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【デイリー No.1,820】最近の指標から見る日本経済(2014年3月)

2014年3月11日

<ポイント>
・春節休暇などの影響から貿易赤字は大幅に拡大しましたが、世界的な景気回復により輸出は増加基調です。
・生産は増税前の駆け込みにより大幅に増加しましたが、増税後は業種によっては減産も見込まれます。
・設備投資は3四半期連続で増加したものの、10-12月期のGDP2次速報値の下方修正の主因となりました。
⇒駆け込み需要の反動減が懸念されますが、追加の金融・政策対応も期待され、回復基調は維持しそうです。

1.貿易収支は引き続き拡大傾向、生産は増加傾向維持

①貿易統計
 1月の貿易収支は▲1兆8,188億円(季節調整後)、季節調整前では▲2兆7,917億円と、いずれも過去最大となりました。
 輸出額は前年同月比+9.5%と、前月の同+15.3%から鈍化しました。品目別では、有機化合物、鉱物性燃料が大幅に増加しましたが、船舶の大幅な減少などが見られました。一方、輸入額は同+25.1%と、前月の同+24.7%から一段と伸びが加速しました。品目別では、発電燃料である液化天然ガスや原粗油、半導体等電子部品が引き続き増加をけん引しました。
 輸出を地域別に見ると、中国向けが同+13.1%と前月の同+34.4%から大幅に伸びが鈍化したほか、香港は同▲4.5%、台湾は同+0.4%と同様に大きく減少・鈍化しました。昨年は2月中旬だった中国の春節休暇が今年は1月下旬から2月上旬となり、輸出下振れの要因となりました。一方、米国向けは同+21.9%と再び伸びが加速しており、米国をはじめ中国などの堅調な景気回復を背景に今後も輸出の増加が期待されます。
 今後は輸入の増加は続くと考えられる一方、世界的な景気回復や円安基調が見込まれることから、輸出は徐々に増勢に転じると思われ、貿易赤字の更なる拡大には歯止めがかかると思われます。

②鉱工業生産
 1月の鉱工業生産指数は前月比+4.0%と、12月の同+0.9%と比べ大幅な上昇となりました。来月からの消費税率引き上げを前に、駆け込みによる生産が本格化したと見られます。業種別に見ると、引き続きはん用・生産用・業務用機械工業が大幅に上昇するなど、15業種中11業種が上昇しました。また、在庫指数は鉄鋼業で引き続き低下したほか、情報通信機械工業で大幅に低下したことなどから、同▲0.9%と6カ月連続の低下となりました。
 今後の生産動向の見通しを示す製造工業生産予測調査(企業の生産計画に基づく)を見ると、2月は前月比+1.3%と、引き続き上昇が見込まれているものの、3月は同▲3.2%と低下に転じる見込みです。在庫の減少が続いていることなどからも、生産は当面増加基調を維持すると思われますが、消費税率引き上げ後は業種によっては減産も見込まれます。

2.労働需給はひっ迫しており、賃金上昇への期待高まる

①法人企業統計・GDP2次速報
 10-12月期の法人企業統計調査(金融・保険業除く)では、設備投資が前年同期比+4.0%の9兆4,393億円と、3四半期連続の増加となりました。業種別に見ると、製造業では、はん用機械や金属製品などで増加し、全体では同+0.7%と5四半期ぶりの増加となりました。非製造業では、卸売業・小売業を除く全ての業種で増加し、全体では同+5.7%と3四半期連続の増加となりました。また、経常利益は同+26.6%の16兆1,908億円、売上高は同+3.8%の333兆429億円となりました。円安傾向を受け、いずれも好調な企業業績が示された格好です。
 一方で、今回の法人企業統計調査を受けて改定された10-12月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比年率+0.7%と、1次速報値の同+1.0%から下方修正されました。これは設備投資が下方修正されたことが主因です。個人消費もわずかに下方修正され、10-12月期時点では駆け込み需要の影響は大きく表れなかったと考えられ、駆け込み需要は1-3月期にも反映される見込みです。

②雇用・物価
 1月の失業率(季節調整値、以下同様)は3.7%と前月と同水準でした。また、1月の有効求人倍率は前月比+0.01ポイントの1.04倍となりました。労働市場の先行きを示す新規求人倍率は同+0.02ポイントの1.63倍と、労働環境は一層改善しています。
 1月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比+1.3%と8カ月連続のプラス、物価の基調をより反映する米国型コア消費者物価指数(食料(酒類除く)、エネルギーを除く)は同+0.7%と、ともに前月と同水準でした。引き続き、電気代やガソリン代が上昇しているほか、テレビなどの教養娯楽用耐久財が上昇したことなどが寄与しました。今後も電気料金の値上がりなどが見込まれますが、前年のようなドル高・円安の進行は一服していることなどから上昇は鈍化すると見込まれます。

3.今後の見通し

 燃料や半導体等電子部品などの大幅な輸入増加や、春節休暇といった特殊要因などから、貿易赤字は過去最大を記録しました。生産面を見ると、年始からは駆け込み需要が本格化していることがうかがわれます。10-12月期の実質GDP成長率では、駆け込み需要の影響はさほど見られなかったものの、家計調査などからも本格的な駆け込み需要は1-3月期に反映されると思われます。昨日10日に発表された景気ウォッチャー調査では、自動車や家電製品など中心に駆け込み需要の強さが報告されています。一方、その駆け込み需要の反動がどの程度出てくるのかは不透明との見方から、先行きに対する景況感は急速に悪化しています。2014年4-6月期は、消費税率引き上げの影響から消費の落ち込みを中心にマイナス成長が見込まれますが、5兆円規模の景気対策の効果などからも、7-9月期以降は緩やかにプラス成長へと回帰すると思われます。足元では大企業を中心に大幅なベア(ベースアップ)に応じることも発表されており、雇用環境、賃金の上昇が消費者マインドを下支えすることが期待されます。
 海外景気を見ると、米国では昨年末からの大寒波の影響により雇用をはじめ複数の経済指標に影響が見られました。しかし、先週7日に発表された2月分の雇用統計では大寒波の影響が和らいだと見られ、雇用は増勢が回復しました。今後も米国を中心とした世界経済の回復を背景に、日本の輸出の増加幅も拡大すると見込まれ、日本経済の成長を下支えすると思われます。また、本日の日銀金融政策決定会合では現行の金融政策が据え置かれましたが、増税後の影響次第では追加金融緩和や補正予算の可能性もあると考えられ、引き続き政策対応にも注目です。

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