから2017年1月末には約17.4兆ルピーに急拡大しています。

マナリー:何故、この様な成長が可能だったと思われますか?

ラクシミ:① 人口動態の優位性(平均年齢が低く、労働人口が多い)、② 収入の増加、③ 中間富裕層の出現が背景にあると思います。これらにより、投資信託業界の強固な顧客基盤が形成されたのだと思います。インドの人口の50%は、25歳未満です。2021年までにインドの総人口の64%が労働人口になると言われています。このセグメントは、人数が増えるのみならず極めて高い伸び率で資産を蓄積していることから資本市場に大きなビジネス・チャンスをもたらすとされます。

マナリー:確かに、自分を含めコタック・マヒンドラ・アセットマネジメントの同僚や友人たちと話をするとどの様に年々増えている資産を運用するのかがテーマになることが多くなりました。そこで、ここ最近どのような資産が投資対象として選好されているのか伺えればと思います。

ラクシミ:はい。まず初めに、金や不動産のような実物資産から投資信託のような金融資産への顕著なシフトが見られます。インド人は、不動産と金が好きな人種として良く知られていますが、不動産価格の頭打ちや金価格低下により、これら実物資産の魅力が低下しています。更には徐々にですが、従来の定期預金から債券投資信託へのシフトが起きています。

マナリー:なるほど、より金利が高く、キャピタルゲインも狙えるインド債券投資信託に資金が流入してきているのですね。ところで、インド株式投資信託の動向については如何でしょう?

ラクシミ:インドでは個人投資家の主な投資先は株式投資信託です。個人投資家の運用資産の内、平均して約60%が株式投資信託に配分されています。また、個人投資家は、インドの中型株式を選好してきています。インド中型株式投資信託のオープンエンド型投資信託に占める割合は2013年12月末の13%から2016年10月末には22.1%に増えています。また、インド中型株式投資信託の平均残高は、2011年10~12月期の2,625億ルピーから2016年10~12月期は8,961億ルピーに急増しています(年平均成長率は約28%)

マナリー:ラジャン氏のインド準備銀行(中央銀行/RBI)総裁就任(2013年)後に急増し、モディ政権誕生の2015年後も勢いが止まらない印象です。どうしてインド中型株投資信託がこれ程支持されたのでしょうか?

ラクシミ:やはり、インド国民によるインド中央銀行とインド政府に対する信認が根底にあるかと思います。ラジャン中央銀行総裁による世界水準の金融制度導入と、モディ首相による迅速かつ合理的な改革が国民に支持されていると思います。インド中型株には、モディノミクスによる内需主導のインド経済成長で恩恵を受ける多様な企業が含まれています。それが、過去3年間で中型株が大型株よりすぐれたパフォーマンスを挙げた背景かと思われます。ちなみに、過去3年間のニフティ指数(大型株)の騰落率+12%に対して、ニフティ中型株指数は、+26.9%と2倍以上上昇しました。

マナリー:次に、インド国内投資家が投資を増やしているインド債券について伺いたいのですが、投資家は短期債と長期債のどちらを好むのでしょうか?

ラクシミ:これまで投資家は、短期債投資に偏っていました。これは、機関投資家がインド債券の主要投資家であり、彼らは短期債を選好する傾向にあるからです。一方、個人投資家は、デュレーション戦略(金利予想に基づく利益獲得)やクレジット戦略(クレジット改善による利益獲得)を行う債券投資信託を選好する傾向にあり、機関投資家より、償還年限が長めの債券を好むようです。また、インド債券投資信託の利回りが相対的に魅力的なことも銀行預金からの投資を促しているようです。海外投資家のインド債券市場への投資も急増しています。

マナリー:あっという間に時間が経ってしまい、最後の質問になりますが、向こう5~10年のインド投資信託業界の見通しについてお話し頂けますか?

ラクシミ:インド国内投資信託の運用資産残高は、① 中間所得層、② 一人当たり所得、③ 可処分所得の急増と投資信託商品販売のデジタル化と相俟って向こう5~10年には倍増すると言われています。これは、予想年平均成長率で15~20%と高い伸び率です。

マナリー:ラクシミさん、長時間にわたりお話頂き有難うございました。インドでは、実物資産から金融資産へのシフト、個人の預金から債券投資信託へのシフトが起きているようでインドの投資信託の将来性は明るいと感じました。また、インド中型株式への投資が劇的に増加しているには驚きました。やはり、インド国民のモディ政権に対する期待と支持の強い現れなんでしょうね。ラクシミさんは、ますますお忙しくなりそうですが、頑張ってください。

以上

インタビュアー ・プロフィール

コタック・マヒンドラ・アセットマネジメント
債券運用責任者(CIO)兼商品部長
ラクシミ・アイアール氏
運用経験年数約19年のベテラン債券運用者。2000年にコタック・マヒンドラ・アセットマネジメントに入社する前は、債券のクレジット分析に従事。2006年に商品部長に就任し、2008年から債券運用責任者(CIO)を兼任している。2015年アジアの運用業界で最もパワフルな女性25人に選ばれる。

コタック・マヒンドラ・アセットマネジメント
広報部
マナリー・アジメラ氏
業務経験年数約16年。
2015年にコタック・マヒンドラ・アセットマネジメントに入社。前職は、地場の大手広告代理店に勤務。週末は読書と映画鑑賞を楽しんでいる。友人や親せきとの交流も好きで、特に4歳の甥がかわいくて仕方がない。旅行は自然に触れたり、古跡を訪れるのが楽しみ。