アジアトーク(ASIA TALK)

REPORT

第30回:マレーシア:観光産業、電子部品産業に注目

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マレーシアに注目する理由

■1人当りGDPは1万ドルに迫っており、「中進国の罠」を克服できるかに注目
■足元の経済は堅調。株価もアジア域内で相対的に底堅く推移
■携帯電話の電子部品製造、家電製品の受託製造で高い技術力を発揮
■テーマパーク「20世紀フォックス・ワールド」の開業で観光産業の一段の活性化を期待

鷹谷

デービットさんは中国出身ですが、今回、休暇を利用してマレーシアの首都クアラルンプールを観光したそうですね。どんな印象を持ちましたか?

デービット

クアラルンプールでは、モスクやペトロナス・ツインタワー、地元の市場を訪ねました。街の第一印象ですが、北京、上海などの「大都会」というよりは、中国の中堅地方都市に近い雰囲気を感じました。人々はフレンドリーで、物価は安く、快適に過ごせました。タクシーの初乗りは3リンギット(約80円)で、携帯アプリを利用して呼び寄せることが可能です。シェアタクシーの「Grab」も普及しています。治安は良く、香港と変わらず夜中でも安心して出歩くことができました。支払いは現金が中心ですが、一部のお店は、AlipayやWeChat Payによる支払いにも対応しています。言語面では、英語に加えて、中国語(マンダリン)が通じやすいので、コミュニケーションは楽でした。

鷹谷

クアラルンプール市内で海外企業の進出は目につきましたか?

デービッド

海外企業の広告がよく目につきました。特に、携帯電話のVIVO 、華為(Huawei)、家電のハイアール(Haier)が目立ちました。中国企業の東南アジア進出が盛んと聞いていましたが、実際にその通りでした。

市内のショッピングモールや目抜き通りでは、ユニクロ、無印、ダイソー等があり、現地の人にも人気のようでした。日本企業の進出は製造業から、消費サービス関連にシフトしていることが今回の訪問で分かりました。

鷹谷

小売りでは、伊勢丹が1990年に進出し、現在マレーシアに4店舗を構えます。ダイソーは2008年に進出し、現在66店舗を運営しています。ファミリーマートも2017年2月に出店を果たしました。三井不動産の三井アウトレットパークは2015年に開業しましたが、さらに東南アジア初の「ららぽーと」を2021年にオープンする計画です。このように日本の消費サービス関連企業のマレーシア進出が拡大しています。アジア全般に共通しますが、安心・安全でコストパフォーマンスに優れた日本の商品・サービス、食文化などは高く評価されています。またマレーシアは物価が相対的に安く、親日国として知られるため、日本でリタイアしたシニア層の移住も多く、10年以上にわたり、「引退後に住みたい国1位」にランクされています(一般財団法人ロングステイ財団調べ)。

デービッド

確かに、マレーシアは香港に比べ物価がかなり安いように感じました。

マレーシアの所得はアジアの中でどのような位置付けにあるのでしょうか?また街では若い人が目立ちましたが、人口構成にはどのような特徴がありますか?

鷹谷

2017年のマレーシアの一人当りGDPは9,623ドル(※約105万円)と、1万ドルが目の前にあり、アセアンではシンガポールに次いで2番目に高い水準です(次頁図表1)。

2016年のマレーシアの家計所得データ(マレーシア統計局)を見ると、平均は月額6,958リンギット(※約18万円)、年間225万円ですが、上位20%の平均値は年間425万円、首都クアラルンプール近郊の平均値は年間378万円です。インターネットの普及率は80%、携帯電話の普及率も90%を超えています。

人口構成を見ると若い国と言えます。2018年データ(マレーシア統計局)によると、総人口は3,240万人(前年比+40万人)、年齢の中央値が28.6歳、生産年齢人口(15歳~64歳年齢の総人口比)は69.7%と高いです。人口動態はマレーシア経済にプラスに働いていると考えられます。

一人当りGDPの「1万ドル」は高所得国(先進国)の目安ですが、中所得国から移行する前に経済成長が停滞しやすいことは、「中進国の罠」としてよく知られています。マレーシアも罠にはまった事例として取り上げられることが多いですが、人口動態上の好条件に加え、今後は生産性の向上、消費の高度化を梃子に成長が持続することが期待されます。順調にいけば2021年にもマレーシアが高所得国入りすることが見込まれます。 

※1米ドル110円、1マレーシアリンギット27円で計算

デービッド

なるほど、先進国入りが間近に迫っているのですね。

足元の経済、株式市場はどのような状況にあるのでしょう?

鷹谷

足元のGDP成長率は5%程度で安定的に伸びており、経常黒字を維持しています。資源国の側面もあるので、原油高は経済にプラスに働きやすいです。図表2は年初来の株価パフォーマンスを示しています。この期間、多くのアジア市場は軟調に推移しましたが、マレーシアは底堅い動きでした。5月の下院議員選挙では予想外の政権交代が起こり、マハティール政権の掲げる従来政策からの変更に不透明感が広がり、株価が下落する局面もありましたが、足元では持ち直しています。

デービット

市場参加者は親日家として知られるマハティール政権の具体的な政策の発表に注目しているところですが、マレーシアの株式市場にはどのような特徴がありますか?今後成長が期待できる企業などあれば教えてください。

鷹谷

株式市場の時価総額を見ると、銀行やエネルギー関連の大きさが目立ちますが、個別企業でも今後成長が期待できる企業は多いです。携帯電話に使われる電子部品製造や、家電製品の受託製造(EMS)など、テクノロジー関連企業の技術力は高く、「世界で戦える」水準にあります。例えば、Inari Amertron社はEMSの大手で、米大手携帯電話端末に使われる半導体パッケージングの組み立て、検査を担っています。

またマレーシアに限らず、アジア各国の所得水準の向上に伴い、観光産業の一段の発展が期待できます。マレーシア人による海外旅行、アジア各国からのマレーシアへの訪問者数はともに着実に増加しています。Malaysia Airports(空港サービス)やGenting社(総合リゾート運営) の成長に注目しています。

デービット

今回は、クアラルンプール郊外にあるカジノで有名なGenting社のゲンティン・ハイランズ・リゾートを訪問することはできませんでしたが、米映画製作会社と提携して同地にテーマパーク「20世紀フォックス・ワールド」がオープンすると聞いています。

鷹谷

今まで開業時期が延期されてきましたが、2018年末にもいよいよ開業の運びとなりそうです。20世紀フォックス社が手掛ける世界初のテーマパークとなるので、内外旅行者がますます増加しそうですね。

マレーシアは若くて豊富な人口を擁しますが、その中でもさらに持続的に成長できる企業に投資することで、中長期的に高いリターンを得ることが期待できます。 

次回はマレー半島の先端に位置するシンガポールを取り上げましょう。
本日はありがとうございました。


 
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。