アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二十三回:シンガポール投資信託事情

井上:今日は、UOBアセットマネジメント本社(シンガポール)で、当社の販売会社営業・営業推進部門のヘッドであるレイチェル・オングさんに最近のシンガポールにおける投資信託事情についてお話を伺いたいと思います。レイチェルさん、よろしくお願いします。

レイチェル:井上さん、こちらこそ、よろしくお願いします。

井上:私はシンガポールに来て8年が経ちましたが、シンガポールではレイチェルさんの様に女性管理職として活躍されている女性を多く見かけますが、家庭と仕事との両立は大変ですか?

レイチェル:一般的にシンガポールではメイドを比較的安価で雇えますし、両親が近くに住んでいる場合が多いので、女性が働きやすい環境にあると思います。会社もさまざまな支援をしてくれますので、家庭と仕事の両立は可能です。個人的には、何か問題が起こっても、前向きに考えて、時間を上手く管理することで対応する様に心掛けています。

井上:プライオリティーを決めて時間管理をすることは重要ですね。私も見習いたいと思います。
それでは、本題に戻りますが、初めにシンガポールの投資信託市場で販売されている商品内容とトレンドについてお話をお聞かせ頂けませんか?

レイチェル:はい。まず、シンガポールの運用資産残高ですが、2015年は約2.6兆シンガポールドルで、前年の2.4兆シンガポールドルに比べて約9%増加しました。5年間では、何と平均して毎年約14%増加しています。

2015年については、シンガポールの運用資産残高の80%がシンガポール以外からの投資で、うち50%以上がアジア・オセアニア地域からの投資です。一方、投資先に関しては、アジア・オセアニア地域が運用資産残高の70%近くを占めています。

ここで、最近、シンガポールでどの様な投資信託が売れているのかを検証したいと思います。特色としては、債券型が圧倒的に多く(グローバル債券、シンガポールドル建てMMF、シンガポール債券など)、バランス型も好まれていることが挙げられます。世界的に不安定な金融市場と低金利の投資環境において債券型が選好されていると考えられます。その様な中で、最近残高を増やしているのはアジア・オセアニア債券ファンドです。2016年4-6月期に約1億9,600万シンガポールドルだった純流入額が2016年7-9月期には2倍強の約4億1,400万シンガポールドルに急増しています。

井上:何故、債券型投資信託がシンガポールの投資家の間で人気があるのでしょうか?

レイチェル:世界的な低金利環境の中、シンガポールの12カ月定期預金金利は、約0.25%です。値動きが不透明な原油価格やBrexit(英国のEU離脱)、米国の金融政策や米国トランプ政権の政策など、世界的に不安定要素が多い中、投資家はリスクを取りにくくなっており、如何にリスクを抑えながら投資を続けるかに腐心しています。また、高齢化が進むシンガポールでは、投資家は引き続きインカムが見込める金融商品を彼らの資産の中核として捉えています。従って、シンガポールでは発行体が倒産しない限り償還まで保有すれば元本が支払われ、定期的に金利が支払われる債券投資は根強い人気があります。

井上:なるほど。では、何故、債券型投資信託のなかでも最近アジア債券の投資信託が人気化しているのか、その背景を教えて頂けますか?

レイチェル:はい。アジア債券市場は過去10年間で5倍に急拡大し、現在の時価総額は約6,900億米ドルになりました。

最近、アジア債券を発行するアジア企業が増えているのは、アジア諸国のマクロ経済ファンダメンタルズの改善により、アジア企業が債券を発行しやすい環境になり、それに伴ってアジア債券の需要も高まったためです。1997年のアジア危機の頃と比べると、アジアの国家も企業も財務内容が格段に良くなりました。 また、アジア企業の債券に対するアジア投資家からの需要も高まっています。2009年にはアジアの投資家によるアジア企業の新規発行債の投資割合は約45%でしたが、その比率は2016年には約75%まで上昇しています。国内・域内投資家は、海外投資家と比べて比較的長期で安定的な投資を行う傾向にあるため、アジア債券市場の安定性につながっていると言えます。

シンガポールの投資家にとって、アジア発行体(企業)は比較的なじみがあり安心感がもてるため、アジア・ハイイールド債券の高い利回りは魅力的に映ります。彼らは、投資をする前に、発行体のデフォルト・リスクが無いかを見極めてから投資を行いますが、実際アジア・ハイイールドのデフォルト率は極めて低い水準に留まっています。また、過去約10年間の様々な投資資産のトータル・リターンを比較してみると、アジア・ハイイールド債券は下落からの回復も早く、他の投資資産と比べて高いリターンとなっています。

井上:最後に、担当されているマーケティングについて質問します。現在、UOBアセットマネジメントはシンガポールを含むアジアの投資家向けにどの様なマーケティングを展開していますか?

レイチェル:現在、当社は「ソリューション提供型」のマーケティングを展開しています。具体的には、こちらが売りたいプロダクトを勧めるのではなく、それぞれの市場の特徴を理解し、お客様の属性(リスク・プロファイル)に基づいて、お客様のニーズを理解した上で、お客様にとって最適な商品(ソリューション)を提供することを心がけています。実際の提案に際しては、提案する投資信託の形態、投資戦略や投資対象、それに伴うリスクを詳しく説明します。それによって、お客様ご自身が、こちらが提案するソリューションがご自分の投資目標とリスク許容度に見合った適格な投資かどうかを判断することができます。弊社にとって大切なことは、運用においてお客様の信頼あるパートナーになることで、お客様の資産形成を末永く支援することにあります。

井上:確かに、お客様と長期的に信頼ある関係を築くには、彼らの属性やニーズを良く理解し、適切な運用商品を提供することが重要だと思います。その点、高齢化が進んでいるシンガポールの現状を考えると、ハイ・リスク、ハイ・リターンの株式関連商品よりも、ミディアム・リスク、ミディアム・リターンのアジア債券は個人資産の核となりうる金融商品だと改めて思いました。
本日は、お忙しい中、貴重なお話を頂きありがとうございました。

以上

インタビュアー ・プロフィール

UOBアセットマネジメント
販売会社営業・営業推進 ヘッド
レイチェル・オング氏
金融業務経験年数約16年。
2005年にUOBアセットマネジメントに入社。入社前は、OCBC銀行やABNアムロ銀行で個人や富裕層向けの資産運用アドバイスを行っていた。甘いものを食べるのが大好きで、日本のスウィーツに目が無い。まだ、元気いっぱいのよちよち歩きの子供が居るので、週末はおじいちゃん、おばあちゃんともっぱら水族館や公園巡りをしている。

UOBアセットマネジメント
営業推進、日本市場担当 バイス・プレジデント
井上ほなみ氏
金融業務経験年数20年。
2013年にUOBアセットマネジメントに入社。現在は、日本向けの営業推進と営業支援を担当。入社前は、野村フランス、BILシンガポール等でアナリストやIRを担当。シンガポール滞在は8年になり、仕事、食事、友人関係、常夏の気候を満喫している。旅行が好きで、春と夏に昔住んで居たヨーロッパの友人を訪ね、山歩きをするのが趣味。