アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二十五回:アジア現地通貨建て債券投資の機会

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■アジア経済の強みを享受できるアジア現地通貨建て債券。
■債券利回りに加え、アジア通貨高による投資収益も見込める資産クラス。
■高い実質利回り、米国債との利回り差が、投資魅力度の高さを裏付け。

ワイキャット:

皆さん、こんにちは。前回に引き続きアジア現地通貨建て債券ファンドのファンドマネージャーであるフロレンシア・ディ・グレゴリオさんにお話を伺います。

フロレンシアさん、こんにちは。今日もよろしくお願いします。

今回は、アジア現地通貨建て債券について、まず、前回お話をうかがった「アジア現地通貨建て債券とは何か(=What)」についておさらいした後、「なぜアジア現地通貨建て債券が注目されるのか(=Why)」、「投資するタイミングはいつか(=When)」の2つのWについてお聞かせいただきたいと思います。

早速ですが、まず「アジア現地通貨建て債券とは何か(=What)」、投資収益の源泉も含めて、再度確認させていただければと思います。

フロレンシア:

ワイキャットさん、こちらこそよろしくお願いします。

アジア現地通貨建て債券とは、アジア各国・地域の政府や企業がその国の通貨で発行する債券です。例えば、タイの場合はタイバーツ、インドの場合はインドルピー、インドネシアの場合はインドネシアルピアで発行される債券で、同じアジア債券でも米ドル建ての債券と区別されます。

アジア現地通貨建て債券の投資収益の源泉は2つあります:(1)債券の利息や売却益から得られる収益、(2)為替の上昇から得られる収益です。

まず、アジア現地通貨建て債券の利回りは先進国の債券利回りより相対的に高く、利息収入の高さが魅力です。それに加え、現地通貨の上昇による投資収益も見込めます。現地通貨の価値は、その国の経済状況や金融政策によって上がったり下がったりしますが、アジア通貨は経済状況が良好なため、円を含む多くの主要通貨に対して、値上がりすると見込まれます。

ワイキャット:

アジア経済は、1997 年のアジア通貨危機の時と比べ、全体的に良くなったと理解していますが、具体的にはどのような点が改善したのでしょうか?

すなわち、なぜ(=Why)今、アジア現地通貨建て債券に投資するのが良いと考えられるのでしょうか?

 フロレンシア:

債券と通貨のパフォーマンスは各国の経済状況に密接に関連しています。ここ20年でアジアの経済状況は劇的に改善しました。

例えば、アセアン諸国では、外貨準備高(含む金等)が、1997年のアジア通貨危機の時から上昇し、輸入カバー率や対外債務カバー率が大幅に改善されました(図1)。

また、経常収支も1997年の経常赤字から経常黒字に転換しました。これらのデータは、過去20年間にアジア経済が大きく改善し、外的ショックに対する抵抗力がついたことを意味しています。

フロレンシア:

また、図2の通り、アセアン諸国のGDP成長率は、アジア危機の際に大きく落ち込んだ後改善し、その後安定的に高い水準を保っています。インフレ率も安定しています。アジア経済は今後も低インフレの中で堅調な成長を遂げると見込まれます。

フロレンシア:

更には、アジアの為替市場はすべて固定相場制から変動相場制に変わり、外的要因に対する、より柔軟な対応・調整が可能になりました。

ワイキャット:

分かりました。アジア経済は強くなり、今後も堅調で安定的な経済成長が見込まれるということですね。では、バリュエーション面ですが、いつ(=When)アジア現地通貨建て債券に投資をすればいいのでしょうか?

フロレンシア:

債券のバリュエーションの観点から投資のタイミングを考える時、我々は1)実質利回り(名目利回り-インフレ率)と、2)利回りの差(イールドスプレッド)に注目します。実質利回りは、インフレが落ち着いているという状況下では、外部要因から資産を守るクッションの様な役割を果たし、数値が高ければ高いほど安全といえます。利回りの差は先進国を代表する米国債とアジア現地通貨建て債券の利回りの差であり、その差が大きいほどアジア債券に対するリスク見合いの利回りが乗っていることになるため、投資妙味が高いことになります。 

まず実質利回りを見てみます。図3は、米連邦準備制度理事会(FRB)が近く量的緩和の縮小(テーパリング)を行うと発表した2013年5月と現在の実質利回りを比べたチャートです。当時は、意表をつかれた金融市場で動揺が広がったため、テーパー・タントラム(癇癪)と呼ばれていますが、その時は、ほとんどのアジア諸国の実質利回りはマイナスもしくはかなり低い水準でした。これは、外的要因に対するクッションが小さく、バリュエーション的には割高な状況にあったことを意味しています。

現在は、実質利回りはプラスに転じて高い水準にあり、市場の悪化に耐える力がついていることを意味します。アジア現地通貨建て債券の投資対象としての魅力は高まっていると言えます。

フロレンシア:

バリュエーションのもう一つの尺度は、先進国債券との利回りの差(イールドスプレッド)です。今年5月、S&Pがインドネシアの信用格付けを投資適格級に引上げ、主要格付け会社3社の全てが同国を投資適格級としました。これによりアジアの主要国の全てが投資適格級の格付けを付与されたことになり、アジア債券の信用力は高まりました。にもかかわらず利回りの差はまだ開いたままです。これもアジア現地通貨建て債券のバリュエーションが割安であることを意味しています。

ワイキャット:

なるほど、債券のバリュエーションの観点から割高か割安かを判断する時には、実質利回りと利回りの差に注目すればよいのですね。そして現在、アジア現地通貨建て債券は両面からみて割安だということですね。では、通貨面でのバリュエーションはどうでしょうか?

フロレンシア:

通貨面でみても、アジア現地通貨建て債券は投資妙味があります。アジア経済は輸出に牽引されて安定的に成長しており、インフレ率も低水準に留まっています。この状況は、為替・通貨に有利に作用します。一方、経済分析で使う実質実効為替レート(REER)で見ると、2013年のテーパー・タントラム以降、アセアン通貨は下落しており、割安であると考えられます。今後も、落ち着いたインフレの中、堅調な経済成長が続くと見られるため、アジア通貨への投資は大変魅力的な状況にあると言えます。(図4)

フロレンシア:

まとめますと、経済の基礎的条件が大きく改善した今、アジア現地通貨建て債券に投資するための条件が揃っていると言えます。すなわち、1)アジアの安定的で堅調な経済成長と低インフレ、2)割安なバリュエーションです。これらに加え、3)先進国で緩和的な金融環境、すなわち低金利が続くため、世界のお金が利回りの高い資産に流入し続けると見られます。

このような観点からアジア現地通貨建て債券は大変魅力的な資産クラスと言えます。

また、アジア現地通貨建て債券は、株式に比べ価格変動率(ボラティリティー)が低く、安定した収入を生み出すことも強みと言えるでしょう。現在、世界的に景気が回復していますが、このような局面において、同資産クラスは相対的に高い投資収益を達成すると期待されます。

ワイキャット:

フロレンシアさん、具体的な説明をありがとうございました。

世界的に低金利が続き高利回りを追求する投資家が増えていますが、そんな中でアジア現地通貨建て債券が、価格変動率が相対的に低い割に高めの収益が期待できる魅力的な投資先である点を投資家の方々にご理解いただくことは非常に大切ですね。

アジア経済の基礎的条件は1997年のアジア通貨危機から大きく改善し、今のアジア諸国が今後同じような通貨危機に陥るリスクは小さいと言えますね。いろいろな点から、アジア現地通貨建て債券の魅力が大きいことがわかりました。

今回も貴重なご意見をありがとうございました

ワイキャット;

次回で最終回になります。次のインタビューでは、アジア現地通貨建て債券の今後の見通しと投資戦略、またアジアの投資家の方々によるアジア債券に対する需要や投資姿勢などについてお話いただきたいと思います。次回も楽しみにしています。ありがとうございました。

インタビュアー ・プロフィール

フロレンシア・グレゴリオ
Ms.Florencia Di Gregorio
ポートフォリオマネージャー、バイスプレジデント

金融業務経験年数10年超。
2012年10月にUOBアセットマネジメント入社。現在アジア現地通貨建て債券ファンド並びに新興国現地通貨建て債券ファンドの運用を担当。グローバル新興国債券チームで為替、金利、マクロ分析も担当。
UOBアセットマネジメント入社前は、BNPパリバアセットにて債券のアナリスト兼ストラテジスト。2010年パリソルボンヌ第1大学にて銀行・ファイナンスの修士課程修了。ブエノスアイレス大学で経済学部を卒業。
趣味は旅行、ヨガ、サイクリング。

ワイキャット・ソー
Mr.Soh WaiKiat
債券アナリスト、マネージャー

金融業務経験年数6年。
2014年10月UOBアセットマネジメント入社。債券アナリストとして、債券・通貨チームにてグローバル新興国債券をも担当。
2011年ロンドン大学で銀行ファイナンスの理学士を取得。
趣味はサッカー。UOBアセットマネジメントのサッカー部でCEOも含む同僚と汗を流している。