アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第27回:拡大するインドの消費

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■インドは、豊富な生産年齢人口、若い平均年齢など国の成長と消費拡大の条件が整っている
■現政権の経済第一の政策も消費の後押しにつながろう
■新しい価値観を求める中間層・富裕層が今後の消費需要の多様化と高級化を支えよう

北尾

今回は三井住友アセットマネジメントの外部委託運用グループ、インド担当の北尾がインドのムンバイを訪問し、当社のインド関連ファンドの運用委託先であるコタック・マヒンドラ・グループの運用部門であるコタック・アセットマネジメント本店を訪問しました。株式リサーチヘッドのシバニ・クリアン氏に面談し、インドの消費について現地目線でお話しを聞かせていただきました。 

私のムンバイの印象ですが、1995年から2000年の中国の状況によく似ていると思いました。

街は全体としてはまだまだ発展途上で、一部に危険な地域や貧民街もありますが、金融街など近代的な一角もあり、警備の厳しい高級ホテルにはメルセデスやBMWなども時々見られます。これは、私が頻繁に訪問していた、飛躍する手前の中国と同じだと感じました。中国は2003年頃から急速に成長しましたが、インドも同じように高成長する可能性を秘めていると感じました。インドは、消費がこれからの経済をけん引すると見ています。1人当たりGDPは1,709米ドル(2016年)ですが、国民の平均年齢は25才程度(2010年)と先進国に比べ極めて若く、生産年齢人口の割合は全人口の65.6%(2015年)と高いため、成長力が高まる要素が整っています。現政権も経済第一を掲げているがゆえに成長の期待値は大きくなると考えられます。

シバニさん、本日はお忙しい中お時間いただきましてありがとうございます。現地の方から見て今の消費はどのように映りますか?

シバニ

構造的には、個人消費の増加は、ここ数年のインドの実質経済成長(GDP)の拡大の主要な要因となっています。しかしながら、最近消費は長期的なトレンドからすると、成長に陰りが出ていました。これは主に、2016年11月に行われた高額紙幣の廃止と2017年7月から始まった物品・サービス税(GST)の導入による一時的な混乱によるものです。

今、その悪影響は徐々に払しょくされてきており、成長の回復が見込まれます。 

インドの消費ストーリーは短期的なものではなく、商品の普及率の上昇、1人当たりの消費量の増加、および高級化を伴った、これから何十年も続く長期的なストーリーになります(図表1)。例えば、自動車の保有比率は依然として低く、今後の上昇が期待できます(図表2)。

北尾

日本人から見て当たり前のように使っている物もインドではまだ十分には使われていないことからも、今後の需要拡大が期待されます。そして、今後のインドの人々の嗜好の高級化も期待できると考えられます。では、消費セクターが伸びるための要因は何ですか?

シバニ

インドの消費が伸びる構造要因は、下記の3つと考えています。

1. 商品の普及率の上昇

2.所得増加による一人当たり消費の増加

3. 高級化志向

それ以外に、短期的には次の要因も挙げられます。

4.財政支出による農村部への手厚いサポートやインド特有のモンスーン時期の雨量増加による農村部の賃金の増加

5.GST導入による税率引き下げにより販売価格が引き下がること

6.新しいブランドが出てくることや新製品開発

7.スーパーマーケットなど近代的な小売店が増加すること

北尾

中国ではEコマースが急拡大してきています。特にアリババ、テンセントのような巨大企業が市場を造りだしそして拡大させてきています。

インドのEコマースはどのような状況でしょうか。

シバニ

現在のところ、Eコマースの売上げは小売全体の1~2%ほどになります。インド商工会議所連絡会によると、Eコマースは、2015年には230億米ドルの市場規模です。しかし、デジタルマーケティングは勢いがあり、今後重要になると見ています。混んでいるところに出かける必要がなくなる、買いにくいものが簡単に手に入るなどといったことが消費者を取り込む要因になっていると見られます。今後旅行関連やチケット関連などカテゴリー別に需要が伸びることも視野に入れています。インターネットやインターネットアプリケーションサービスがインドでも盛んになりかけているためライドシェアリング、ランドリーサービスなどが人気となっています。また、高額紙幣禁止をきかっけに電子マネー決済、特にPaytm(Pay Through Mobile:モバイルを通じた支払い)がインド最大の電子決済サービスとして人気があります。スマートフォンの普及が貢献していると言えます。

北尾

インドでは間接税の種類が多いうえに各州で税率が異なりその複雑さがビジネス阻害要因になっていました。これを一本化するのが物品・サービス税(GST)になります。この物品・サービス税(GST)導入は消費セクターにどのような影響があったのでしょうか、もしくはどんな効果が期待できるのでしょうか。

シバニ

GSTは消費セクターにとってポジティブです。GSTの中期的なメリットは、流通コストの削減です。1つの税制の下で流通面が統一されることで、より効率的な流通システムの進展が期待されます。ほとんどの分野で、GST導入が製品価格の引き下げにつながり、販売量を増やしています。また、いくつかの製品では、効率的で近代的な小売業が小規模な零細業者にとってかわるようになっています。例えば、石鹸や洗剤、ヘアーオイルのセグメントはこうした動きが出始めています。 

また、人々の生活が豊かになり中間所得層や富裕層が増えると、生活の利便性や効率性から都市化も進みます。良質な住宅や金融サービスを広く提供していくことも政府の重要な政策です。インドの住宅整備や都市化は他国に比べ遅れがみられます。今後、構造改革が進むと、都市化も進展することが期待されます(図表3)。

北尾

インドは、世界最大の民主主義国家と言われています。そして政権は5年に一度選挙の洗礼を受けます。これは政策面を含め、消費セクターにプラスになるでしょうか。

シバニ

もちろん政府が変わると、政策も変わり、短期的には消費動向へ影響を与える可能性はあります。しかし、消費の伸びは政治の変化からではなく、構造的な要因から読み取れます。その構造的な要因とは、一人当たり所得の伸びであり、所得向上による高級品へのシフトもしくは商品の普及率の向上になると考えています。

北尾

最後に、インドの消費を見ていくうえで、どのようなデータに注目していくといいでしょうか。

シバニ

インドの消費の成長を見るうえで注目すべきデータは次の通りです。

1.実質経済成長(GDP)とその内訳の一つである民間最終消費の伸び

2.雇用の伸びと一人当たり所得の伸び

3.農村部の所得の伸びと生産量のトレンド

4.モンスーンの動向(インドではモンスーンの雨量で消費者物価が左右されるため)

5.農村部への政策内容(農村部への政策で選挙の結果が変わるため、インドでは農村部対策が重要)

北尾

インドでは、これから人口ボーナス期が長く続く環境下で、新しい需要の増加を吸収する中間所得層や富裕層がインドの成長とともに拡大するため、消費の成長には十分期待が持てると再認識できました。

シバニさん、本日は貴重なご意見をいただきありがとうございました。