アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第二十六回:アジア現地通貨建て債券投資の魅力

■PDF版はこちらから

■世界経済が拡大する今、アジア現地通貨建て債券は、株式や先進国債券と比較して安定的で高いリターンが期待される
■アジア経済が良好で安定していることから、アジア通貨は上昇が期待される
■アジア域内の投資家によるアジア現地通貨建て債券への投資が増加している

ワイキャット

皆さん、こんにちは。
前回に引き続きアジア現地通貨建て債券ファンドのポートフォリオマネージャーであるフロレンシア・ディ・グレゴリオさんにお話を伺います。
今回が最終回になります。よろしくお願いいたします。

過去二回にわたり、アジア現地通貨建て債券市場の特徴について述べてきました。
特に、アジア各国の経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)が、1997年のアジア通貨危機以降、大幅に改善し、この資産クラスの魅力が高まっていることをお伝えしました。

この最終回では、アジア現地通貨建て債券市場及びアジア通貨についての今後の見通しと戦略についてお話しいただきたいと思います。フロレンシアさん、よろしくお願いします。


投資家は自分のリスク許容度によって、主に株式または債券を投資対象として選択します。様々な資産クラスがある中で、アジア現地通貨建て債券はリスク許容度の観点からみて、どのような位置付けにありますか?

フロレンシア

ワイキャットさん、こちらこそよろしくお願いします。

アジアの現地通貨建て債券投資は、リスク/リターンの特性から見て、先進国債券投資と株式投資の中間に位置すると考えています。殆どのアジア現地通貨建て債券はハイ・グレード(投資適格級)債券であり、キャピタル・ゲインかキャピタル・ロスのどちらかに偏りがちな株式投資と比べ、より安定的で安全な資産クラスと言えます。下記のチャートを見て頂くとわかる通り、世界経済が拡大傾向にある時(2009年3月から2017年12月まで)、最も高いリターンを提供したのは株式投資でした。一方、アジア現地通貨建て債券は、株式のリターンを下回るものの、先進国債券よりも高いリターンを提供しました。また、経済危機時(2008年7月から2009年3月まで)、最も下げ幅が大きかったのが株式投資でした。アジア現地通貨建て債券も下落していますが、その下げ幅は株式の3分の1以下でした。経済危機時に、最も下げ幅が小さかったのは先進国債券ですが、理由は元本の保全性が高いためです。

つまり、アジア現地通貨建て債券は「安全性の高い先進国債券」と「高いリターンを提供する株式」の中間に位置し、経済拡大時にも経済危機時にも、比較的安定的な価格変動とリターンを提供する魅力的な資産クラスと言えそうです。

フロレンシア

アジアの現地通貨建て債券の多くが、自国通貨建てで発行されるソブリン債(各国政府発行の債券)で、利息の支払いを通じて投資家に安定的なリターンが期待できます。

同時に、アジアの現地通貨建て債券は発行通貨の為替動向の影響を受けるため、それが投資リターンに大きく影響を及ぼします。通貨(為替)と株式は、国の経済状況の影響を受けるという点で類似しています。ある国で比較的高い経済成長が見られる際、その国の通貨と株式の両方が上昇します。

つまり、現地通貨建て債券は、経済成長時にはその国の通貨が上昇するため、よいパフォーマンスが期待できます。特に経済成長の初期においては、インフレ率がさほど高くないため、現地通貨建ての債券は比較的安定的で堅調な動向が見込まれます。経済が過熱期に入ると徐々にインフレ率が高まってくるため、金利が上昇し、債券価格は下落傾向が見られます。

今後も世界経済は拡大傾向を辿り、新興国の経済成長は先進国を上回る状況が続くでしょう。このような景気拡大局面は、現地通貨建て債券にとって大変有利と言えます。

フロレンシア

債券に投資すべきか株式に投資すべきか迷った時は、経済サイクルに注目するとよいでしょう。経済が下降サイクルにある時には、投資家は安全資産を好み、より質の高い債券を買う傾向にあります。逆に、経済が上向きサイクルにある時は、投資家はリスク選好となり、よりリスクの高い株式等に投資する傾向があります。

現地通貨建て債券への投資は、特に経済サイクルが上向きになる状況下で適しているといえます。景気回復局面において投資家は、安全性の高いハイグレード債券からリスクの高い株式投資に移行する傾向にあります。その中間に位置するのが現地通貨建て債券です。株式よりリスクが低く、債券投資としての安全性を保持しながら若干のリスクを取れるという利点があります。

ワイキャット

なるほど、それは面白い考え方ですね。
2018年の経済成長見通しについてどのようにお考えですか?またそれはアジア現地通貨建て債券投資に対してどのようなインパクトがありますか?

フロレンシア

世界経済は2016年後半以降大きく伸びています。このようなグローバルな景気回復基調は、ある特定地域に限られたものではなく、世界どの地域においても顕著になっています。特にアジアでは輸出が伸びており、今後も更なる経済成長が見込まれています。

アジア通貨はこのような堅調な世界経済成長を背景に、今後も上昇基調を辿るでしょう。一方、アジア各国の金利も同時に上昇(債券価格の下落)すると見込まれます。しかしアジアの金利上昇は先進国と比較すると限定的なものに留まり、アジアのインフレ率は今後も低水準に留まると予想されることから、アジア現地通貨建て債券は先進国債券をアウトパフォームするでしょう。

ワイキャット

それはアジア現地通貨建て債券の投資家にとってグッド・ニュースですね。では、アジア現地通貨建て債券のパフォーマンスにとって、ポジティブ要因及びネガティブ要因は何でしょうか?

フロレンシア

ポジティブ要因は、安定的なグローバル景気の回復が続くなか、アジアの経済成長が予想を上回ることでしょう。これはアジア通貨のサポート材料となります。

一方、ネガティブ要因としては、先進国においてインフレ率が予想以上に上昇すること、または先進国の株式市場が大幅に上昇することによって、米国、欧州、日本の利上げペースが加速化することが挙げられます。その他、中国景気が予想以上に減速した場合も、アジア経済やアジア債券市場にネガティブな影響があるでしょう。


2018年のメインシナリオは、先進国における前例のない金融緩和政策が徐々に正常化に向かうなかで、世界の債券市場が若干不安定になることです。しかし、アジア経済のファンダメンタルズは大きく改善しており、市場のボラティリティ(価格変動)に耐える力をつけてきていると考えています。2018年のアジア現地通貨建て債券は魅力的な投資機会を与えてくれるのではないでしょうか。中国に関しては、政府が構造改革への真剣な取り組みを約束していること、中国企業の収益性や負債水準が改善していることから、投資家の間でも安心感が高まっています。

ワイキャット

まとめますと、アジアの現地通貨建て債券は、ハイグレード債券が提供する「安定性」「安全性」に加え、先進国債券よりも高いリターンを追求する投資家にとって魅力的な金融商品と言えますね。

米国・日本・欧州の金融政策が徐々に正常化されるなか、アジア経済は今後も健全な成長が続くとみられることから、アジア現地通貨建て債券投資のダウンサイド・リスクは限定的と考えられますね。今後、同資産クラスへの投資意欲が高まっていく可能性は高いですね。

近年アジアでは、個人投資家及び機関投資家による自国の現地通貨建て債券への投資需要が高まっており、関連ファンドの数も増えているようです。その背景には、アジアの投資家が自国通貨で自国政府や自国企業が発行する債券に投資することに安心感を持っているためと言えるでしょう。

今後、アジア域内投資家に留まらず、世界の投資家がアジア現地通貨建て債券の魅力を発見することを期待しています。

フロレンシアさん、今回もお時間ありがとうございました。

インタビュアー ・プロフィール

フロレンシア・グレゴリオ
Ms.Florencia Di Gregorio
ポートフォリオマネージャー、バイスプレジデント

金融業務経験年数10年超。
2012年10月にUOBアセットマネジメント入社。現在アジア現地通貨建て債券ファンド並びに新興国現地通貨建て債券ファンドの運用を担当。グローバル新興国債券チームで為替、金利、マクロ分析も担当。
UOBアセットマネジメント入社前は、BNPパリバアセットにて債券のアナリスト兼ストラテジスト。2010年パリソルボンヌ第1大学にて銀行・ファイナンスの修士課程修了。ブエノスアイレス大学で経済学部を卒業。
趣味は旅行、ヨガ、サイクリング。

ワイキャット・ソー
Mr.Soh WaiKiat
債券アナリスト、マネージャー

金融業務経験年数6年。
2014年10月UOBアセットマネジメント入社。債券アナリストとして、債券・通貨チームにてグローバル新興国債券をも担当。
2011年ロンドン大学で銀行ファイナンスの理学士を取得。
趣味はサッカー。UOBアセットマネジメントのサッカー部でCEOも含む同僚と汗を流している。