アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二十四回:アジア国債は新興国の中で安定感のある資産クラス

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■グローバル新興国債券市場の中でアジアは、最も投資妙味がある地域だとみています。
■1997年の通貨危機は過去の話。今、アジア通貨、アジア資産に投資機会が訪れていると考えます。
■アジア現地通貨建て国債は、潤沢な流動性、幅広い投資家層、相対的に高い安全性と3つの要素を兼ね合わせた資産クラスです。

ワイキャット:

今日はUOBアセットマネジメント・シンガポール(UOBAM)のアジア現地通貨建て債券ファンド並びにグローバル新興国債券ファンド担当のフロレンシア・グレゴリオさんにアジア現地通貨建て債券市場についてお話を伺いたいと思います。本日はお時間ありがとうございます。本題に入る前に、フロレンシアさんについてお伺いしたいと思います。ご出身はアルゼンチンと伺っていますが、シンガポールのUOBAMで仕事をはじめられたきっかけについてお聞かせください。

フロレンシア:

アルゼンチンで生まれ育ち、大学を卒業後、フランスの大学院で学びました。専攻は金融です。卒業後はパリで就職しましたが、インターナショナルなキャリアを積むため、アジアの金融センターの一つであるシンガポールに興味を持ち、大手金融グループUOB傘下の資産運用子会社であるUOBAMに入社しました。

ワイキャット:

現地通貨建て債券は、米ドル建て債券に比べて何が違うのでしょうか?

フロレンシア:

アジア現地通貨建て債券はアジア各国政府が発行する国債が中心になります。米ドル建て債券は、アジア企業が発行する社債が中心になります。つまり、社債中心の米ドル建て債券に投資する場合、現地通貨建て債券に投資する場合と比べてより高いクレジットリスク*(=デフォルトリスク)をとることになります。

*クレジットリスクとは:債務者が債務を返済できなくなるリスク

ワイキャット:
リスクといえば、1997年のアジア通貨危機が思い出されます。アジアは大きな金融危機に陥り、大幅な経常赤字国に陥った国々が外国人投資家から売りの標的になりました。そして、アジア各国/地域のデフォルトリスクが高まり、通貨切り下げを余儀なくされました。今もその名残はありますか?

フロレンシア:

アジア各国/地域の経済状況は健全化し、外的ショックに対して以前よりはるかに強くなりました。特に、他の新興国に比べ、アジア各国/地域の借入水準は低く、この点での問題はありません。つまり、発行済債券の支払い不能リスクは1997年当時と比べて極めて低いといえます。
また、外貨による借入額も低くおさえられており、外貨準備高も増加していることから、アジア各国/地域の経済ファンダメンタルズは大きく改善したと言えるでしょう。このため、外的ショックへの耐性は強化され、それゆえ通貨の変動幅も小さくなっています。このような環境下、アジア通貨は新興国の中で、相対的にリスクが低い通貨といえます。

ワイキャット:

債券を取引するうえで重要な流動性はどうでしょうか?一部の社債ではあまり流動性がないと伺っています。これは、市場で買い手・売り手を見つけるのが大変だということになりますが、現地通貨建て債券市場もそうなのでしょうか?

フロレンシア:

そんなことはありません。取引が比較的少ない一部のハイイールド債券とは違い、アジアの現地通貨建て債券はそのほとんどを国債が占めてます。国債市場の取引量は多く、発行規模も大きく、投資家も幅広く、それゆえ流動性は十分に高いといえます。
アジア現地通貨建て債券には、もちろん個人投資家も投資していますが、投資家の大半は、年金ファンド、生命保険会社、銀行など、各国の地元の機関投資家です。彼らはいずれも長期保有の投資家であるため、バリュエーションの安定につながっています。

ワイキャット:

これらからアジア現地通貨建て債券は投資家の信頼を得ているのですね?

フロレンシア:

その通りです。加えて、債券市場において投資家の関心事が高利回りの追及になっているため、この観点でも利回りが高いアジア現地通建て債券への関心は高まっています。また、アジア通貨の対米ドル、対日本円の上昇期待も拡大しています。

ワイキャット:

実際にアジア現地通貨建て債券に投資をしているのはどの国の投資家でしょうか?
国内投資家がその国の現地通貨建債券の参加者であるのはわかりますが、外国人投資家もしくは国際投資家も投資しているのでしょうか?

フロレンシア:

アジア経済が外国資本に対してオープンになってきた結果、外国人投資家は過去10年でアジア現地通貨建て債券の投資を増やしてきています。また、アジア各国/地域の発行体は米ドル建ての資金調達だけでなく現地通貨建て債券の発行による資金調達を増やしてきました。
現地通貨建てでの資金調達が増えれば、債務の弁済にあたり為替変動の影響がなくなり、その結果としてその国の支払い能力が強化されることとなり、経済が外的ショックに対して強くなります。
そして米ドル等との連動性をとる必要がなくなることから、通貨を変動相場制にすることが可能になり、かつての通貨危機時のような極端な経済の不均衡は起こりにくくなります。これらの点から、アジア現地通貨建ての債券は今後も拡大が期待できる資産クラスと言えるでしょう。

ワイキャット:

アジアの現地通貨建て社債への投資機会はどうでしょうか?
現地通貨建て債券の投資は国債への投資に限られますか?

フロレンシア:

アジアの資本市場は他の新興国市場に比べ相対的には発達していますが、現地通貨建て社債は発行規模も取引流動性もまだ大きいとは言えません。投資可能な社債市場はシンガポールやインドなどに限られます。しかしながら、しっかりとした信用力分析を行えば、これらの国の現地通貨建て社債をポートフォリオに組み入れることによって、リターンを高めることができます。
この際に重要になってくるのがクレジット・リサーチ力です。UOBAMは、本拠地であるシンガポールを含めアジア地域に4つの運用拠点を持っており、各拠点でのボトムアップによる綿密な企業調査・クレジット分析を行っています。これはまさにアジアを本拠点とする運用会社ならではの強みだと思います。

ワイキャット:

では、アジア現地通貨建て債券の注意点はなんでしょうか?

フロレンシア:

現地通貨建て債券投資で、多くの投資家が注意するのは通貨の変動リスクです。これをボラティリティー(価格変動の度合い)と呼び、通常、市場でのリスクとみなします。アジア通貨のボラティリティーを他の新興国通貨のボラティリティーと比較すると、ヨーロッパの新興国やラテンアメリカの通貨よりもアジア通貨が安定していることがわかっています。
これは経済の基礎的条件の健全性の違いだと考えられます。このように、アジアの現地通貨建て債券投資は他の新興国市場よりも低いリスクで安定したリターンが期待できると考えています。また、アジアの現地通貨建て債券価格のボラティリティーも新興国株式に比べかなり低いです。

投資家の間では、ブラジルや南アフリカも人気があると思います。しかし、これらの国とアジアの違いは、なんといっても経済状況です。ブラジルや南アフリカは経済状況が脆弱であるため、悪材料が出る可能性が高いのです。
アジア経済は安定感があり、投資家にいわば「心臓発作」を起こすような危険性は大変低いと考えています。

ワイキャット:

面白いポイントですね。アジア経済は借入の低下や外貨準備高の増加など経済の基礎的条件の改善に成功し、アジア通貨危機時に比べて十分な防衛手段を持ったといえますね。
アジア現地通貨建て債券はボラティリティーが株式より低く、安定したインカムを確保できるといった点で大変魅力的な資産だと言えます。また、国内機関投資家だけでなく、海外の投資家からの需要も高まっており、今後益々成長が期待される資産クラスだと思います。

この資産クラスの魅力について、次回はバリュエーションなどを中心にお聞きしたいと思います。インタビューを楽しみにしています。ありがとうございました。

インタビュアー ・プロフィール

フロレンシア・グレゴリオ
Ms.Florencia Di Gregorio
ポートフォリオマネージャー、バイスプレジデント

金融業務経験年数10年超。
2012年10月にUOBアセットマネジメント入社。現在アジア現地通貨建て債券ファンド並びに新興国現地通貨建て債券ファンドの運用を担当。グローバル新興国債券チームで為替、金利、マクロ分析も担当。
UOBアセットマネジメント入社前は、BNPパリバアセットにて債券のアナリスト兼ストラテジスト。2010年パリソルボンヌ第1大学にて銀行・ファイナンスの修士課程修了。ブエノスアイレス大学で経済学部を卒業。
趣味は旅行、ヨガ、サイクリング。

ワイキャット・ソー
Mr.Soh WaiKiat
債券アナリスト、マネージャー

金融業務経験年数6年。
2014年10月UOBアセットマネジメント入社。債券アナリストとして、債券・通貨チームにてグローバル新興国債券をも担当。
2011年ロンドン大学で銀行ファイナンスの理学士を取得。
趣味はサッカー。UOBアセットマネジメントのサッカー部でCEOも含む同僚と汗を流している。